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イチとパート3

坂倉は勢の横を素通りして、日米共同基地の中に引き返していった。だが勢はそのまま基地の外に足を踏み出す。


そして振り返る事もなく、勢は坂倉に問う様に言う。


「お前はどこに行きたいんだ?」


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ccccccccc


「うあ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝ー」

耳をふさぎたくなるような悲鳴が倉庫内に響き渡る。


そこには地べたを張って悲鳴を上げている男が三人。その様子をガタガタと震えながら見ている女の子が一人。

それから教授と呼ばれる老人がいた。


「全く・・・なんで君たちモグラ人は逃げ出したのかね。お前らはわしのモルモットじゃ。馬鹿にもわかるようにきっつい罰を与えんといかんのー」

教授はそういいながら手元にあるスイッチのオン、オフを繰り返した。


すると郷間、桂馬、ミミさんの三人は、片目を抑え込み金切声の悲鳴を上げた。

教授がスイッチをオフにすると痛みは止まり桂馬が何とか教授に説明する。

「宇宙人がこの近くに出たッス。だから自分たちは逃げ出したわけじゃないッス」


「フン。穴蔵にいたお前らがどうやって宇宙人の動向を知ったんじゃ?」

教授の切り返しに桂馬は口を噤んだ。


その様子を見た教授は機嫌悪そうにフンっと鼻を鳴らす。


「全くそのことに関してはまただんまりか。飽き飽きするわい。だがお主等がいた地下施設。あれは現代の技術でも作るのは無理。ましてや100年単位も前の事となると無理に無理をかけて不可能じゃ。宇宙人が実在したというのはわしも信じとるよ。じゃがな宇宙人とお主等が敵対しとる理由が地上の人々を守るため?笑えてへそで茶が沸くぞ」


「俺たちは宇宙人を殺す。それが俺たちに与えられた使命。何が何でも成し遂げる」


「郷間よ。お主はいつも宇宙人殺す殺すと言っておるが、こんなヨボヨボな老人を前に這いつくばっておいて、よう言うわ」


「敵は宇宙人だ」


「はっはっは!・・・一般人にとってはお主等も危険人物じゃよ。何てたって白昼堂々日本刀を持つ異常者じゃ。まあワシにとってはこんな素材見たことないから弄繰り回せて幸せじゃがのー。まさに未知!宇宙人の体はもっとすごいと思うとわくわくが・・・」


