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テンとパート3

真たちはルイの転移の能力で無事母艦に帰還した。


とりあえずは目的である同族の遺体の回収と、犯人の確保とまではいかないものの、その仲間を捕まえたことは十分な成果だ。


そう思っていたテル大尉だったが、ルイ様の顔が暗いことに気付く。

何か思いつめているような顔だった。


「あの、どうかされましたか?」


テル大尉は少し痛む左腕を抑えながら、駆け寄り尋ねる。ルイは顔を上げて笑って答える。


「何でもありませんよ」


作り笑顔だった。

ルイはその後テル大尉とすれ違い、真に歩み寄って行った。


「真さん、すいません」

「なんでルイが謝るんだ。謝るべきなのは俺たちの方なのに」

「言ったことを守れなかったからです。貴方の家族を捕縛してここに連れてくる。落ち着いた場を設けてじっくり話がしたかったんです。貴方の家族と・・・」


真はなんて返せばいいかわからず、口を閉じてしまう。そして、ルイもまた同様になんて声をかければいいのかわからなくなってしまった。そんな沈黙を破ったのは仏頂面したテル大尉だった。


「ルイ様、コッチはどうしましょうか?」


コッチというのはルイが間違えて転移石をはめ込んだ者の事。あの身体能力桁外れの女性が、たしか弟とか言ってた。


「その方は・・・一番の外周通路の11時近くに、たしか空き部屋があったはず。意識が戻るまでそこに閉じ込めておいてください。いくつか質問した後、地球に返します」


「質問するだけで地球に返すんですか?」


「はい。・・・もう地球とはかかわり合わない方がいいと思って・・・」


仲間が殺されたのに、ただ質問して返すだけ。ルイの判断に不満があるのか、テル大尉は何か言いたけだった。


しかし、ここで先に物申したのは地球人である真だった。


「待ってくれルイ」


横からしゃしゃり出てきた地球人にテル大尉は機嫌悪そうに言う。

「ちょっと地球人。あんた如きがルイ様に意見を挟もうなんて百億年速いんだけど!」


そうテルは断言したが、真は無視してルイに詰め寄る。

「関わらない、ってどうするんだ?」

「故郷に帰ります」


「待ってくれ!」

「なぜですか?」

「俺は・・・、俺はお前と結婚したい。地球にいてくれ」

冷たくしようとしているルイに、真はすがるように言った。ルイは悩んだ。悩んだ末に出した回答は・・・


「私はこの船の総指揮を任されている・・・責任者です。死者もでました」


その後ルイは言いにくそうにして、この言葉も付け加えた

「私は、貴方と結婚したいとは思っていません」

・・・・・・


真はルイのその言葉を聞いて目が点になる。しばらくしてようやく言葉の意味が理解できた真は、ルイに背中を向け、力なくルイから遠ざかって行った。宇宙船という空間で真はどこへ行くのか、きっと真にもわかっていない。


ルイは真の背中を見えなくなるまで、ずっと握り拳を作って見ていた。見えなくなるとルイは深い深いため息をつく。


「ルイ様?」

「大丈夫です。・・・・テル大尉こそ左腕のケガは大丈夫ですか?」

「・・・はい。大丈夫です。血ももう止まっています」

「念のためテル大尉は治療室に行ってくださいね。カイ大尉はそちらの方を空き部屋に閉じ込めておいてください」


今は作り笑顔を作る元気もないルイ様。テル大尉は口を開くこともできず黙って頷く。

カイ大尉は「ハイ」と返事をした後大柄な体を活かして男を背負い、黙々と歩いていく。


テル大尉も治療室に向かうためこの場から離れようとした。

「テル」

不意に名前を言われてびっくりするテル大尉。呼んだのはルイ様だ。


「治療が終わったら久しぶりに私の部屋でお茶しない?」


ルイ様に「テル大尉」ではなく気軽に「テル」と名前を呼ばれるのもお茶に誘われるのも本当にうれしくてテル大尉は明るく「はい。喜んで!」と元気よく答えた


テルは治療室でさっさとキュアにケガを治してもらった後スキップしてルイ様の部屋を訪ねた。


ルイ様はテーブルに紅茶とお菓子を用意してくれていました。

「ケガの具合はどうでしたか?」

「キュアがもうバッチリ治してくれました。元気です!」

「そうですか、よかったです。・・・さ、どうぞ座ってください」

「はい」

軽く挨拶をした後テーブルにつきお茶を一口飲んだところでルイ様に尋ねられます。

「・・・私、真さんと仲直りしたいんだけど、どうしたらいいと思う」

・・・・・

どゆこと?

