012.役職決定
音楽室は1,2年生だけになった。
これから、3年生が引退した後の部長とかを決めるんだ。
1年男子5人でまとまって、こそっと座る。
空気がギスギスしている。
3年の先輩とはこうも違うのか。
それとも重ねて来た年月が一体感になったのかな?
静かな音楽室で話し声以外の、椅子のきしむ音や机が動く音、洋服がすれる音、バックのファスナーが動く音などが響く。
3年生がいなくなったら、ひょっとして空気地獄なんじゃ?
今の明るくて優しい先輩って、2年にいる?
かろうじて、絵馬先輩と岩尾先輩ぐらいなんだが。
絵馬先輩、部長やるって言ってくれないかな?
多分適任だぞ。
チョコアイス取ってきてくれるところとか、気遣い抜群だし、
すでにパートリーダーで3年の先輩に混ざってたんだし、もう経験積んでいると思う。
そう考えると、山田先輩とか船田先輩以外の3年生、誰が部長や副部長やってもおかしくない人ばっかりだと思う。
内田先生が入って来た。
「今後、新人戦の曲決め、練習計画も同時並行で進める。
そのために、部長、副部長、コンマス、決めたいのだが。
この様子じゃまだ決まってないな…。」
そう言ってため息をついた。
こういう時、いつもなら、山田先輩が率先して仕切っていたのだけど、
今度はそれを誰がやるんだろう?
内田先生は
「こちらから指名で部長を決める、っていう方法もあるのだが、
それだと『独裁』って言われかねないし、
かといっておのれら、決めるのに紛糾するとなると、選挙という方法を取って…。」
と言ったところで、絵馬先輩が手を挙げた。
「どうした藤村?」
「私、部長ではなく、副部長に立候補したいです。
先程、先生がおっしゃった選挙方式ですと、
部長に立候補した人で、上から順に部長、副部長、となるとのことでしたが、
私は部長ではなく、副部長がやりたいです。」
淡々と話す絵馬先輩に対して、内田先生は、
「副部長も部長と同じ仕事をするんだ。
部長不在の時は部長同様に部を仕切る。
部長になりたいと思わないのに副部長とは?」
と、問いかけると、絵馬先輩は
「私は先頭、表は苦手で、裏方が得意だと思います。
部長の仕事に、部を代表して、外部と調整する、部員にいろんな伝達をする、
という仕事のほかに、膨大な裏方仕事があると思います。
そこをやりたいです。」
今まで黙っていた絵馬先輩が、ようやく口を開いた。
やった、絵馬先輩が副部長なら、地獄から人間界になる。
内田先生がじっと黙って考え込んだ後、
「分かった。部長を選挙で決めた後、その後、副部長になりたいという者が複数いたら、
改めて選挙とする。コンマスも同様の手順でやる。
これに何か意見等ある者はいるか?
あるなら、今言って欲しい。
後からというのは、受け付けられない。」
と言うと、音楽室は静かになった。
内田先生は、その様子を確認してから
「じゃあ、部長やりたい者、手をあげて。」
そういうと4人、手を挙げた。
内田先生は、手で前に来るように促した。
前に並んだ4人の先輩の顔を見ると、圧強めだな。
部長って超絶めんどくさいだろうに、何でやりたいの?
内申?
権力?
コントロール欲?
自己顕示欲?
今の3年生が決める時はスムースだったんだろうか?
内田先生は
「じゃあ、右から順に改めて名前、パート、部長をやりたい理由等を3分以内で。」
一番右にいる先輩がはい、という返事をした。
身長俺より高い。160ぐらいだろうか?
背中まである髪を半分ポニーテールみたいにしている。
キレイなんだけど、なんか怖え…。
「瑞家 紗代トロンボーン担当です。」
思い出した!
コンクール練習で、俺の頭にスライドぶつけてきて、キレてた人じゃん!
