表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の海で遊ばせて  作者: ノマズ
1,星の海で遊ばせて
43/243

エピローグ ~星の海で遊ばせて~

 文化祭が終わり、十月三十一日は、ハロウィン演奏会があった。吹奏楽部、管弦楽部、ピアノ部、コーラス部が、放課後の体育館を貸し切って行う、二時間のコンサートイベントである。生徒の他にも、教員や、近隣住民も聴きに来る。文化祭で誕生したカップルの初デートとしても良いイベントであるが、本来は、文化祭のステージ発表を観られなかった裏方のために開催されたのが始まりである。


 体育館入り口には演奏会の受付があり、ドラキュラや魔女に扮したコーラス部、吹奏楽部の生徒が演奏会のパンフレットを配っていた。表には星空の背景に『starry skies』という筆記体の表題、裏には演奏曲が書かれている。


 しかし、天気は生憎の曇り。


 ぱらぱらと、小雨が降り始めてきていた。


 パンフレットを受け取った柚子は、「今日星、見えないね」と、うきうきした口調で言った。柚子にとっては、星が見えようが、見えまいがどちらでも構わなかった。この小雨が土砂降りに変わって、嵐になったとしても、もう充分幸せだった。隣には詩乃がいて、柚子の目は、詩乃の横顔を見つめていた。詩乃はパンフレットの裏面を見て、こっそり笑った。


「たぶん、見えると思うよ」


 詩乃はそう言うと、柚子の前にパンフレットを持ち上げて、演奏される曲のうちの一つを指さした。柚子はその曲の題名を小さく口に出し、その歌詞を口ずさんだ。有名な英語の曲だから、最初の数センテンスは唇が覚えている。そうしてから柚子は、あっ、と、思い出すことがあって声を上げた。柚子は、じっと、詩乃を見上げた。


 詩乃は、突然柚子に、熱っぽい目で見られて驚き、ドキリとしてしまった。


 観覧席に隣り合って座り、柚子は、詩乃に囁くように訊ねた。


「――じゃあ、月までお願いね」


「え?」


 詩乃は聞き返し、それから、その意味を直感し、顔を真っ赤にしてしまった。体育館の電気が落ち、柚子は柔らかい笑顔を詩乃の肩に乗せた。ステージがぱっと明るくなり、最初の演奏が始まった。







〈あとがき〉


たくさんの作品の中から、この作品を見つけて、そして読んでいただきありがとうございます。キーワードに「ラブコメ」と入っているのにコメディー要素が入っていないじゃないかと思った皆さん、本当に申し訳ありません。ちょっとでも読んで貰いたいという出来心でつい……。またもう一つ謝らなければならないことは、1部分ごとの区切り方についてです。読みにくい部分、多々あったと思います。これについても、すみませんでした。そして誤字脱字――報告の方、本当にありがとうございました。下読みの甘さを反省しております。そしてまた、ブックマークや評価についても、お礼を申し上げます。そもそもポイントで上位を取ろう、という路線では活動してはいないのですが、それでもやっぱり、評価をもらえると嬉しいものです。


さて、詩乃と柚子のお話ですが、当初は10万文字の予定でした。ところが話が進むと、二人がどんどん行動を起こしてしまったので、これはもうしょうがないと、現在の16万文字の文字数となってしまいました。ただ、ラブコメっぽい展開を期待した方にはすみません、そういう展開は、ありませんでした。


詩乃は孤独を苦に思わない文芸少年、柚子は可愛がられて育った優しくて美人な女の子――ではあるのですが、じゃあ珍しいかと言うと、どの学校にも一人くらいはいる少年・少女だと思います。舞台は私立茶ノ原高校という、ちょっと独特な校風の学校ですが、全国的に珍しいかと言えば、特に私立校なんかは、それぞれに特徴があるので、茶ノ原高校が別段珍しいわけでもないと思います。その珍しくない中で起こるちょっとした出会い、切っ掛けの連鎖というものの中にこそ「魔法性」があるのではないかと、そういう着想がこの話の原点にあります。


とは言いつつ、「なろう」に投稿してるのに魔法も出てこなければ、魔物が出てくるわけでもない。我ながら、どうしてこの作品をファンタジーが売りの「なろう」に投稿したのだろうかと、ぽつっと思ったりします。『ネット小説大賞九』を取るぞ! と気合を入れた作品ではありますが、応募する賞を間違えた可能性に、今更ながら怯えています。


実は、詩乃と柚子の話はまだ続きがあったりします。本編中、回収されていない伏線なんかがあるのはそのためです。その続きのお話を、皆さんの前にお披露目できる日が来ると良いのですが、果たして発表できるかどうか、まだ私自身わからないでいます(-_-;)


そういうわけで一先ずこのお話はこれで「完結」としますが、感想等々、随時受け付けております。この作品を通して何か、皆さまの心の琴線に触れるものがあれば、嬉しく思います。

ご精読、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かった! すれ違いに重ねたすれ違いに、価値観の差や言葉にしないことの受け取り方の相違。じれったくてもどかしくて最高でした。 水上詩乃。小説も地の文を多く書いて文学的な表現が好きみた…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