4話「過去と殺意」
湊side
戦闘狂のこいつは僕が神の血を持つあの子と出会った頃にあの子を狙って来た時に出会った。僕はあの子について言ってあの子のことは好きだったからあの子と共にいた。今じゃあの子は死んでいるけど。他のヴァンパイアハンターにあの子は殺された。あの子自身もヴァンパイアハンターでその人たちとは家族であり仲間だったからいくら僕側についても殺しはしないと思って油断していた。他の奴らは容赦なく、なんならあの子を狙って攻撃して僕は反応しきれずにあの子が殺されてしまった。あの頃の僕はそこまで強くなくてスピードだけはすごかったから。あの子が殺されて逃げた。そして強くなろうと努力した。実際あの頃でも吸血鬼の中で1位2位を争うほどには強くなれていた。でもあの子を守りきれなかった力たらずの僕はあの子が殺されたという恨みを持ったまま特訓し続けた。いつかあの子の一族。ヴァンパイアハンターの一族。月下家を滅ぼすために。そんな特訓中でも戦闘狂のあいつは僕に絡み続けた。
神の血を持つあの子はもういないのにそれでも絡み続けた、いつからかそれに鬱陶しさを感じだしあの子が殺された恨みも助けられなかった自分への苛立ちも全てをぶつけるようにあいつを殺そうとした。
だけどあいつは思ったよりは強くてそう簡単には殺せなかった。負けることもないけど勝つこともなく。体力勝負でもあった、
そしてしばらく殺し合いを続けているとあいつは言った。というより僕だけが殺そうとしている一方的な殺し合いだって気もする。あいつは戦いこそ本気でしてくるものの殺意は感じなかったのだから
「なぁ。お前が俺に殺意を向けるのはどうしてだ?」
と、戦闘狂は大体先頭しか脳がない馬鹿ばかりだと思っていた。だからころ殺意に敏感なのは理解できた。でも。そんな質問をする意味がわからなかった。
どうしてそんなこと聞くんだと思いつつこう答えた、
「あの子が殺された恨み。守りきれなかった自分への苛立ち、それを抑えきれなくなって、たまたま戦いを挑んだお前に八つ当たりしているだけだと思う。それにお前はあの子の神の血を狙ってたし」
と答えた。彼はしばらく攻撃するそぶりを見せずただただ避けと防御に徹しながら何かを考えていた。
数分そんな戦いが続いた後、彼がいった
「神の血を狙うのは吸血鬼として当たり前の行為だ。そこは理解してほしい。そしてあの子が殺されたのはお前のせいじゃない。あの子の仲間のハンターが容赦なく殺したこともそうだがあの子が仲間を裏切ってハンターでありながら吸血鬼側についたのは事実だ、」
と言った。
確かにハンターの人間たちからみればあの子は裏切り者だ。でも殺すなんて、守りきれなかった悔しさもあった。でも同時に彼に怒りをぶつけて殺そうとする自分の愚かさにも気付いたんだ、だから僕はいった
「確かにそうだね。うん。僕はお前を殺さない。それじゃあね」
とこの場を去ろうとした。彼を殺す気がなくなった今戦闘を続ける意味がない。こんだけ戦闘を続ければ彼も満足した。そう思ったから。
「なぁお前名前を教えろよ。」
去ろうとする僕にそう話しかけてきて僕はただ
「湊」
そう一言名前を言ってその場を去った。
それから毎日彼は僕に付きまとってきた。
強くなるため特訓をしてあの一族を滅ぼすために必死の僕に。彼は僕がやってる行為は否定しなかった。何も触れなかった。
「そーいえば。お前の名前だけ聞いて俺は言ってなかったな!俺は蓮だ!」
「なぁなぁ。湊〜俺暇なんだけど戦おうゼェ」
ひたすらに僕を見かけては声をかけて関わり続ける。ほとんど毎日。時たま来ない日は僕が心配してしまうほどになっていた
そしてある日、僕は一族に新たに生まれたある子供に目を付けた
その子は僕の目に狂いがなければ神の血の持ち主だったんだ。蓮にも話を聞いたが
「あぁ神の血だと思う。」と答えた
それから僕はあの子が気になって仕方がなかった、それから大きくなるまで見てそしてある日僕は声をかけたんだ。あの子は最初警戒していた。でも信用してくれるようになった、
それが僕と蓮の出会い。そして千夏を見つけて関わりたいと思ったきっかけだった。
千夏の家族の大人を殺すことに容赦がなかったのもあの子を殺された恨みがいまだに残っているから
「湊?どうしたの?」
そんな声がして目の前を見ると千夏と蓮がいた
「珍しーなお前がそこまで考え込むなんて」
という蓮
「うるせーよ。まぁいいだろ、とりあえず。千夏は僕の友達?っていうのかな。まぁとにかく知り合いだから手を出さないでよ?僕の匂いがついてるのは僕の血が入った小瓶を持たせているから。」