うん、却下。
瑞家先輩の話は続く。
「コンクール、いつもダメ金で終わってしまう。
金賞は嬉しいけど。今度こそ、上位大会へ行きたいと強く思っています。
そのために私が部長になった際は、自分のパートだけでなく、他のパートとも連携を取って、正確で緻密な音楽作りと、その上で自分達らしい音楽って何だろう?それを表現するにはどうしたらいいだろうか、ということを追及するための努力を惜しまない運営をしたいと思っています。」
そう言って、礼をした。
何にも響いてこないのは、俺があの時の事で心のシャッターを閉じているから。
内田先生が、次と言うと…うわ、出た。
「沢田 奈央、サックスです。」
却下。
先輩とは言え、こんな奴嫌いだ。
気に入らなかったら、強い口調で当たり散らすとか、
やりたくないメロディはやらないとか、
やりたいことはわがまま貫くとか、
その動機が思いっきり私情挟みまくりとか、
拗れる要素満載じゃねえか。
こいつだけはダメ、ってネガティブキャンペーンしたい。
沢田先輩は
「今回のコンクールで私は、色々反省しました。
みんながそれぞれ楽器を持つから、曲が出来るのに、視野が狭くなっていたと思います。
部長になったからには、1人1人に合わせて、
練習や合奏に寄り添った対応ができるように成長していきますのでよろしくお願いします。」
と言って、頭を下げた。
はい、嘘―。
…俺は騙されない。
人間、ちょっとやそっとで変わらないって思う。
あのわがままっぷりのまま部長になって、自分の思う通りにしたいだけ。
そんな風にしか見えない。
寄り添うって言葉の意味わかって使ってんの?疑う。
内田先生は、次、と言うと
「岩尾 健司、サックスです。」
決定。
「厳しいコンクールもあるけど、それを越えていくためには…、
精神論になるけど、人間関係の安定とか、風通しのよさとか、意見の言いやすさとか、
そういうの、大事だと思う。
全部反映は正直できないと思うけど、ベストな選択肢をみんなで考えて、
行動していけたらいいんじゃないかな、って思う。
その役をやりたいと思い、それなら部長かな、と思って、立候補しました。」
そう言って岩尾先輩は礼をした。
決定決定!
何か白川先輩2号っぽい雰囲気が安心感がある。
内田先生は次、と言うと
「大坪 直紀、クラリネットです。」
薄く茶色かかったサラサラ髪と、ほっそりした顔立ちで、切れ長の目に吸い込まれそうな、
落ち着いた大人の雰囲気。
こんな先輩がいらしたか。
「僕はまず、コミュニケーションを十分の取れるような部活にしたいと思います。
今の状態はこのまま部活も音楽も嫌いになってしまいそうではありませんか?
楽しむことも同じくらい大事です。
どうすれば楽しく音楽ができるか、それを先頭で考えられる部長となりたいと考えています。」
そう言って礼をした。
おお、おお…。
それなら、まず、今のこの重苦しい音楽室を瞬時に変えてもらえないだろうか?
それが出来たら、考えるんだけど…。
内田先生は
「質問などあるか?」
と問いかけた。
俺は…どうしても部長になって欲しくない人がいる。
手を挙げ、内田先生に差されて、立ち上がった。
「部内で人間関係のトラブルが起こったら、どのように対処されますか?」
これは、俺なりに、沢田先輩をつぶしたいという意図がある。
反省した、とか言ってるけど、そんなんで許そうとは思えない。
あの絵馬先輩への態度は今思い出してもイライラする。
俺は続けて
「自分が人間関係でつまずいた経験から、同じような目に遭ってほしくないと強く思っています。
後輩が先輩から受ける影響も大きいですが、同学年の間や先輩同士の人間関係も後輩は見ています。
正直、先輩同士が喧嘩していると、後輩はとても苦しい立場に置かれます。」
内田先生は、部長候補に順番に発言を促した。
瑞家先輩は
「議論か喧嘩か内容を見極めたいと思います。
仲良しを押し付けるのでは、別の意味で苦しくなりませんか?
