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拓海のホルン(1年9月から)  作者: 鈴木貴


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13/21

013.刺激で忙しい日

今日の朝練も山田先輩、船田先輩、江口先輩、白川先輩と1年5人は、情報技術室でダンスの練習。


浜口先輩のタブレットで撮影された1年男子5人のダンスは、シンクロ率があがった。

昨日のダンス部でのレッスンが良かったようだ。

安井先生と光川先生も興味深そうに後ろから覗いていた。


数回、踊っては映像を見てを繰り返すうちに、またシンクロ率が上がっていく。


こうやって、どこがずれてるのかわかるのは面白い。


浜口先輩が改まった姿勢で

「5人にお願いがあるんだけど…。」

と切り出した。


「実はこれ、プログラミングコンテストに出品したいと思っていて…。」


5人は、おおお!と湧きたった。


「元々は僕が毎年の運動会前、種目のダンスが苦手で足を引っ張ってしまうのがとても辛くて、得意なプログラミング解決しようとしたんだ。

1年の時に作って、色々修正していて、2年の時には、ほぼ使えるようになったから、これを使って実際の授業や運動会をクリアしていたんだ。

で、僕と同じようにダンスが苦手な人にも少し使ってもらって、効果も検証できた。

あと学習データもどんどん食べさせていったんだ。

それで、今回ほぼ実装できたから、応募しようと思う。」


浜口先輩は深呼吸してから

「君達の踊っている様子を提出させてもらえないでしょうか?

顔を見られるのがいやならスタンプとかで隠します。

だけど、今回、顔の表情まで数値化することができたことを考えると、

出させてもらえると、説得力が増すから、お願いしたいんです…。

もちろん無理にとは言わないです。」


3年の先輩が頭を下げている。


正直それが何なのかよくわかってないけど…。


「どうぞ。」

と俺は言った。


「俺も、どうぞ。」

黒沢が続いた。


齋藤も小松も藤井も、同意した。


そこで安井先生が出て来た。


「良かった、ありがとう。

あと、昨日ちょっと話題に出ていたslackアカウントを吹部の一部の部員に無償発行しておいた。

今回の、このシステムを使う場合の説明や機能アップデートの通知をしようと思ってね。

それに『こういう機能があるといい』とかあったら、どんどん書き込んで欲しい。

いったんこれで応募はするが、実際に通って、プレゼンの機会の備えておきたいんだ。

これは絶対通るって思ってるんだ。

あ、DM機能は使わないようにな。

それをしない約束で発行したのもある。」


そう言って安井先生はslack画面を操作し、説明してくれた。

詳しい説明のリンクも貼っていた。


光川先生は

「あなた達のタブレット開いたら、デスクトップにslackアイコンが追加されているから、後で確認して。

ビジネス用のチャットツールだけど、多分、部活で使えば効率あがるし、管理が行き届くから問題減るのよね…、金額の問題があるから話がなかなか通らないけど…。」


『吹部ダンス担当』というチャンネルが出来ていて、その中のメンバーは安井先生、光川先生、浜口先輩、山田先輩、船田先輩、江口先輩、白川先輩、1年男子5人。


浜口先輩のslackは色んなチャンネルがあった。

英語ばっかりでわかりにくい。


その中に『吹部』というのがあった。


「これは何ですか?」

と俺が聞いたら浜口先輩は


「今度の学芸発表会で、吹部のバックに映像を流す演出があるんだ。

うちの部活のメンバーで動画やアニメーション制作が得意な人と

吹部のメンバーがいる。

吹部は練習がぎっちり入っているし、うちの部活はリモートでも参加可能だからさ。」


そういえば、三者面談で勧められた部活に、この情報技術部もあったよな。

こういうことだったんだ。

学校に来るだけ来て、部活参加をリモートにすれば、学校に来る心理的負担を減らして、部活もやってます、きちんと活動実績残してます、ってことにできると考えてくれたんだろうな。


色々見えた。


しばらく練習をし、本日をもって情報技術室での朝のダンス練習は終わった。


部活で30分、ダンス部でレッスンをして、その後、部活で今日こそは楽器に触れないと…、下手になりそうで怖い。


--------------------------------


教室へ行って朝学活の時間。


有岡先生が入って来た。


「生徒会選挙だが、すでに3人が生徒会長に立候補している。

1年からはまだ2人だ。あと1人ぐらい何とかならんか?って話が出ている。

締め切りは2日後だ。

誰か、出ろ。」


有岡先生のその声に誰も反応しなかった。

有岡先生はため息をついた後、タブレットを出し、

「現在の立候補者の顔写真、名前、簡単な紹介が書かれている。

生徒会長は1人。そこに3人立候補しているから、誰に投票するか、考えておくように。来週早々に演説会があるので、それを聞いた後、投票となる。」


先生が表示した生徒会選挙の立候補者の画面を見て驚いた。


沢田先輩が立候補している…。


この人は一体何をしたいんだろう?


