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不思議な世界の日常的なお話

寂れた木陰のおうち

作者: nite

 暇なので日記をつけます。日々の変化を記録します。


……


 今日は猫が目の前に来ました。

 私が座っているところをジッと見つめていたので、もしかしたら私の姿が見えていたのかもしれません。猫って普通の人には見えないものが見えるって聞いたことありますし。


 しばらく私の家の周りをグルグル歩いていましたが、何もないと分かるとどこかに行ってしまいました。ごめんなさい、ここは誰にも知られてないからご飯なんてないんです。


……


 今日は幽霊に会いました。どうやらちょっと特別な幽霊のようで、私の姿がはっきり見えていました。


 彼は今別のところでお世話になっているらしいです。小さい頃に事故で死んだあと、行き場もないので良い大人に保護してもらっているみたい。

 どうやら幽霊なのに、霊感のない人からもはっきり見えるくらいの生命力があるみたいです。最近は同世代の友達もできて嬉しいと言っていました。


 彼女だと呟いていましたが…幽霊仲間ですよね?まさか幽霊と付き合っている人間がいるわけではありませんよね?


……


 今日は珍しく生きている人間が来ました。しかも、私の姿が見えているみたいです。


 彼はどうやら昨日きた幽霊くんを保護している大人らしいです。別のところで神主をしているらしく、私の姿を視れるのはそれが原因らしいです。

 寂れたところにある私の家を憂いて来てくれたみたいです。でも、私の家は山奥の荒れた場所にあるので、どうすることもできません。神主さんも、予想以上の荒れ具合に少々困った顔をしていました。


 どうやらそこまで参拝客が来る神社ではないみたいで、お金に余裕はないみたいです。少なくとも、私の家をどうにかできるほどの資金はないようです。


 ありがとうございます。その気持ちだけで十分です。


……


 今日はカラスが来ました。正確にはカラスの群れが来ました。

 折角昨日神主さんがお供えしてくれたお米を持ってかれてしまいました。


 私にはお米を食べることはできませんが、カラスに持ってかれるのはとても不愉快です。あのカラス、次に会ったときは私のなけなしの力で追い払います。


……


 今日は何も来ませんでした。よくあることです。


 何もなかった日は何を書けばいいのでしょう。


……


 今日も何も来ませんでした。途中でカラスが頭上を通ったかと思うとそのままどっかに行きました。


 多分何もないことに気が付いているんでしょう。ここは、元々何もありませんよ。


……


 今日は蜂が飛んできました。どうやら巣作りの場所を探しているようです。

 

 私の家の周囲をしばらく飛んでいましたが、どっかに移動していきました。なんとなく分かりますけど、私の家はあなたの家には適さなかったのですね。

 近くに花も咲いていないこの場所は、あなたたちにとっては住みにくいことでしょう。


……


 今日は何も来ませんでした。お花、咲いてるところを見たいなぁ…


……


 今日は一週間前に会った幽霊が来ました。それに、女の子も一緒でした。


 どうやら幽霊の彼女らしいですけど…生きている人間ですね。私の姿は見えていないようです。

 幽霊を通して、幽霊の彼氏というのはどうなのか聞いたところ、それが何かといった顔をされました。

 まだまだ世の中には知らないものがありますね。


 彼らは私の家を綺麗にしていきました。葉っぱが溜まっていた屋根の上を綺麗にしてくれました。それに、お水もいただきました。

 ありがとうございます。少し元気になりました。


……


 今日は蝶が来ました。でも、羽の一部が欠けて、飛ぶ力も弱い蝶でした。


 その子は私の家の下にとまったと思ったら、そのまま動かなくなりました。どうやらここで最期の一瞬を過ごしたみたいです。

 どうか、その魂が安らかに眠れることを祈ります。


……


 今日は大人の人が何人か来ました。その中には神主さんの姿もありました。


 私の家を中心にして色々と話し合っていました。内容は…私の引っ越しについてですね。

 どうやら神主さんが地元の人たちに話して、私の引っ越しをしてくれるみたいです。お金がないのに大丈夫なのか聞いたら、家をここに放置するよりも大切なことかと言われました。


 神主さんのおかげで引っ越し作業ができそうです。それに、きちんと儀式もしてくれるみたいです。


……


 久しぶりに日記を書きます。


 家が綺麗になりました。とっても綺麗になりました。

 それに、場所が開けました。公園の近くの、ちょっとした空間に引っ越しました。そのおかげで、お爺さんやお婆さんがお供え物をしてくれるようになりました。


 私には食べることができませんが、あなたたちの気持ちのおかげで最近は元気です。


 子供たちもたまに来てくれます。いたずらしようとする子供もいますが、私の家を建てたのが神主さんたちだと知ると逃げていきます。

 神主さん、恐れられているんでしょうか。


……


 いっぱい元気になりました。私の家に来てくれた人にお礼ができるようになりました。


 なんだか元気がない人に、元気を分けてあげられるようになりました。魂が落ち着かない人を落ち着かせることができるようにもなりました。


 私はここで、過ごしています。小さな家の、神様です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんか良い雰囲気。、 [気になる点] 作品の意図がイマイチ、不明 一つ一つの訪問者の繋がりみたいなのが物を感じられれば 良かった。 [一言] 訪問者のエピソードが、それぞれ独立している感…
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