いじめに発展する兆候が見えれば、先生に伝えます。
みなさんも、自分達でそれは許さないという意識づけをして欲しいと思います。
これは私が部長にならなかったとしても、そのつもりです。」
夏コン練習で、俺の頭にスライド当てたのに逆ギレした件について、
この場で問いただそうかと思ったが止めた。
俺は長男だし、忍耐強いんだ。
それに、ターゲットではない。
次は沢田先輩。
「心当たりがあり、反省しています。
逆の立場なら、とても辛い思いをさせてしまったこと、本当に申し訳なく思います。
自分が同じ過ちを繰り返さないよう成長すると共に、周りへの配慮も忘れずに心掛けたいと思います。」
…説得力なし!
上っ面だってわかってしまった。
絶対、この人にだけは部長になって欲しくない。
岩尾先輩の番。
「正直、まじかあ…って思う気がします。
部長と言う立場だけでは解決できない気がしています。
頼りないかもしれないけど、俺の現実です。
できれば、毎日始まりと終わりのミーティングがあるんで、何かあればその場で聞けるように、意見交換などが冷静にできるように普段から努めていくことで解決できる…かな?と今は思っています。」
素直、正直、現実的。
ほぼ決定。
大坪先輩。
「『お互いの意見を尊重し合う』という事を意識してもらう事を重点にして話し合いをしていこうと促すと思います。
自分の行動が、言動が、ただ主張だけで、相手の意見や気持ちを踏みにじってないか?ということを問いかけることを常にやっていこうと思います。
それは自分自身に対しても、です。」
優等生回答。
道徳授業なら、きっと満点だと思う。
でも俺が聞きたいのは、現実にちょいちょい起こっているいざこざを、
どう思っているのかな?ってところだった。
道徳の答えは、いつも先生に誘導される。
設問が出た時点で、大人はこの答えを求めてるよな、って察知している。
そうはいかない問題で、壁にあたる。
内田先生は
「鈴木、これでいいか?」
と聞かれ、はい、と答えた。
「他に質問などある者?」
と問いかけた。
2年の先輩が手を挙げた。
内田先生に差されて、立ちあがった。
はっきりした調子で話始めた。
「コンクール、その他、練習計画や改善点、アイデアなどがあったら教えてください。」
と言った。
4人がそれぞれ、腕を組んだり頬に手を当てたりして考え込んだ。
内田先生に促され、順番に応えるように促された。
瑞家先輩は、うーん、と眉間にしわを寄せた後、真顔になって、
「基礎体力、基礎練習の時間を取るのと、あとパートごとに、特に初心者にはレッスンの時間が必要かなと思います。
そこで定期的に課題を洗い出し、日常の基礎練習の時間にクリアしてもらえるように、
ということは考えています。
来年入ってくる新入生にも、初心者の方に同じようにできるようにしたいと思います。
あとは理論。
合奏中に先生が話される内容をもっと理解できるように、
音楽理論の勉強時間や必要に応じてテストなどを行い、
わからない部分はわかるまで教える体制を取りたいと思います。」
と言った。
テスト…。
あ、却下。
無理だ、俺はこの人。
沢田先輩は、少し下を向いてから、顔を上げて全体を見渡しながら自信満々な様子で
