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2話「私があなたにつく理由」

「えっ….?」

残ったのは彼と戦う意志がなかった大人と大人に守られているから大丈夫だと油断していた子供たちと私だけだった。彼と戦おうとした大人たちは一瞬で殺されてしまったのだ。子供たちが大泣きする。それも当然大人たちのほぼ最大勢力で殺しにかかって一瞬で返り討ちにされたのだから。残された私たちに勝ち目がないなんて誰の目からも明らかになっていたから。残った大人は子供たちを守るようナイフを構える。その足はビクビクと震えていた。

「ねぇねぇ。お前らさ?千夏の神の血のこと隠してたでしょー?ほらほら詳細について今ここで話して?」

語尾から音符が消え楽観的さも少しは無くなったもののその子供っぽい喋り方とその圧倒的な力を見せつけられ彼の笑みに狂気を感じた。この吸血鬼はわかっている。完全に色々なキャラ喋り方。態度。全てを理解しているようだった。残った大人はビクビクしながら私の神の血について話した。

神の血は王の血の上位互換であること。王の血はただ吸血鬼にとって極上の味がするだけだが神の血は吸血鬼の弱点を諸々消し去ってしまうほどの力があるという。吸血鬼の弱点は太陽の光や流水だ。そのほかにも銀ナイフや銀の弾丸をも無効化してしまう。そんな代物だった。

それだけで最強生物になれると言うチートのようなもの。そんな事実を隠していたのは過去に神の血を持つものがいたことがあったのだがその人は吸血鬼に恋して吸血鬼側についてしまい家系が滅びかけたらしい。私達がいないと討伐できるものがいないのだ。その時はなんとか吸血鬼側についたその人を殺して勝つことができたらしい。定期的に血を飲まないと弱点なしを維持できないようだった。その吸血鬼は弱点こそ再びあるようになったが未だ殺せていないらしいのだ。だからこそ神の血を隠した。

大人はそれを震えながら彼に説明した。子供たちはビクビクしながら私に抱きつく。18歳以下の子供で一番強いのが私だからだ、と言っても私は16だけれど。

彼は手を出さずにその話を聞いた。時々私のことを見ているような気がしたけど。

彼は大人に対してこう質問を投げた

「ならなぜ彼女を殺さなかった?」

大人はその質問に対して困ったような顔をすると彼は再度行った

「そんな血を持つ彼女が敵になることを恐れたのなら殺せばいい。どうして殺さなかった?大人であれば容易いだろ?どうせ千夏が赤子の頃からその事実を知っていたのだろう?なら殺せたじゃないか」

と彼が言うとその理由について言うのをためらているようだった。そんな大人に彼は言った

「早く理由を言わなければこいつらも含めて全員今ここで殺す」

そんな圧があって彼ならやりかねないほどの雰囲気を纏う彼に逆らえず大人はその理由を口にした

それは神の血を持つものは強くなれるという。普通の人間と比べて強いらしいのだ。それは色々な意味でだそう。身体能力はもちろん。精神的な意味でも神の血の持ち主は強くなれる傾向にあるらしい。近年少しずつ戦力が弱まっている私たちの家系では少しでも戦力は必要でそんな中生まれたのが神の血を持つ私だった。

本来であれば敵側に回った時の不利益が大きいため殺すことが神の血を持つ人間に与えられた運命だった。だが神の血を持つ人間は普通の人間と比べて強くなれる。そんな私を殺すことを大人は躊躇った。神の血を持つものは吸血鬼に好かれやすい傾向にある。その血が理由なのは勿論だがそのほかにも好かれやすい理由はあるらしい。まさしく吸血鬼のために生まれた人間。それが神の血の持ち主だった。戦力を削ることもできず子も簡単には生まれない。吸血鬼に殺されるたび戦力は削れ子が生まれても戦えるまでに成長させるには時間がかかる。手段を選ぶ暇などなく私及び子供たちに神の血の詳細を隠して育てることを決意したのだという。

だから私は他の子と比べて成長スピードが異常だったし彼が神の血について私に教えてしまった時はどうしたものか考えたらしい。ただでさえ今の状態でも彼には勝てないのに弱点がなくなれば勝機は消え失せる。

だけど私を殺すことは戸惑うことだった、何せ私は任務以外にも大人の手助けとして家のこともしていたし子供たちを守ることまで率先して行っていた。私を殺すとその分の不利益を被るし子供たちも悲しむ。そうなればまた戦力にまで影響を及ぼすから。だからそのことに関する会議をするため私を部屋に閉じ込めた。そのあと大きな破壊音が鳴り響き彼がいたことで私が彼側に行った。もしくは行くことを恐れ殺しにかかったところ見事に返り討ちとのこと。彼は大人に言った

