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アナコンダとワニのデスマッチ

作者: 屋嶋しゅう

 風呂場のドアを開けると、アナコンダとワニがデスマッチをしていた。


 何を言っているんだ?と聞かれるかもしれないが、私だって何を言っているのかわからない。


 うちの古く狭い風呂場で、巨大な二匹の爬虫類が絡み合っているのである。


 アナコンダは大きな口を開けてワニを頭から飲み込んでいるし、ワニはアナコンダに巻きつかれたまま、デスロールしている。


 私はそっと風呂場のドアを閉めて現実逃避をした。


「私は何も見ていない」


 そう、風呂場には誰もいない。夢を見ているんだきっと。ドアを開けたらいつも通り冷たくて小汚い風呂場があるはず。


 私は思い切ってドアを開けた。


 うん、やっぱり、夢じゃなかった。


 相変わらず我が家の風呂で巨大なアナコンダとワニが死闘を繰り広げていた。


 一度ワニを吐き出したのか、アナコンダは今度はワニの尻を、ワニはアナコンダの尻尾を咥えていた。


 一つの輪のようになってお互いを喰らおうとぐるぐる回っている。さらにワニはお得意のデスロールもしているから、前と横同時に高速回転している。


 目が回りそうだ。二匹のデスマッチはいつまで続くのだろう。

 私としては、一刻も早く終わってほしいのだが、そんなことを願ったところでこの巨大爬虫類の戦いが終わるはずもない。


 ため息をついて再びドアを閉めた。


「何をやってるんだろう……」


 私は頭を抱えた。あまりに衝撃的な光景を見てしまったからか、頭がズキズキする。本当にこの二匹は何をしているのだろう。


 どうやってうちの風呂場に侵入したのか。

 排水溝だって、巨大な爬虫類が通れる大きさではないし、窓もない密室だ。


 そのうちにバリバリメリメリと物が壊れる音がしてきた。


 あー。お風呂場壊されてる。


 大家さん新しいお風呂入れてくれるかなあ。

 今度は今までのバランス風呂釜じゃなくて、ボタンひとつでお湯が出るやつ、お湯がたまれば勝手に給水が止まってくれるやつ。

 テレビをつけてくれてもいいんだよ。



「いや、そこじゃなくて」


 アナコンダとワニが我が家の風呂で暴れていることに頭を痛めなければ。


 とにかく一人では対処しきれないから助けを呼ばなければ。

 こんな時は警察?保健所?それとも水族館?


「比例はぜひ〇〇党とお書きください!」


 そうそう、○○党!アナコンダが勝手に風呂場に入るような治安悪化は政治家のせいだ。政治家の……。


「○○党の△△をよろしくおねがいします!」


 そこで目が覚めた。そう、今は選挙期間。

 選挙カーが金切り声をあげてゆっくりと走っていった。 



「夢だった……」


 もちろん風呂場で二大爬虫類が暴れていることもないし、古い風呂が壊れていることも、新しい風呂場にリフォームされることもない。


 


 ところであのまま夢が続いていたら、アナコンダとワニのデスバトルはどうなっていただろう。

 シャワーを浴びるために風呂場へ向かった。

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