3話目 『探偵』 part1
就職活動中の大学生、綿貫たよは、ひょんな事から何でも屋「ナンヤ」の社員に巻き込まれてしまう。そこには、社長のハナ、たよと同じ年くらいのハナ、ユウタが2人にパンダが1匹と名前がややこしい上にシュールな職場があった。たよは一体、この職場で働く事になってしまうのか!?
「あ、あの~…」
もうハッキリ言おう。本当は"なめくじ電気"に電話をしようと思ってたけれど、間違えて"ナンヤ"に電話しちゃった事、そしてこんな意味不明な職場に巻き込まれたくない事を・・・。
「じ、実はですね・・・」
もし、ここで言いそびれたら私絶対変な事させられる。だって何でも屋だもの。どんな仕事着着せられるかも不安だし、なんか空気重いし、パンダいるし…絶対、絶対ろくなことがないもの。
「私、本当はま
トゥルルル
トゥルルル-
「あら、電話ね」
たよをじっと見つめていた社長のハナは電話の音にピンときたような顔をして言った。
あるある。
こういうタイミングに電話に邪魔されるのってよく漫画とかドラマでみる。うん。私本当についてない。
「はい、もしもし」
「うん、うん、そう…」
「うん、そうなのぉ…」
「うーん」
「それは、どんなナゾナゾかしらぁ?」
しゃ、社長…。
あなたって電話出るたびにそれ言ってるの…
っていうか社長って電話でるとちょっとキャラが変わるのね…やっぱり変!
程なくして電話は切られ社長のハナはリーダーをじっと見つめた。
「仕事か」
「ええ」
たよは我に返り、さっきの続きを話そうとしたけれど、もうそんな雰囲気じゃなかった。もうみんな電話で入ってきた得たいのしれない仕事の内容を社長から聞く耳しか持っていない。たよが何か喋ってみんなが黙って聞いてくれるようなムードでは決して無かった。
「依頼主は、メダカ町1丁目5番地に住むユウタ君、11歳。」
また、ユウタかよ!と、たよは心の中でツッコミを入れた。
「内容は3日母親が帰ってこないとの事。さ、始めるわよ」
「ほら、たよちゃんもこっちに」
え、あ-…ですよね・・・。
たよは引きつった笑顔でみんなが囲むテーブルまで進む。じっとパンダから睨み付けられる様な視線を
感じてならない。私はハナちゃんのとなりに座った。
「それじゃ、ハナ」
リーダーはハナに向かって真剣な声で言った。私の隣に座るハナちゃんは、長く艶やかな髪の毛で横顔が隠れてしまっているがとても可愛らしくすらっとした体型でたよが男の子だったら間違いなく恋に落ちていただろう。そんなハナちゃんはチームの頭脳なんだから、たよもちょっとワクワクしてしまう。
「・・・」
何も言わずテーブルの上に取り出した小さなノートパソコンをブラインドタッチでいじりだす。その姿をじっと見つめていた。
「んでー、たよちゃん何か特技とかあんの?」
「え?えっとテニス」
たよはあまりにも突然な質問だったのか、素の特技をぱっと発してしまった。そして「あ!」と一言心の中で叫ぶ。たよは面接の為に「特技はパソコン作りと分解です☆」なんて出来やしないものの"なめくじ電気"対策な答えを考えていた。それが役に立つのか定かでは無いけれど…。たよにはコレで合格できる!という自信があった。バカだから。
「あ、えっと、はい…テニスです」
やっぱりテニスで通しておいた。だってパソコン作りなんて答えたら本当に作らされそうなところなんだもの。
「ふーん」
そ、それだけ…?
リーダーの反応は微妙だった。しかし
「犯人にラケットで殴りかかる。アリだね」
ないよ!
「あ、逃げる犯人に対してスマッシュを決めるとか。うん。アリだね」
ないってば!
「あ、あはは…」
たよは苦笑い。私は何をされるの!?どうなっちゃうの!?私の人生が!そう心の中で叫び続けた。
「リーダー」
ぼそっとハナちゃんが言う。そしてノートパソコンをリーダーの方に引きずるように移動させ業とらしく画面を指差した。
「ふうん…」
リーダーもぼそっと言った。
私には何が何だかサッパリだった。