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 それから数か月後――デビューの半年前のことだ。

 満開ロマンティックとして、初めてコンサートに出演した。研修生のグループが三組集まった合同コンサートは、収容人数二千人のキャパシティを超える募集があり、毎公演完売とのことだった。

「やべえ、めっちゃ緊張する!」

 たいげんコンビとして歌っていたときとはまた違ったドキドキだ。舞台袖で手をグーパーしながら緊張をほぐしていると、美月が両手を握りしめてきた。

「元気の武器は笑顔なんだから、何があっても笑ってなきゃだめだよ」

「――おう!」

 スタッフにも言われた言葉だ。

「美月もちゃんとファンサしろよ」

「リーダーの言うとおり、完璧にこなすよ」

 そう、元気は満開ロマンティックのリーダーなのだ。リーダーとして、ファンを明るく楽しくさせることを活動方針に掲げた。そこで、クールビューティと言われる美月にも、ちゃんとファンサービスをするよううながしたのだ。

「俺の命令だからじゃなくて、ちゃんとファンのためにやれよなー」

「元気にだったら心から笑えるんだけどな」

「なんだよそれ」

 ふふ、と笑う美月は、確かにステージ上とは別人のようである。四年もの付き合いとなればさすがに見慣れたが、他のグループからは、ざわざわと驚きの声が上がっている。

(ほんと……すげーギャップ)

 と、そこに大河がやって来た。今日の衣装はメンバーカラーをわかりやすくするというコンセプトのため、大河は真っ青のジャケットを着ている。

「うわ。美月さん白のジャケットめっちゃ似合ってますね」

「ドーモ」

「大河も青いのかっけーな! ……俺のピンク、なんか浮いてねえ?」

「いや、かわいい」

 真顔で褒められると照れる。

大河が来た途端仏頂面になってしまった美月を肩肘で小突き、大河とはこぶしをぶつけ合う。

 これは、たいげんコンビとしてステージに立つとき、いつもやっているジンクスだ。やりすぎて、特に言葉をかわさなくてもこぶしを繰り出すタイミングが計れるようになった。それを見た美月がますます不機嫌になっているのには気づかない。

「よっしゃ! やるぞー!」

 そして、コンサートは始まった。


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