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ハイ・フライヤーズ エピソード・ゼロ

DDDコミックス・シネマティックユニバース・ノベライズシリーズ。

(翼をください。どこまでも高く遠くへ、誰よりも速く飛べるように。誰よりも強くなるために)

 青年がパワードスーツに被弾し、墜落していく。翼は燃え尽きて、もう空を羽ばたく力は残されてはいない。それでも彼は祈り続けた。


 ハイ・フライヤーズ計画は人類の脅威に対抗する次世代の航空戦力として期待されるパワードスーツ開発計画である。

 より火力のあるパワードスーツは既に存在するが、ハイ・フライヤーズの特徴はその名の通り高い飛行能力にあった。この全身スーツには折り畳みの可変翼が搭載されている。

「またの名をイカロスと呼ばれているわ」

 指揮官の女が資料を片手に説明している。ここは政府直轄の機密軍事施設であり、洋上の要塞だ。

 被験者として集められた少年少女達。彼らは人類の直面する未知の敵と戦うために戦場に投入される。新兵器として。

 2000年代初頭の事、未知の敵バグスは度々地球に襲来。この虫のような生体ドローン兵器による攻撃に、世界の主な主要都市や軍事施設は壊滅的な被害を受けた。人ほどのサイズという小型で機動力が高いバグスのドローン兵器との戦闘に従来の通常兵器はほとんど役に立たなかった。

 そこで各国はこの脅威に対抗するため世界政府を樹立、洋上に要塞を築いて、協力して対抗措置を模索した。軍事産業の兵器開発で、兵士を強化してこのバグスに対抗するパワードスーツが開発された。これは有効で人類はようやくバグスと戦える力を手にした。

 やがてバグスと戦うために作られ、育てられた被験者の少年少女達が戦場に投入されるようになった。優れた兵士の遺伝子から複製されたクローン兵達だ。

 彼らは身体機能を強化するため薬物を投与され、パワードスーツを戦場に投入するための使い捨ての部品のように扱われていた。未知の脅威から世界を取り戻すために人類は倫理を侵した。


 非常警報が鳴り響いた。見上げると空を黒く染めるバグスの群れが洋上の要塞に迫る。ハイ・フライヤーズ部隊に出撃命令が下された。メタルスーツに身を包み、ヘルメットを装着する。バグスの生体ドローンの強固な装甲を破るレーザーライフルで武装する。

 攻撃開始を待つ少年少女達。生まれながらに力を与えられ、その人生のすべてを人類存亡のために捧げられる。この中の何人が生き残れるだろうか。

 洋上要塞の防衛システムが機銃やミサイルの一斉掃射でバグスを牽制する。凄まじい爆発がバグスの群れを蹴散らす。だが攻撃を掻い潜ったバグスが洋上要塞に接近する。

 ハイ・フライヤーズはバグスに向けて次々と翼を広げて出撃する。敵をレーザーライフルで狙撃する激しい空中戦だ。

 シグマと呼ばれるその少年もその中にいた。被験者は皆コードネームで呼ばれていた。シグマも施設で与えられた名だ。本当の名は知らないし、そんなの最初からないのかもしれない。どうせ自分も誰かのクローンだと彼は思った。失うモノは何も無い。彼もハイ・フライヤーズの少年兵士の一人だった。

 無数のバグスに呑み込まれながら、敵の攻撃を避けてレーザーライフルを撃ち続けた。

 仲間達が虐殺されて墜落していく。ついさっきまで隣に立って出撃を待っていた少女もバグスの刺のようなミサイルに腹を貫かれて絶命した。

 シグマは初めての戦闘で、初めて強烈な死の恐怖に直面した。

 やがてシグマもスーツの翼にバグスの攻撃を受けた。飛行機能を失ったシグマは墜落していく。

 気付いたら海面に叩きつけられて、海に沈みながら彼の意識は薄れた。海中には多くのバグスの残骸と仲間達の死体が沈んでいく。

(死ぬのか? ボクはこんなところで? まだ何も世界を知らないのに?)

 海水の冷たさが、海底の暗闇が彼を包み込む。

(嫌だ! まだ死にたくなんかない! 死にたくなんか)

 そう思いながら、意識を失った。


 目が覚めるとシグマは病室のベッドに寝ていた。腕には点滴の管が繋がれている。

「生きてる?」

 すべては悪い夢のように思えた。彼は生き延びた。

「やっとお目覚めね」

 壁に女が立っていた。彼の目覚めを待っていたようだ。初対面だ。黒人の美しい大人の女だった。

「あなたを私の部隊にスカウトに来たのよ。イカロスの、たった1人の生き残りさん」

 女は笑っていた。まるで誘惑する悪魔のように。


今後の本編、クロスオーバー企画も進行中。

お楽しみに!

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