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飛んできた電波

 トレーニングを続けるある日のこと、オレのところに電波が飛んできた。

「何だ? コレ?」

 そう思いつつ受信してみる。

「ふむふむハハーン。わかったぞ」

 名探偵みたいなことを言ってみたが、実はさっぱりわからない。

 もう一個電波が飛んできたので、それも受信してみる。

 パラボラアンテナをヘルメットにした、パラボラヘルメットが無くても受信できる。いい時代になったものだ。

 この十年で時代は良い方に変わった。

 電波を受信すると、その電波はこんなことを言い出した。

【ライネス、ライネス、聞こえますか? わたしはアンナ、アンナです】

 女の子の声だった。かわいらしい感じの。

 オレはさらに耳を傾ける。

【ライネス、わたしは待っています。待っています】

 アンナという少女が何を求めているかはわからないが、オレは会ってみたいという気持ちになってきた。

 そうしなきゃならないような気がするのだ。

「どこ? どこにいるの?」

 オレはおもむろに聞いてみる。

 それが向こうに伝わるかはわからないが。

【ああ、ライネス、聞こえたのね? わたしはあなたが来るのを待っています】

 時間なのか、それともサイキックパワーが切れたのか? そのままアンナの声は聞こえなくなった。

 オレはアンナに会いに行くことにした。どこにいても必ず会いに行く。待っててね。

 というか、電波が受信できるようになるなんて、これもPSI研究所で日々トレーニングをしているからだろうか?

 もっとも筋力トレーニングしかしてないさせてもらってないけどね。

 この調子なら行った甲斐もあるというもの。

 でもどこを探せばいいのか? わからない。

 PSI研究所に通い続ければまた電波が飛んでくるかもしれない。なーんて甘い期待をオレは抱いていた。


 次の日、学校に向かったオレは友達に聞いてみた。

「この辺りで、『アンナ』なんて女いないよね?」

 すると友人のノッチは驚いた顔をしていた。

「隣のクラスに、いるじゃん」

 は? 隣のクラス?

 全くの盲点だった。あのアンナが隣のクラスにいる?

「ノッチ、すまんまた後で話そう」

 ノッチはまだプレイ中のゲームの話をしたそうだった。しかし、オレはそんなノッチを置き去りにして、隣のクラスへ向かった。

 オレの小学校の五年生は三クラスあった。

 不良ばかりの一組、変態ばかりの二組、アホの三組。

 そんなイメージがある。

 アンナという女の子がいるのは、三組らしい。アホだったらどうしよう? 少しだけ考えてしまう。ちなみに、オレは二組だ。変態なのかな?

 恐る恐るオレは三組をのぞいてみる。

 野郎どもはやはりアホなことをしていた。

 押しくらまんじゅうみたいなことを教室の奥でやっていた。

 女子はというとそれを見て笑っていた。

 そんな中に彼女はいた。

 ピンクのワンピースを着た、ブロンドヘアーの彼女。

「ああ、彼女がアンナだよ」

 ノッチだった。ノッチが指さしたのは、やはりピンクのワンピースを着た、ブロンドヘアの女の子だった。

 か、かわいい。

 あんな子がオレに電波を送ってきた、あのアンナだったいいのにな。

 そう思っていたら、アンナもこちらに気づいたらしい。

 こちらに手を振り、にこりと笑みを浮かべている。

 オレはしどろもどろになり、カチコチに固まってしまった。

 ロープでくくりつけられたような感じ? いや、氷付けになったような感じだ。

 自慢の筋肉も緊張で固まってしまった。

 そんなオレを見て、アンナは笑顔だった。

 オレはアンナにむかって歩き出そうとした。するとノッチが手で制してくれる。

「ライネス、隣のクラスだぞ?」

 オレはハッとなる。この小学校には暗黙のルールがある。自分のクラス以外は入らないというものだ。

 入ったヤツは、あんまいい顔をされない。のけ者になる可能性だってある。それだけは避けたいだからノッチはオレの恩人だった。

 三組中に笑顔を振りまくアンナに、近づくことすらできない。オレの心はやきもきしていた。

「どけ、邪魔だ」

 後ろから突然言われ、オレとノッチは道を開ける。そこにいたのは先日、ビームを出して宇宙人のキャトルミューティレーションからオレを守ってくれたヤツだ。

「キミは」

 ヤツはそんなオレを鼻で笑い、問いに答えることなくクラスの中へ入っていった。

 そしてヤツはアンナの席の前へ行き、彼女に話しかけた。

 何を話しているかは聞こえないが、楽しそうにはしている。

 オレは「ぐぬぬ・・・・・・」と言うのが関の山だった。

「アレ、シゲサトだね」

 ついオレは復唱する。そいつは誰だ? とそんな感じにね。

「ああ、一組の不良の一人。シゲサトだよ」

 一組の組員だったか。道理で無法者だ。

 授業開始のチャイムが鳴る。

「ライネス戻ろうよ」

 そんなノッチの声に促され、オレは生返事で二組に戻る。


 放課後、PSI研究所にオレは行く。PSI研究所に行くことは、オレのいつものパターンになろうとしていた。

 オレはいつも通り、筋力トレーニングに励んでいた。

 鉄アレイを持って、腕を伸ばしたり縮めたり。を繰り返していた。

「何を悩んでいるんじゃ?」

「老師・・・・・・」

 老人が現れた。ちなみにハカセとは別人だ。老師はトレーニングを見てくれる人という訳でもなく、サイキックパワーを高めてくれる訳でもない。ただそこにいる、不思議な人だった。

「実は、カクカクウマウマで」

 オレはテキトーに説明する。シゲサトのこと、アンナのこと、ノッチのこと。

「なるほどのう、暗黙のルールか」

 老師は顎を触りながらニコニコ笑っている。

 老師は常に笑みを絶やさない。見習いたい。

「ライネス、いいか? 第一のルールは、ルールが無いということなんじゃ」

 ルールが無い? どういうことだ? 少し考える。

 そうか! わかった!

 オレはルールに縛られすぎていたということだろう。本来人間はもっと自由なはずだ。だからオレももっと自由に生きてもいいんだ!

 老師の教えを心に胸に刻もう。

 そう思った。

 その日の筋力トレーニングはかなりはかどり、いい汗がかけた。オレはつくづく思う。もっとアクティブに生きねば! とね。

「ほれ」

 老師から何かを手渡しされた。

 手の中で何かが破裂する。

「あっち!」

 爆竹だった。

「フォフォフォ・・・・・・文字通りハッパをかけてやったわ」

 老師の心憎い演出に、オレは脱帽した。

「へへっ、老師にはかなわねーや」


 次の日、ノッチが制止するのをオレは振り切り、アンナに会うため三組へ向かった。

「あら、やっと来れたのね?」

「うん、やっと来れたよ」

 オレもアンナも笑い合った。アホのように笑った。これも三組の教室に入ってきたおかげかもしれない。

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