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魔法3 シンヨーシタラダーメ

 スタアの盾が、バラバラになったジグソーパズルを元に戻したが、幾つかのピースが抜け落ちてている。


 全ての願いを叶えるスタアの盾。ボクが望んだのは、バラバラのピースを並べることじゃない。1つピースの欠けもなく、完成形のジグソーパズルへ戻すこと。もう一度、スタアの盾を強く握りしめる。元に戻れと願うが、頭の中には何の呪文も浮かんでこない。


「どうしてなんだ、ダメガミ!残りのピースは何処にやった?」


 欠けたピースは多くない。ほぼ完成しているのだから、後はそこまで難しくない。1日では無理かもしれないが、不可能なレベルではない。


「えっとー、えっとー、ダメガミって誰のこと?」


 ドジっ子女神は、さっきはダメガミと呼ばれて反応していたくせに、今は自分のことではないと知らんふりを決め込みにかかる。


「ドジっ子、どこで失くしたんだ?」


「んとっー、んとっー、ドジっ子ってドジコのこと」


 ブクマーの剣が光ると、再び大きなハリセンへと形を変え、ドジっ子女神は周囲をキョロキョロと見渡す。


「この小さい部屋に、他に誰か居るのか?靴に食器、どう見たって1人暮らしだろ」


「怒らない?」


 観念したのかドジっ子女神は、大きく項垂れ肩を落とす。


「怒らないから、正直に言ってみろ!」


「コーツージーコなの。コーツージーコでバラバラになって···」


「コーツージーコって、ボクを召喚した魔法?もしかして、ボクを召喚したのは?」


 ドジっ子女神が顔を上げると、黙ってコクりと頷く。険しくなったボクの表情を見て、目に涙が溢れ出す。


「怒らないんでしょ」


「どうして、ボクを召喚した?」


 泣くのを必死に堪えながら、ポツリポツリと語りだす真相。


 ドジっ子女神は、8つの理であるジグソーパズルをバラバラにしてしまった。狂った理は、様々な魔物を産み出し、ナーロの世界に破壊と混乱を巻き起こす。それを元に戻す方法は、ただ1つ。バラバラになったジグソーパズルを元通りにすることでしかない。


 しかし、恐くて上司の女神に報告なんて出来ない。失態がバレてしまえ、恐ろしいペナルティが課せられる。だから、どんな願いでも叶えるスタアの盾の力を借りた。そして、発動した魔法がコーツージーコ。


「だから、何でボクが召喚されたんだ?」


「んとっー、誰か助けてってお願いしたの。そしたら、カクヨの世界から召喚されたみたい」


 ボクの住んでいた世界は地球。しかし、それは人間が勝手に付けた呼び名でしかない。神々によって創造された、本当の名はカクヨ。ナーロの世界とは、似ているが対極にある世界。


「ブクマーの剣とスタアの盾を装備出来る、勇者適性のある者が召喚されたの」


 ジグソーパズルと勇者適性は関係ない気がするが、細かな作業は嫌いじゃない。だが、足りないピースのパズルは、誰も完成させることなんて出来ない。


「納得はしないけど分かったよ。それで、足りないピースは何処にあるんだ?」


「えっとー、んとっー」


 ブクマーのハリセンが輝くと、一回り大きくなる。


「怒らない約束でしょっ」


「怒ってない。ちょっとスカッとしたい気分になっただけだ。正直に言わなければな!」


「えっとー、んとっー、カクヨの世界!」


 バラバラになったジグソーパズルのピースは、ボクが召喚された際に出来た時空の歪みに飲み込まれてしまった。歪みはカクヨの世界に繋がっているのだから、カクヨのどこかに落ちている。


「他の可能性はないのか?」


「スタアの盾が願いを叶えれるのは、ナーロの世界だけですもの。カクヨにあるものには、力が及ばないわ」


 自信満々に答えるドジっ子女神に、思わずハリセンを叩き付けてしまう。スパアアアアッーーーンという音はするが、叩き付けた感触はない。ドジっ子女神も何をされてかを理解出来ずにいる。


「もう一度、コーツージーコを使え!パズルのピースを召喚するんだ」


「それは無理なの、絶対に出来ないわ」


「それでも、やってみろ。ボクを召喚したんだろ」


「違うの、アルポの苺大福がないの。だから出来ないの」


 コーツージーコの衝撃的な事実。コーツージーコは召喚魔法ではなく、空間を繋げる魔法。そして、ボクはカクヨの女神によって、ナーロの世界へと送られた。いくらコーツージーコを発動させても、ナーロの女神が応じてくれなければ、召喚は成立しない。


「その、アルポの苺大福はどこにある」


 ドジっ子女神は逃げようとするが、正座したままだったので足が痺れて動けない。そして、分かりやすく両手で口を隠す。


「食べたんだな、このダメガミ!」


 顔を横に激しく振るが、口元に付いていたアンコは苺大福で間違いない。だが、何でも願いを叶えるスタアの盾がある。乱れた心を落ち着けながら、ゆっくりと盾を掲げる。


「ダメなの。アルポの世界の苺大福なの。だから願いは叶わないわ」


 沸々と込み上げてくる怒り。それに呼応して、ブクマーの剣が輝き出すと、頭の中に呪文が浮かぶ。


「ショウジ キーナカン ソウオネガ イシマ スハシン ヨーシタラダーメ」


 激しい風が巻き起こると、8つのジグソーパズルを巻き上げ、バラバラにするだけでなく粉々に粉砕してゆく。


 古きを壊し、新たな創造を産み出す魔法ホンネダーメ。ボクとドジっ子女神の、異世界創造の物語が始まる。

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