「出来るだけ合奏を充実した時間になるように、普段の部活の練習時間を楽器に触る時間としたいと思っています。
ただ、演奏には基礎体力が必要です。その時間を朝練の時間に充てたいと考えています。」
と言った。
可もなく不可もなく。
これまでと何ら変わらず。
それを何ドヤ顔で言ってるんだろう。
好きになれない。
岩尾先輩は、顔を引きつらせ、頭を掻きながら
「合奏前に、自分らでセクション練をやれるような雰囲気ができたらいいな、って思っています。
それには2年はもちろんだけど、1年のいろんなスキルが必要で、その向上をどうするか、ってところまでは、まだ考えられてないです。」
と言った。
正直。
決定。
大坪先輩は、淡々と冷静な様子で
「まずは当たり前のロングトーンをやり込んで欲しいと思います。
ロングトーンでその日の体調、心理、楽器の調子、などが自分でもわかって来るし、もっと言うと、他の人の状態までわかるようになるといいと思いました。
3年生はそのレベルだけど、1、2年生はまだまだだから。」
と言った。
あー。
そー。
了解でーす。
頭でわかるのに、心まで届かないのはどうしてだろう。
あまりこの人と話していなかったからだろうか。
今の3年生、特に山田先輩のすごさが改めてわかる。
正直この4人に山田先輩が持っている安心感は全くない。
内田先生は
「他に何か質問等あるか?」
と問いかけた。
音楽室はしーんとなった。
内田先生は続けて、
「今から紙を配る。
そこに部長にしたい者の名前を記入し、折ってこの箱に入れること。
記入中、周りを見ないこと。
また見られないよう、腕で隠すなどの対策を取って欲しい。」
その後、内田先生は真っ白の折り紙を配った。
内田先生は、全員に配布された事を確認した後、
「記入したものからこちらの箱へ入れるように。」
と言って、持っていた箱を持ち上げて見せた。
内田先生、1人選挙管理委員会。
心の中で言ってみる。
静かな音楽室の中で記入する音と紙を折る音が鳴っている。
記入を終えた人は内田先生の持つ投票箱へ紙を入れていった。
みんな無表情だ。
投票が終わって席に座る時の他の部員の顔は緊張していて、
おしゃべりをする者もいなかった。
俺は「岩尾先輩」と記入し、ずれた4つ折りにして、内田先生の持っている箱に入れた。
そして、集計作業。
ホワイトボードに
瑞家
沢田
岩尾
大坪
と書いて、近くに座っていた金田(1年フルート)が内田先生の指名で立たされ、
先生が紙をめくって、そこに正の字を記入して言った。
途中から、ダントツ感が出て来た。
結果は
瑞家…4票
沢田…2票
岩尾…17票
大坪…6票
無効(白紙もしくは他のメンバーの名前が記入されていた)…3票
で、部長は岩尾先輩となった。
俺の心の中で、何人もの俺が泣いたり、大笑いしたり、クラッカーを鳴らしてたり、踊ったりしながら大喜びだった。
俺以外にも、岩尾先輩に入れた人は笑顔になっているようだった。
沢田先輩の2票…、1票は本人、もう1票は友達か。
いつも何人かとつるんでいたけど、票につながったのは1票か。
女子ってやっぱりわからない。
これ、実は嫌われてんじゃねえの?
