2話目 巻き込まれたってやつ。
ギィィ-…
古くて錆びた様な音を立てて扉が開く。SFの世界ならこの先はきっと見たことも無い素敵なお城や広大な高地、湖や様々な動物たちが出迎えてくれただろう。
その扉の先に居たのは、3人の若い男女と1匹の…
「パ・・・パンダ…?」
何よりも先に目がいったのはパンダ。指を指してしまったのもパンダ。
「ええ、パンダよ」
「はい…パンダ…ですね…」
「そいつ、誰?」
「何、新しいメンバー?」
ふっと、我に返る。そしてすぐにテーブルを囲む男女に目がいき慌ただしく挨拶をする。
「あ、あのっ」
あまりの光景に声が裏返ってしまう。もし、本当にSFの世界で、そこに見たこともない素敵な景色が広がっていたら「わぁ!すてき!」と普通に言えていたと思う。
「あ、あの、私、綿貫たよって言います。今日はその、えっと-・・・」
「この子、うちに就職しに来たのよ。みんな歓迎してあげて」
「ええ!?あ、はい…あはは…」
もうどうしよう…後戻りできない状況。テキトーに答えた"何でも屋"が見事にビンゴしたばかりに、どんどん自分の望まない方に進んでいってしまう。それに、"歓迎してあげて"ってどういう事よ!
ハンチングをかぶって、ソファーにもたれ掛かり漫画を読んでいる少年が目を細めてじっと見つめてくる。私の顔は相変わらず引きつった笑顔。
「社長が見つけたの?なーんか、ぱっとこないやつ」
むかっ!
何よこいつ。
そのハンチングの少年は高校生辺り。本当にここは会社なの・・・?ってあれ、社長・・・って
「しゃ…社長…?」
「ええ、そうよ。私がナンヤの社長のハナって言うの。よろしくね」
えええええ!
私はてっきり受付窓口の人かと思っていたので思わず口を手で隠して驚いてしまった。
「あら、ただの受付だと思った?」
「あ、いえ、その…」
「ふふ」
しゃ、しゃちょー!ここは何!?どういう場所!?はあーもう、何が何だかさっぱりわからない。どうしよう。私ぜったい変なことに巻き込まれてる。どうにかして帰らなくちゃ・・・
「みんな、自己紹介してあげて」
ハナはパンパンと手を叩き、こちらに注目させた。
ハンチングをかぶった少年は漫画を読むのを止めようとせずに
「俺はユウタ。」
と一言。
そ…それだけ…?
まぁ…そうか。いきなりきた見ず知らずの他人に、細かい挨拶なんてしないわよね。
今後はユウタの向かいのイスに座った少女がこっちを見向きもせずにぼそっと言った
「私は、ハナ。よろしくね」
え、またハナさん?。
髪の毛は長くすらっとした体型。顔は見えないけれどモデル体質ってやつね
「彼女もハナって名前なのよ。」
「あ、そうなんですか…」
そうなんですかって私は何を言ってるんだ!もっと返せる返事はあったんじゃないの!ばかばか!それにしても社長と同じ名前なんて、なんて呼ばれてるのかな。
「お、俺の番?」
「彼がチームのリーダーしてるの」
チームのリーダー・・・?
「俺はユウタ。こいつと同じ名前」
そういって漫画を黙々と読み続けるユウタを指さして言った。
ま、まぎらわしいぃぃー!
同じ名前が二人ずつってどういう事よ!
「ま、こうも珍しい事に名前がダブっちゃったもんだから、みんなあだ名があるんよ」
「は、はぁ」
「俺はリーダー。あだ名って感じじゃないけどな、みんなそう呼んでる」
「んで、ユウタ2号はハンチ。いつもハンチングかぶってるからな」
「2号って何だよ!」
ははっと笑いながらリーダーは説明を続ける
「んで、こいつは」
ハナちゃんが座ってるイスをぐるっと無理矢理回しこちらを向かせる
「こいつが、チームの頭脳。まー、あだ名は無いな。ハナって読んでる」
「…」
ハナちゃんは恥ずかしそうに私から顔をそらした。私と同じくらいかな?とても可愛い顔につい「やっぱり」と言いそうになった。
「社長はシャチョー。そんままだな」
あだ名じゃないじゃない。ハンチ以外・・・。
リーダーも私と同い年くらい?落ち着いたセピアな服装とは違ってやけに元気で蔓延の笑みを浮かべている。裏表もないまっすぐな人にも見える。
「んで、俺らの仕事、それは"何でも屋"!まぁ、それ分かってきたんか」
ううん。全然わかってない
心の中で訴える。
「シャチョーが持ってきた仕事をこの3人のチームでこなしてるんだけど…」
だけど…?
「今日から4人だな」
ま、まて・・・
「そうね、仲良くしてあげてね、ふふ」
ちょ、ちょっと社長さーん!?
間違いなく、私は巻き込まれていた。
「あーそうそう、んでパンダの名前は・・・」
そいつは何なのよ!
「パンダの名前はタヨだ!そんであだ名はパンダな」
もう、こいつら何なのよー!
ここから本編というか、何でも屋の話に入ります。
つまらない物語ですが宜しければおつきあい下さいm(m