「戦力戦力って子供のこと、千夏のことなんだと思ってんだよ?警戒する気持ちはわかるがな。それにその気持ちが先走って冷静さを欠いた結果絶対に勝てない相手。俺に挑んでしまって殺された。無様な結果じゃないか。お前らが絶対に維持したかった。増やしたかった戦力は半分以下だぞ?w」

私は驚いた。人を簡単に殺す吸血鬼。そんな彼が私たちヴァンパイアハンターの子供のことを考えてくれている

「ありがとう。最強吸血鬼さん」

と笑顔で答えると彼は不貞腐れた感じの笑顔でこういった

「湊だから、そう呼んで」

と、私は最強吸血鬼のところを名前に変えて再度言った

「ありがとう、湊」

彼は笑顔に戻りこの場を去った。神の血を持っていることを理解したはずだから私のことを狙うかと思ったがそうでもなかったらしい。

子供は怯え未だ私に抱きついて大人は考え込んでいる。主戦力が全員死んで今やあまり今まで戦闘に参加しなかった吸血鬼に関することを調査する大人や家のことをする大人。怪我などの病人を診てくれる大人。つまり吸血鬼と戦えない大人と子供しかいないのだ。一番強いのが必然的に私となってしまう。ただ私は神の血の持ち主とはいえ中S級ハンターだし子供だからそこまで強いわけじゃない。あくまで子供たちの中で。この年齢で女にしては強いってだけなのだ、

これからどうするか私を含む話し合いが行われた。

私はヴァンパイアハンターをする上で一つの疑問を実は抱えていたのだ。

その疑問も口にすることはなかったが私が主戦力のいま話してもいいと思った。

だから会議で私は長年抱え続けた疑問を口にした

「ねぇ、本当に私たちって吸血鬼を殺さなければいけないの?」

その疑問を口した瞬間、場は静まり返り大人は「何を言ってるんだ」などの罵声を口にし始めた。私はそんな中で机を叩き大人を黙らせるとその疑問を抱え出した理由を話し始めた吸血鬼の食糧は人間の血だ。だけど人間を殺す必要なんてないんじゃないか。血を与えてあげる代わりに人を殺さない。そんな契約を交わせばいいんじゃないのか。その契約に違反し人を殺したら人間と同じように罰を受ける。

そんな制度でもいいんじゃないか。私たち人間は動物を殺してその肉を食べる。それは生きるための行動だ。生きるための殺しだ。吸血鬼だって今はそれをしているだけ。私たちの吸血鬼狩りの行動も吸血鬼に殺されないための行動をしているだけ。吸血鬼がやっていることは私たち人間が動物にしていることと何も変わらない。そう今まで思っていたことを全て話した。でも大人は

「殺されてからじゃ遅いんだよ。殺される前にやる。そうじゃなきゃ人間は生きられない。吸血鬼という脅威に怯えながら暮らすなんて無理なんだ」と行為を正当化し始めた。だったら動物はなんなんだ。 人間に殺されるかもという恐怖を生きてる間抱え続けているかもしれない。動物の気持ちなんてわからない。でも吸血鬼が人間にしてることも人間が動物にしてることも変わらない。なんなら吸血鬼の方が偉いのかもしれない。だって吸血鬼は自分の食糧分と自分を殺しにかかってくる人間しか殺さないけど人間は殺そうともしてこない吸血鬼は勿論、恨みや快楽いっときの感情で同じ人間の命だって奪うんだ。人間の方が悪いんじゃないか、過去に吸血鬼側についた神の血を持つ人間の気持ちが少し理解できた気がする。吸血鬼と共に人間狩りをする気はないけど吸血鬼とも話をつけたい。だから吸血鬼の王である彼にもう一度会って話をしたい。そう思った。彼に会いたい、彼の考えを聞きたい。そう願いながらあてもなく歩く。会議では大人の人たちと話しにならずむしろ神の血を持つ私がそういう考えだから過去に起こったことを恐れて戦力がなくなったっていいと私を殺そうとしてきた。私は必要以上に殺したくなんかなくて逃げてきた。何度か吸血鬼に襲われたりもしたけど逃げたり気絶させたりでなんとか殺さずに済ませてきた。

彼と初めて出会った、最後に任務を遂行するため訪れたあの場所にいるかも。そう思って彼の元へ行った。すると

「やぁ♪なんのようかな?きみの意見を聞かせてくれるの?」

と笑顔で出迎えてくれた。私は大人に話したことをまんま伝えて大人にされたことも伝えた

「なるほど。まぁ僕も同じ考えというか似たような考えなんだよね。君のことは僕が殺されそうになっても殺しはしないけど」

と言った。同じ考えだから殺しをしない。必要最低限だけ、そこは理解できた。

でも私が殺しにかかっても殺さない理由。そこだけはわからずじまいだった。何度聞いても彼は答えてはくれなかった。


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