一旦全員椅子に座ったのを確認後、内田先生は
「次は副部長だ。立候補者前へ」
と言うと、絵馬先輩が前へ出て行った。
続いて瑞家先輩、沢田先輩、大坪先輩が並んだ。
大体手順はわかった。
絵馬先輩、瑞家先輩、沢田先輩、大坪先輩が前にならんだ。
内田先生は「質問などある者は挙手」
と言った。
黒沢が手を挙げ、内田先生に差された。
「部長が岩尾先輩になりました。どのような部活運営を考えてますか?」
と聞いた。
黒沢。
そう、さすが、そういう事よ。
そして、やっぱり副部長でも沢田先輩出てくるんだ。
俺は絵馬先輩ですでに決定している。
一応話は聞くけどね。
順番に絵馬先輩から
「岩尾は部員の意見を聞くようにしたいと言ってたと思います。
ただ、1人で全員分聞くと時間も労力も精神力も持たない。
それを一緒に分担したり、共有したりすることで効率を上げられると思っています。
それに、実は岩尾には話にくいことも私なら話せるかもしれない。
それは逆もありで。例えば男子独特、女子独特の事とか。
理想はどちらにもなんでも話せる空気にすることだと思っています。
私はそれを一緒にやる、もしくは、みんなでできるように耳を傾けていきたいと思います。」
うん、絵馬先輩なら大丈夫。
いつも俺にチョコアイスを持ってこようとしてくれてるような気づかいの人だ。
ホルンや俺だけの先輩にしておくより、副部長として、みんなが絵馬先輩と話すようになれば、絵馬先輩の良さが伝わって、やりやすくなると思うんだ。
なんせ初心者の俺を、3年の先輩いないのに、ここまで導いてくれたんだ。
こういう先輩にはきっと俺以外の後輩達もついていくと思う。
ホルンの先輩が、もし沢田先輩みたいな人だったら、
多分入部3日目で退部しているか、
入部すらしてない。
次、瑞家先輩。
少し考えた後、よどみなく話始めた。
「岩尾がセクション練の充実が合奏を効果的にする、っていうのは私も思っていたところです。
そのあたりの分け方を一緒に考えてスケジューリングしていけたらいいかなと思っています。」
はい。
この方は頭脳的な感じかな?
てか、この先輩もそうだけど、部長になれなかったら副部長って思ってたんだ。
票数から言って、大坪先輩になってたかもしれないんだ。
うーん…。
沢田先輩。
少し早口になりながら
「同じパートで連携しているので、副部長としても連携できると思います。」
と、まくし立てたようだった。
却下。
連携って…岩尾先輩、扱いに困ってたぞ。
嫌いになってしまったから、もう、何言っても拒絶モードなんだ。
絵馬先輩にきつく当たってたの見えてたからな。
自分中心で周りが見えてないってどうなんだ。
後輩が見えてるんだ。
あの勢いで部員にキレ散らかされたら、たまったものではない。
大坪先輩は、ゆったりした口調と落ち着いた態度で
「岩尾には共感しています。
セクション練は部長、副部長と、この後決まるコンマスと同時に分担して効率よく進め、
全体に共有できるとより一体感が出せると思います。
その先の、この吹部らしさを求める合奏練習に多く時間を取れれば、
評価につながるのではないかと考えています。」
と言った。
すごくわかりやすいのに、なんだろう、心が動かない。
いい人なんだろうけど、情熱あるんだろうけど。
さっきと同じパターンで内田先生が紙を配布し、
部員は記入して先生の持つ箱に入れ、
内田先生がカウントして、金田がホワイトボードに正の字を記入。
結果
絵馬…20票
瑞家…4票
沢田…2票
大坪…4票
えげつない差が付いた。
無効票がなかった。
俺としては、当然、安心と言った気持ちだった。
内田先生は
「次、コンマス。立候補者は前に。」
瑞家先輩、沢田先輩、大坪先輩が前に出た。
実質、瑞家先輩と大坪先輩の一騎打ちと見たんだけど。
てか、もう投票でいいよ。
大体いう事同じだろうし。
それでも選挙だから、話を聞くんだろうな。
瑞家先輩か大坪先輩で、どちらにしようか、鉛筆を転がした。
瑞家先輩と出た。
正直、どっちがなっても大丈夫だと思う。
瑞家先輩は
「毎回、コンクールの曲に関わらず、どの曲もスコアを隅々まで読み込んで、実は1人1人の音を聞いています。
コンマスに必要な能力を私は持っていると思います。」
と言い切った。
短いコメントになったのはちょっと飽きてる空気を察したんだ。
正直、もう疲れて来た。
合奏とは違う緊張感で、ぐったりしてきている。
もう副部長に絵馬先輩がなってくれただけで今日の俺の部活は終わり。
あと、踊ったし、明日も踊るし。
次、沢田先輩、もういいよ…。
「私は、~!ţĐ₤¥ŁǔşÞ±ē¥ĩłĽőü⁂>~」
…なんか言ってる…。
恋愛感情で自分の感情で周りにあたってコントロールしようとした人がコンマスやったら、まとまるものもまとまらないことぐらい、俺でもわかる。
それに、また絵馬先輩が被害に遭うじゃねえか。
もう、やめとけ、引っ込んどれ。
2票しか入ってない現実を受け入れようよ。
友達1人だけじゃん。
いつも一緒にいる他の友達の気持ちは、おめえじゃねえ、って数字で出てるんだからさ。
次、大坪先輩。
もう集中切れて来た…。
「俺は上手い。だから、合奏練習で不安になったら俺を見て。
そこを支えるのが俺がコンマスになった時のメリット。」
は?どうした?