教授が少年のように目をキラキラと輝かせていると、携帯音がピリリ…と鳴った。教授は冷めた表情になって電話に出る

・・・・・・・

・・・・・・・

 一分間ほど教授は無言だった。最後に「わーった」と言って電話を切る。その時の教授の顔は気持ち悪いほどの満面の笑顔だった。


「お主等よくやった。何じゃホントに宇宙人とやり合っておったとは・・・しかもいい置き土産もある。全身ではないのが、ち~と残念じゃが充分じゅうぶん♪」


そういって教授はどこかに消えて行った。


教授のお遊びから解放された三人。その三人を見て幸子は頭を抱えてうずくまった。


「・・・自分たちは本当に地上人を守らないといけないんッスか!自分もう嫌ッスよ!!」


桂馬が元気よく愚痴をこぼす。するととミミさんが答えた。


「どっちにしろ俺たちはあいつらには逆らえねぇ。こっちの片目はえぐって取れば済む話だが、地下のみんながどうにもいけねぇな、ちくしょう。」


「ふん。宇宙人を倒すためなら全員死すら厭わぬ・・・」


ミミさんが言った後の郷間の言葉が気に喰わなかったのか、うずくまったまま幸子がボソッと言う。

「にい・・・くうきよも」

桂馬は幸子に気を遣って幸子に同調する。

「そうッスよ。そんな考え郷間さん以外ではもうじっちゃま達しかいませんよ」


「き、きさまら今までのご先祖様たちに申し訳がたたぬとは思わんのか!」


「・・・ご先祖様たちは本当に正しかったのかねぇ」


「ミミさんまで何を!?」

「………」

郷間の言葉に誰も言葉を続かせない。


もう疲れた


無言でそう言ってるような気がした。

そんな中、息を切らせた坂倉がやってきた。坂倉は大声を出して言う


「お前たちのことを教えてくれ!!」


四人全員が呆気にとられた。

宇宙人の仲間かもしれない男。

つまり敵だ。

その男が汗だくになりながら戻ってきて、大声で馬鹿みたいなことを言っている。警戒を通り越して呆けてしまう。


時間が止まったかのように沈黙が続くと大声を出した者はバツが悪そうに眼をそらした。

その坂倉の様子を見て、幸子は笑った。


「フフッ・・・にいーちゃんより、くうきーよめてなーい」


幸子がいつもののんびり口調でそう言った。それを皮切りに緊張の糸は緩み、会話が流れる

「プっ、たしかに郷間さんより読めてないっすね」

「なっ、あんな宇宙人と比べるな」

「うちゅーじんじゃないよ―たぶん。だってヘタレっぽーい」

「ぶくっクク」

「おッ!ミミさんが笑ったの自分初めてみたっす」

「・・・忘れて…くれ」

「いや待て。宇宙人は狡猾だ。ヘタッレっぽさを演じてるだけかもしれん!」

「郷間さんはあれっすよね。真面目系ボケキャラっすよね」

「む、なんだその単語は?」

「地上に出てきて覚えたッス」

「スーハ―、コホン。ア~とりあえず俺たちがやるべきことは・・・」

「みみさーんまってー、わたしがいいたいー」


幸子は坂倉を見てしゃべった。

「わたしがこれからーしたいことはー・・」


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髪飾りの女性はイライラしていた。


「クソ、あんの地上人ども。卑怯者の上に役に立たないじゃない。守る価値があるの!?・・・まあいい。地上人が何をしてこようと私を好き勝手できると思うなよ。何が何でも私の家族は私が守る。まずはあの宇宙人と何かしらつながりがあるあの男から情報を・・・まあその心配は必要ないか。何てたって私の仲間がもうとっくに情報を引きだしてるはず!今頃きっとアイツは泣いて喚いて許しを乞うているはずよ!!」


そう独り言を言いながら髪飾りの女性は男を尋問してるであろう倉庫の扉を勢いよく開けた。

しかし、最初に聞こえたのは笑い声だった


「あはははははは。それホントっすか坂倉さん」

「いやこんなの日常的に起こってるぞ」

「どろどろー」

「人間関係怖い。宇宙人より怖い」

「郷間、宇宙人恐怖症はまだいいが人間恐怖症にはなんなよ。今でさえお前はめんどくせェーんだから」

「いえてるッス」


そこには敵であるはずの男と家族のように思っていた仲間が楽しそうにしていた。


「何しとんじゃい!」


髪飾りの女性は大声で突っ込みを入れた。

そして、ダッシュして近づき・・・


「ジャイ!」

「ジャイ!」

「ジャイ!」

「ジャイ!」

女性は桂馬、郷間、ミミさん、そして坂倉の順に腹パンした。

「わー。いたそうー」

幸子は能天気にそれを眺めていた。


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「いい、イイ、良いいいいぃー!!」


とある地下室で、教授は歓喜に奮えながら目の前の未知をしゃぶりつくす。


「なるほど。ここが目。そしてその上にあるのが音波をキャッチする耳の役割。頭部がこんなに肥大化してるのは何故だ~。耳と同じくメスで切開は…無理か。勢君、糸ノコギリを」


「はい、教授」


そう言って助手である勢は糸ノコギリを渡す。


「うひひひひひひ」

教授は宇宙人の遺体の一部を狂気的に弄繰り回していた。


cccccccccc

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翌日


「ふぁ~あ」

坂倉は起き上がり欠伸をした。

「なんで俺ここにいるんだっけ?」

そういいながら辺りを見渡す。


そこには昨日、刀を持って宇宙人と戦ったあの四人と髪飾りの女性がいた。まだみんな眠っている様子だ。


「ああ、そうだった。俺この人たちと話してそれから・・・そのまま寝たのか」

坂倉は口に出して自分の状況を整理しようとした。


昨日の事を思い返していると、

一人、次の起床者が出た。女の子だ。確か名前は・・・幸子


「ン~―おきたのー・・・おはようー」


幸子は少し寝ぼけながらも、坂倉に朝の挨拶をした。坂倉は軽く手を上げて挨拶を返す。

すると幸子はこっちおいで~と手を振った。

頭の上にクエスチョンマークをつけながらも、坂倉は手招きされるがまま幸子の近くまで寄った。


「えい」


のそーっとした動きからの俊敏な動き。

坂倉は幸子に手首をつかまれていることも気付かずに、指の先に伝わる柔らかい感触を確かめる。


ぷよぷよだった。そして同時に一気に血の気が引いていく。

「えへへー、内緒にしといてあげるー」

「あ、ありがとう」

言葉とは裏腹に全然感謝しなかった。幸子の隣にはもう一人の女性が眠っていた。しかしその気性の荒さは折り紙付き。弟を連れ去られた時は鬼さながらであった。


その鬼の胸に俺の指が触れている。

今はただただ、目の前の髪飾りの女性が起きなくて良かったと心底思った。


それからしばらくして男のほうも目を覚ましてきた。男のほうは三人いる。

昨日話してるときにチラホラ名前が出てきたんだけど、まだ一人しか名前を思い出せない。まあ、其の内また名前が出てくることもあるだろう。…と坂倉は思った。



昨日の夜はまず自分の事を話した。その後に宇宙人と一緒にいた真の事・・・。

真は宇宙人じゃないか?という話題になったがすぐに否定してくれた人がいた。


「いや、どうかねぇ。今思えばあの男だけ服装の特徴が違ったし、あの男が何かをしてる素振りなんて見てねえな」


このセリフのおかげで真は巻き込まれただけかもしれない、という仮定を話し合うことができた。

それに俺の話を聞くだけじゃなく自分たちのことも少し話してくれた。


彼らはモグラ人と呼ばれ、この基地の特別特殊隊員という名目を持っている。


だが、その実態はひどいものだった。まず片目を義眼にされ、自分がいる位置と見たものは常に記録される。基本的にこの基地以外の出入りは禁止され、この基地内ではあの教授にいろいろな検査や実験に付き合っているみたいだ。

