9話「きっかけ」
千夏side
私が事情を湊に話せない理由。心配かけたくないからって言うのもあるんだけど。まぁまず理由としては確信がなかったから。迷惑になるから。私1人で対処できると思ったから。この幸せな生活を壊したくなかったから。吸血鬼嫌いの政府が吸血鬼にあったら何するかわからず怖かったから。なんだけど。
蓮には話せる理由、それは自分でもわからない。湊には話したくなかった。嫌いなんじゃない。信頼してないわけじゃない。それなのになんでって思う。なんと言うかその胸が熱くなるというか。ドキドキするというか、そう。話せないのだ。
話そうとは思ってる。でもなぜか話せなかった。湊の前だと普通の会話すらできなくなってしまって、どうすればいいのだろうか、それも含めて蓮に相談するべきだと思った。蓮にすら話せるかはわからないけど。でも話そうって思った
「と言うわけなの。」
「なるほど。もしかしたら、俺はしたことないからわかんないんだけど湊に恋してるからじゃねぇの?聴いたことあるぞ?時々吸血鬼同士で恋に落ちる奴とかもいたからな」
とあっさりと答えが出た。それが真実かどうかわからない、だって私は私を理解できないから、どうすればいいのかわからないから、自分ですら自分がわからなくなることが多い私に自分のことを詳しく理解するなんて難しい、だからそれを仮の答えとして正解を見つけていくべきなんだと思う。でも湊を避けるのは違うとおもう、だからちゃんと謝って事情を話す。そして仲直りする。
そんなことを思いながら自分の部屋に戻る。
いざ話そうとおもうと口が思うように動かなくて話せなくなってしまうと思って手紙も書いた。それを台本にするなりもし無理なら渡せばいいと思った。謝るのに台本なんてって思うかもしれない。でも私はちゃんと謝りたいからこそ準備をする。そう言う考えの人間だから。
そして湊のところへ行く、ある程度準備を済ませて。
「湊」
声をかけるけど湊は何かに集中しているのかそもそも私を無視しているのか返事をくれない
「湊…!!!!」
少し大きめな声で名前を呼んでも答えてくれない。お母さんに聞いたことがある。男というのは女と違って一つのことに集中しすぎると周りが見えなくなる傾向にあるから話しかけても聞こえてない場合が多いらしい。
考え事をしすぎて聞こえてないのかと思って今はやめようとその場を去る。湊の邪魔をしたら謝るのすら申し訳なくなってしまう
湊side
なぜ、千夏が僕を避けたのか。それを僕はずっと考えている。僕が何かした?いやでも何か僕がしたとしてあからさまに避ける子だっけ?それとも面と向かって文句を言う子?あれ?僕もしかして千夏のこと何もわかってない?僕は千夏をわかってるつもりだったけどそうじゃないのかもしれない。だからまずは千夏を知るところから始めなくちゃいけない。だったら仮にその行為が千夏の怒りを増幅させてしまうタネになったとしても聞くべきだ。千夏に。僕は何かしたのか。何が気に食わないのか。改善するって言って千夏のことを少しでも多く理解しなくちゃいけない。それが千夏のためになる、
そうと決まったら千夏の部屋に….
「ってあれ?千夏?」
後ろを振り返ると僕から逃げるようにして背を向け走り去る千夏の姿。影から蓮が出てきて状況を説明してくれた
「お前が千夏が話しかけても無視を貫いたんだろ?千夏はお前に謝罪したいって言ってたんだ。お前が悪いよ。千夏に無視したことちゃんと謝れよ」
と言って去っていった。全く聞こえてなかったけど蓮曰く割と大声で話していたらしい、それなのに僕は聞こえていなかったのか。考え事に集中しすぎたらしい。
千夏の部屋に行ってノックをする。千夏は元気よく返事をしてくれた
「千夏。僕だけど入ってもいい?湊だよ」
そういうと
「ちょっと待って!!」
と焦ったように大声でいい部屋からドタバタと大きな物音がする
「大丈夫?」と聞くと音は鳴り止みドアが開く
「言いたいことがあるんだよ私。あの。その。私から行かなくて申し訳ないんだけど。湊から来てもらうまで待つなんてひどいと思うんだけど、謝りたいの。事情を説明しなかったことを。」
といった。いや違う、ちゃんと千夏はきてたんだ。それを無視したのは僕だから
「ごめん。僕も聞こえてなかった。集中しすぎて。ごめん」と謝った
「大丈夫だよ。あのね。事情なんだけど。私1人ならなんとかなるって思ってたの。政府は吸血鬼が大嫌い。だから2人にあったら何するかわからないから。会わせたくなかった。ごめんなさい」
といった。僕らを信用してくれて守ってくれようとして心配してくれていただけだと知って僕は安心した。さらっとそれを蓮にだけいう理由は省かれた気がするけどそれは気づかなかったことにする。千夏にも千夏なりの理由があるのだから。
僕らは多分仲直りできた。千夏がどう思っているのかなぜ僕には初め話せなかったのかそこはわからないけどそれでも僕だって隠し事をしてる神の血の持ち主と関わるの初めてじゃないこと、千夏と関わりたいと思ったきっかけも。過去も、何も話してない。僕だって隠し事だらけ、隠し事が多い事実が表に出てないから目立ってないだけで僕の方が隠し事は多いんだ、生きてる期間が千夏と比べて圧倒的に長いから、千夏の隠し事の方が少ないのに千夏の隠し事を無理やり吐かせたりはしない。ゆっくり仲を深めてもっと仲良くなりたい。たとえ人間の吸血鬼狩りの女の子と最強と称された吸血鬼の王とも言われる吸血鬼の男の子、絶対に繋がることのないような関係性でも仲良くなれるんだって、交わることができるんだって。証明するんだ。この僕が。絶対に。
千夏side
蓮にだけ報告できると言った理由について聞かれなかった。それは気づいてないのかはたまた気づいてないフリをしてくれているのか。後者だとするならバレてはいる事になるからだいぶ申し訳ない。言わなくちゃって思ってるのに自分ですらわからないんだから言いようがない。
私はこの事を湊に聞かれたらなんて答えるんだろう。素直にわからないというのか納得できそうな適当な言い訳を述べるのかはたまた黙るのか、
その時の私にその先の未来は託そう。
私の未来を決められるのは私自身だけなのだから。周りが未来に影響することはあっても行ける道のうちどの道に進むかどうかは私が決める。周りが選択肢を増やしたり減らしたり道を変化させたりはするかもしれない。でも最終決定は私。既に行きたい道があるのならそれを周りの変化から守ってその道に進むしかない。私は3人で一緒に仲良くしていたいっていう道を今は歩んで行きたいって思ってる。だからその道はなんとしてでも守り切る。私の道を守れるのは私だけ。湊たちも関与しているけどそれは湊たちの道だから私は手助けはできるけど守ることは難しい。それが個人の道というものだから
3人の道。それは互いの行きたい道が同じだった場合に通れる道。もちろん別れることもあれば合流することもあるでしょう。残りの2人が私たちと一緒にいたいっていう私と同じ思いを同じ道を生きたいと心から思っているのなら3人の道は開かれ一緒に助け合ってこの道を守る。3人の幸せのために。敵はおそらく政府と周りの吸血鬼たち、政府は殺したあの人たちだけじゃない。同じ人間だし何もしなければ私も何もしたくないけどようやく本物の幸せを手に入れたのに手放したくなんてない。身勝手かもしれない。自己中かもしれない。でもそれでいい。私はこの居場所を何をしてでも守り切るから。全力で。
メモに書き溜めてるやつここに移すときに間違って消しちゃった.....