昨日あれだけ信頼されてないことがわかったのに、まだ出て行こうとするそのメンタル。


何?

丸尾君?丸尾君なの?

いや、丸尾君に失礼だ。


俺、絶対、投票しないから。


有岡先生は


「あと、この生徒会選挙の期間限定で、選挙管理委員会がある。

選挙活動の管理、運営、投票用紙などが主な仕事だ。

クラスから2人出す必要があるのだが、誰かいるか?」


「はい!」

俺は即座に手を挙げた。


有岡先生は、驚いた様子で

「鈴木?やるのか?」

と聞いてきた。


「え?ダメですか?」

と手を下げたら


「いや、いい!助かる。

鈴木とあと1名。誰かいるか?」

有岡先生が話すと


「私、やります。」

後ろの方で声が聞こえた。


「そうか、山本、よろしく。

決まったな。早速だが今日の昼休み、顔合わせがある。

早速委員会出席するようにな。」


え?

休み時間?

俺の睡眠時間は?


思わず手を挙げたけど、間違えた気がする。


-------------------


音楽の時間には、合唱練習が始まった。


変声期がはじまっていて、上手く声がコントロールできない。

自分で出そうとする声と実際に出ている声が違っているようで、何度も注意される。


内田先生は、男子の変声期なんかまったく気にしない様子で

「声出せ!やる気ないんか!」

と、吹部の時と同じカミナリを落としたため、男子は震えあがり、必死で声を出すようになった。


「本番は楽譜見ないんだから、とっとと暗譜!」

吹部と同じ強さでクラスにも怒号が飛ぶ。

その中で吹部のメンバーは反射的に「はい!」と返事をしてしまう。


練習が終わる頃には喉がヒリヒリした。

水筒の水を飲んでも飲んでも、喉が痛い。


クラリネットの金田が指揮でフルートの木崎がピアノ担当のようだ。

2人はすでに練習を先にしていたようだった。


残念ながら、楽譜、歌詞が頭に入っていないから指揮を全く見れてないんだけど、ちらっと指揮やピアノを見ると、既に完成がわかっているような感じがした。


内田先生は吹部の練習の時と同じように、ダメだし、個人攻撃、パート攻撃をくりだし、クラスを震撼させた。


吹部の部員は、ほぼ毎日、これをくらっている。

震えあがるクラスメイトを見て、

「あ、やっぱりこれが正常な反応だよな。慣れてる俺がいる。やっぱおかしくなったんだな。別にいいけど。」

と思った。


強くなったのか、鈍くなったのか、冷静になれてるのか。


それでも部活の時の内田先生はもっと怖い。


-------------------

給食を食べ終わったら、次の授業の準備をして、委員会に向かう。

そこへ、朝一緒に手を挙げた山本さんが声をかけて来た。


「ねえねえ、鈴木、これから委員会、一緒に行こうよ。」


「お、うん。」


そこへ黒沢と、もう1人の女子が来た。

「学級委員も駆り出されてるから一緒に行こう。」


そうなんだ。

何でもやらされるんだな。


山本さんは、俺と黒沢を見て

「やっぱり吹部の先輩が出てるから応援?」

と聞いてきた。


いや!逆!…って言っていいのかな?

言葉を飲み込むと

「そうか、応援か。吹部も団結力あるよね。

私もバトミントン部の先輩が出るから応援したいと思ってね。

あ、でも不正とかするわけじゃないよ。

しくみとか知っておきたいって思ったんだ。

知ってたら協力できることあるかもしれないって思ったから。」


…どうしよう。

誤解だなあ。

沢田先輩だけは生徒会長なんかにさせたくない、

何なら、沢田先輩って書かれた投票用紙を捨てたろって思って、この委員に立候補したぐらいだ。

あいつ性格悪いから、って全部ぶちまけたろうかな。

それって違反になったりすんのかな?