週に一回だけは彼らが住んでいた地下施設に帰ることを許されているが、銃を持った兵隊とともに護送車に送られるという罪人のような扱い。ちなみに昨日がその日だったらしい。


そして宇宙人が地球にいることを知った髪飾りの女性は見張りの兵士を殴り飛ばして俺と会うことになった・・・か。


そう考えながら今もグースカ寝てる髪飾りの女性に坂倉は視線を送る。


その瞬間髪飾りの女性はパチっと目を開けぐるりと眼球を動かす。


坂倉は慌てて視線を外した。まさか見てただけで殴ってこないだろうか・・・

ビクビクする坂倉。もっともその前の事を考えると殴られても仕方ない。


しかし髪飾りの女性は別の人物に悪態をつけた。

「クッソ。あのジジイ、こんな朝から一体何の用だ」

そう言いながら片目を抑えている。そしてほかの四人も片目を抑えていた。


「悪態つけてもしょうがないっすよ。トット行きやしょう」


坂倉には何のことかわからない。幸い喋っているのは一つ年下で人懐っこい性格。坂倉が名前を憶えている相手だった。

「どこに行くんだ?桂馬」

この問いに桂馬だけでなく四人が口を揃えて言う。


「地下」


幸子だけは片目を抑えたまま固く口を噤んでいた


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銃を持った兵士付きの護送車に揺られながら一行は地下施設に向かった。

着いた場所はお寺だった。


随分と古くなったお堂の入り口の扉を開ける。するとまたすぐに引き戸の扉があった。


二重扉?

お店とかでは見かけるっちゃ見かけるけど。


そう思いながら中に入ろうとするが桂馬に止められる。


「あ、ここで待ってたほうがいいっすよ」

「待つって・・・何を?」

「下に向かう準備っす」

そう言いながら一番目の入り口の扉を桂馬は閉めた。すると日の光がほとんど入らなくなりお堂の中はかなり暗くなる。

それでも何となくではあったが今何を準備しているのかは目的地と物音でなんとなくわかった。


中を覗き込むと、その部屋の畳とその下地を引っぺがしていた。畳36枚分くらい。広い。


引っぺがした先には布基礎の古い建物なので露出した土があると思っていたがそうではなかった。鉄っぽい真っ白な床?があった。光がほとんど入っていないにもかかわらずうっすらと青白く光っている。


坂倉がそれに魅入っている間も地下出身者はテキパキ動き、大引きを支えるための束柱を外していった。すべての束柱を外し終わると桂馬が言う。

「もう中に入っていいすよ。足元に気を付けてくださいっす」

坂倉は警戒しながらも桂馬に勧められるままその青白く光っている床に乗った。


おお・・・


未知のもの触れ不思議な感慨がわき坂倉の心はふわふわした。


「坂倉さん乗りました。準備オッケーっす」

桂馬がそう合図するとゴウンっと音が鳴った。


「へ??」

坂倉の間抜けな声と同時に足元が揺れる。一人だけ入り口に立っていた桂馬が遠ざかっていく。


いや・・・自分たちが…この青白く光る床が降下していた。


「うええええー!!」


坂倉の驚きの叫びは下へ下へ、闇に消えていくのだった。


ccccccc

ccccccc


下に急降下する青白く光る床に、坂倉は目を瞑り腰を低くしてこびりつく。

何故って?

怖いからだよ。

壁も柵も何もない。むき出しのエレベーターだ。しかも途中までは周りに壁?があったけど今は何もない。落ちるスピードも速い。風圧だってある。

遊園地の垂直に落ちるあのアトラクションなんて言うんだったけ。


アレだ・・タワーハッカー。すっごく怖い。


目的地に行こうとしているだけで坂倉の心はグズグズに砕けそうだった。

でもしばらくすると落ちるスピードはだんだん遅くなり、静かに目的地に到着した。


坂倉はプルプルと生まれたての小鹿のようになってここに来たことを後悔していた。



しかし次の瞬間その考えは改まる。


「近未来みてえだ」

そう言わずにはいられない。


其処にあったのは地下都市。

モグラ人の住処。

見たことがない景色が広がっていた。

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