その言葉である程度察したのだろう。
だって千夏はどう考えてもヴァンパイアハンター、蓮が話しかけた時千夏は咄嗟に攻撃体制。そして防御の姿勢をとって蓮から距離を取った。なおかつ銀のナイフを取り出して構えた。その様子からハンターだとわかる、そして神の血を持っていたとなれば必然的に月下家の一族である可能性が高い。そして吸血鬼と関わる千夏。かつての神の血を持ったハンターの少女が吸血鬼と関わって同じ一族に殺された過去を知っている蓮。仲間だろうが容赦のない家系。千夏がなんとなく既に一族を敵に回していることを察したのかそれ以上何も言わなかった。
蓮は戦闘狂ではあるが馬鹿ではない。それ故に真の強者になれているのだ。
力が強いだけでは強者にはなれない。戦闘にはスピード、力、の他の頭脳も使う。戦闘狂の多くは脳筋。力やスピードだけを重視して何も考えない、弱くはないけど強くはない。だから自分より力の弱い頭脳派吸血鬼に殺される事例もよくみる。頭脳だけでも力がなければ無駄。だって圧倒的に負けていたら脳筋どもの殺されるから。
だから両方持っている必要がある。
僕の場合大丈夫。蓮の場合確かに戦闘狂でちょっと脳筋染みているところはあるが考えることもできるちゃんとした強者だ。実際ほぼ蓮と僕は互角だし。今がどうかはわからないけど
「それはわかったけどよぉこいつの寝床どうすんだ?いくら湊の血を持たせてるとはいえ危険なものは危険だろ?」
「まぁね。だって月下家を既に千夏は敵に回している」
僕は千夏を見て思った、千夏何かを考えていた、そう、ひたすらに千夏side
私は不思議で仕方がなかった。この2人は私を殺そうとしない。しかも月下家を敵に回し掛けている私を守ってくれようとするそぶりさえ見える。彼らからすれば私は絶好の獲物のはずだ。孤独で神の血を持つハンター殺すなり血を吸うなりできるはずなのにしない。
月下家はそこまでひどいものなのだろうか?確かに考え方はとても嫌いだ。でも人間を守ろうという意志は見える。私を殺そうとしたのも敵にまわって吸血鬼の弱点がなくなり勝ち目がなくなってしまうくらいならやむなくというふうに見えた。好んで人間を、ましてや家族でありハンターの私を殺すわけがない。
そう思っていた。私は一度月下家に帰ってちゃんと話そうってそう考えていた、だから
「それじゃ私帰るね」
そう言ってその場を去った。2人は私のことを見ていたけど停めはしなかった、だけどついてきているのは感じていた。気配をまるで隠そうとしない、いや、隠そうとしないというよりかは隠し忘れている。そんな感じだった。そんなに私のことが気になるのか?気配を消し忘れて私のことをつけまわすほど何か気になることがあるのか。私は湊と蓮に敵対していないし吸血鬼殺しも今までよりはしないって決めた。何かあるなら直接私に聞けばいいのに。そう思いつつ気づかないふりをして様子を伺いつつ屋敷に向かった。
屋敷はいつもより明らかに静かで独特な雰囲気を纏っていた。いつもなら子供たちの騒ぎ声。ドタバタする足音。大人たちの声、が聞こえていたのに。戦闘部門の大人は殺されたから多少静かなのは頷ける。
でもここまで静かになるものなのだろうか、
ピンポンを押そうか悩むが私は別に侵入者ではなく一応家族なのでそのまま入って行った。
屋敷は電気はついていないのか暗かった。
しばらく歩いていると屋敷で一番大きい部屋の電気がついていることに気がついた。
ドアの隙間からそっと覗いた。気配を消して。
「っ!?!??!?」
それは戦闘部門ではないおとなたちが子供に武器を持たせて戦わせようとしていた。子供たち同士で戦わせる時は流石に殺せる武器を持たせたりはしてないもののとても危ない光景だった。おとなたちからすれば戦える人が1人もいなくなって焦ったのだろうと想像できるけど子供たちをゆっくり育てていたこの家にはあり得ない光景で私は気づいたら飛び出していた
「何してるの!?」
みんな驚いた顔をして私の方を振り向く。
そして大人がひとこと子どもたちに向かってこういった
「千夏を殺せ」
と、私はびっくりして動けない、子どもたちは殺せる刃物を渡され全員で私に突撃してくる。子どもたちは10人ほどではあるがこんなところで戦闘しては子どもたちが事故で死んでもおかしくないし私はこの子たちを傷つけたくない。だから攻撃を交わし子どもたちを1人ずつ気絶させる、大人と私を除く子供の中では最年長の女の子である14歳、私とは2歳差の女の子が残った、彼女は突撃してこなかった
「ねぇ、どうしてこんなことするの!?」
その女の子に向けてこう問いを投げた。大人でもいい。答えてくれるなら。