でも最近の選挙って、相手の不足とか弱点とか突いて、自分のアピールしてたりするよな。

うーん…。


言葉に詰まっているうちに委員会の教室に着くと、

「鈴木!クロ!」

その呼び方の方を見ると藤井だった。


驚いて藤井の近くに寄ると

「やっぱり鈴木は来ると思ったよ。

クロは学級委員だから参加必須になるだろうけど。

俺も色々考えるところあったからな。」


そこへ山本さんが入って来た。


「吹部の団結力すごいね、やっぱり。

バトミントン部もくればいいのに、全然いないや。」

とぼやいた。


それを聞いた藤井は

「あ、バトミントン部の人、立候補してるよね。

あの優しそうな感じのかわいい人。

おれ、あの人会長がいいと思うんだよね。イメージいいしさ。」

と言うと、山本さんは驚いた顔をした。


「え、吹部の先輩が立候補したから応援のために選管委員やってるんじゃないの?」

と聞いてきた山本さんに、藤井は食い気味に

「逆だよー!ダメだよあんなん会長にしたら。生徒会また問題になるよ。」

というと、山本さんは驚いた顔をして、俺と黒沢の顔を見た。


俺と黒沢は、黙って少しうなずいた。


山本さんは

「驚いた…。吹部内の人間関係ってどうなってるの?」

と聞いてきた。


黒沢は

「大所帯だもん、色々あるよ。クラスだって色々あるだろ?」

と言うと、山本さんは、あー…ね、と言って納得した様子だった。


後から生活指導の高野先生が入って来た。


生徒会選挙までのスケジュールとタスク、係と当日の動きなどが事細かに決められた。


部活が休みの日に、区役所から選挙で使うマジの投票箱と仕切りがついている机を借りて持ってくるらしい。


大人がやる、あの選挙を、本格的にやるらしい。


集計は手作業とのことだった。


不正が起こらないよう、集計作業の様子はリアルタイムで映像で流されるとか。


中学にもなると、色々忙しいな。


-----------------------


放課後は部活へ行き、最初の30分はダンス部のレッスンだ。


山田先輩と船田先輩、1年男子5人でダンス部の練習場所に行って、須永先輩に見てもらった。

「うん、すごくよくなってる。後、気になるのは生演奏と合わせるとどうなるか?ってところだね。僕は音源で踊ったことしかないから、生だとどうなるんだろう?っていうのはちょっと何も言えないんだけど…、テンポが音源通りだったら、ダンスは上手くいくと思うよ。ただ、テンポが遅いと、これで慣れているダンサーさん達が戸惑うかもしれないね。ちょっとやってみて、もし、上手くいかない部分が出てきたら、また来るといいよ。一緒に考えるから。」


心強い。


一番最初は先輩に言われてやらされている感が強くてやけになっていたけど、

こうやって色んな人が前向きに手を貸してくれるのを目の当たりにして、

温かみを感じると、心が変わった。


こうやって助けてくれる人のためにも、できるだけのことをやってみよう。

せめてこの人達のために。


-------------------------


ようやく音楽室。

今日こそ楽器を…と思ったら、内田先生が

「今日は合奏で『め組の人』をやる。

この程度の楽譜だったら、もう出来るな?」

と言った。


そして1年男子5人に向かって

「今日の合奏で仕上げる。

指揮は山田、出来を見るから、やってみろ。」


先生の「できるよな?」

の圧に心の中で、無茶言うなし、って思っているけど。


いつもの合奏の体形で指揮台の前に、ダンスのためのスペースを空ける。


そこに5人が並ぶ。


これだと、指揮が後ろになるから振りはじめがわからないんだよな…。


と思ったら、ブレスの音が聞こえた。

それで踊り出しがわかる。



ただ生演奏のほうが若干テンポが遅くなったりずれていたりしたので、

ダンスでちょっと戸惑うことがあった。


内田先生は

「おのれら!ダンスが完璧なのに、肝心の音楽がボロボロでどうする!

3年!後輩の指導をもっとやっておけ!3年だけ吹けても全体ができなかったら意味ないだろ!」


部員達のはい、という返事の後

内田先生は

「ダンス隊、よくやっている。今のダンスを忘れないように、

当日まで、維持しておいて欲しい。

他の曲をやっている間に忘れてしまうことがあるかもしれないから、

そうだな…1日1回は合わせておくといいかもしれない。

無理な日もあるかもしれないが。できるだけ。

その調子で。」


初めて褒められたんじゃないか?


これが、楽器、演奏だったらな。


そして今日も楽器に触れなかった。

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