思わず大坪先輩を見る。
「今、俺は内田先生の目を見られないことを口走っている。怖い。
だけど、音楽を作ることについては、目を合わせて、みんなに伝える。
いろんな覚悟はできてるんだ。だから俺に入れて欲しい。」
さっきまでとは別人みたいだ。
顔つき、目つきが鋭くなっていた。
声も低く太くなった。
こっちが本音の、本当の姿だろうな。
最初からこのモードで話せば伝わったのに。
俺がなれるって余裕こいてたら、なれなくて、焦ったんだな。
テレビとかでよく見る、国会議員選挙で立候補している人が投票前日のギリギリに泣きながらお願いします叫んでる、アレと同じに見えた。
ただ、気持ちは伝わってきた。
こういう事なんだ、票につながるって。
この人に入れよう。
同じパターンで内田先生が紙を配布し、
部員は記入して先生の持つ箱に入れ、
内田先生がカウントして、金田がホワイトボードに正の字を記入。
結果
瑞家…10票
沢田…2票
大坪…18票
コンマスは大坪先輩に決まった。
決まった瞬間「よし!」と声に出ていた。
その後、大坪先輩は頭を下げていた。
瑞家先輩に特に変わった様子はなかった。
沢田先輩は唇をぐっと締めているように見えた。
内田先生は、
「部長、副部長、コンマス、前に」
と言った。
岩尾先輩、絵馬先輩、大坪先輩が前に並んだ。
内田先生は
「学芸発表会以降、この3名を中心に部活動を進めていく。
この3名だけじゃなく、同じくらいの気持ちを持って参加して欲しい。」
と言うと、部員は、はい、と返事をした。
内田先生は、3人を座るように促した。
続けて
「冬の新人戦について話がある。
A組で出場するか、B組で出場するか、ということ。
A組は上位大会がある、B組は上位大会はない。
また曲だが、A組は課題曲と自由曲を演奏し12分以内。
B組は自由曲1曲を6分以内。
課題曲はコンクールで取り上げられた課題曲なら何年度のどの曲でもいい。
A組、B組、どちらで出たいか、また曲の希望などをもう決めてしまいたいと思っている。一回自分達で考えてもらって、希望などを部長、副部長、コンマス等に伝えてもらって、それを元にまた私が考えてみる。
決定までのスケジュールも早々に決めて連絡する。」
何となく、はい、と返事をしたものの、全く状況がつかめなかった。
夏のコンクールの二の舞にならないように、とは思った。
ふと音楽室の戸の方を、見ると3年生が集まっていた。
中で何を話しているのかを察知して、待っていたんだと思う。
内田先生は開いて
「入って。」
と促した。
もう、部活が終わる時間だ。
帰りのミーティングで、今度の新体制が発表された。
3年生にとっては意外な人選だったようで、おお、びっくり、まじかなどの声が聞こえた。
3年生は、逆に誰が何やると思ってたんだろう?
明日も1年男子5人の朝練はダンス練習。
部活の最初の30分もダンス部でダンスレッスン。
これ1日1回はやらないと忘れてしまいそうだ。
相談して時間を作ろう。
忙しいなあ。
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