テルの口から紅茶が漏れ出す。

何かの冗談かと思ったがルイ様は真剣な表情だ。カップに注がれてる紅茶を全部飲み干してテル大尉は聞いた。


「ルイ様はあの地球人の事、嫌いなんですか?それとも好きなんですか?」

「嫌い、ではないです。ですが結婚したいかといわれれば、はい、とは言えません。・・・・そう友達!友達にはなりたいと思っています!」


友達…思ってたよりもあの地球人のことを悪く思っていない。


まあ、地球人と友好関係を結ぶ目的で地球に来たのだから仕事に殉じているとも捉えれれる、けど・・・


テル大尉は言うセリフを考えて尋ねる。


「…すぐ故郷に帰るんですか?でしたら別に今さら地球人と仲良くなっても・・・まさかあの地球人を連れて帰るなんて言いませんよね」

半ば冗談のつもりで言った言葉にルイ様は顔を背けていた。


マジかー。


「公私混同はされてませんよね。あくまで地球人と友好を結ぼうとしているのはお互いの技術や文化を共有し、さらに発展していくためです。地球人一人連れ帰ったところで意味なんてありませんよ。ルイ様」


そういわれルイはしょぼんとなった。


「ああ~、別に攻めてるわけじゃないんです。ただルイ様がこれからどうしたいのかわからなくて・・・」


「・・・私は・・・・真さんを故郷に連れて行こうなんて思ってません。テルに言われてそれもいいかもと思ったけど・・・私が仲直りしたいのは気持ちよく別れたいからです。このままだと地球の方の悪いイメージばかりがこびり付いてきそうで怖いんです」


「ルイ様・・・」


初日にバケモノ女に襲われて以降、ルイ様は単身地球で現地調査を三年行っていた。

地球人と積極的に関わっていき友達と呼べる存在もできた。しかし、それはあくまで地球人の姿をしているときだけ。本当の姿を見せた時、ルイ様は端的に言って拒絶された。会って話して遊んで信用できると思って拒絶された。地球人に・・・。


確かにあの真とかいう地球人は一度私たち同族の姿を見ている(ぺぺ中尉とトト中尉の遺体だけど)

それでも嫌悪の目で私たちを見ている風ではない。しかしな~・・・なんて答えればルイ様にとって一番いいのか、う~ん。


テル大尉がそんな風に悩んでいたらこの部屋の扉が勢いよく開かれる。

「俺にいい案がある。聞くかルイ?」

その者はため口でルイに話しかけた。


ccccccccccc

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真はいく当てもなく歩く。

転移した直後のひらけた場所から今は通路のような場所を歩いていた。

この通路は微妙にカーブしている。実はこの宇宙船は円盤形で外周通路が二本ある。真はそのうちの一本の通路をずっと歩いていた。

この船の外周は4800メートル、直径は約1500。乗組員100名。そのため歩き続ければその乗組員にどこかで出会う確率は充分にあった。その乗組員と真はばったり会ってしまう。


宇宙人は地球人の真を見ると「あっ」と間抜けな声を漏らした。その後じーっと観察する。

「大尉?ですか。えーと初めて見ますけど、失礼ながら名前はなんとおっしゃいますか?」


真はその者の見た目に少し言葉を詰まらせるが、相手に失礼がないように自己紹介した。

「俺の名前は林田真だよ」


「はっはっ。まるで地球人みたいな名前ですな。あ~地球に着いた時の仮の名前ですか。しかしルイ様以外地球に降りられない今の状況はいつまで続くんですかね。私も早く地球の方と会ってみたいです。少尉の私ごときでは夢遠きことだとは思っていますが・・・」

「俺がその地球人だよ」

「はっはっ。また御冗談、ん?」


宇宙人は改めて真を凝視する。

真も宇宙人の姿をよく観察した。


側頭部ななめ近くの場所に目が飛び出しているように見えるところがカエルっぽいが、アレは目ではないような気がする。なぜならその下に目がついているからだ。つまり地球人とそう変わらないところに目、鼻、口がついている。口に至っては地球人よりも小さくかわいく見える。目らしきものがついている頭部のほうは髪などはなくシルエットは分厚めなロシア帽をかぶっている感じだ。そしてその頭部と体のほうには模様がある。ペペ中尉やトト中尉を見た時も思ったがどうやらこの模様は人それぞれで違うみたいだ。見様によってはおしゃれなタトゥー。指の太さはやや太いが決して大きいわけではなくむしろ長さだけで言ったら地球人より小さい。


そうマジマジと見ていたら目の前の宇宙人がこういってきた。

「本当に地球の方なんですか!?」

期待と興奮で真に近づく宇宙人。


「う、うん。そう、だな」

思ってたよりも親しく接してきて一瞬戸惑いながらも、真は答えた。


「ふぁ~」宇宙人は目をキラキラさせていた。


「わ、わたし地球の方と今日会えるなんて夢にも思っていませんでした。・・・失礼ッ!まだ自分の自己紹介をしておりませんでした。わたくしはピルクと言います。階級は少尉であります」


「よろしく、ピルク。ところでピルクは男?女?」

「な!?失礼ですぞ」

「ごめん。でも俺には見分け方がわかんなくて。声が高いから女性?」

「自分は男です。声で性別なんてわかるわけないではありませぬか」


どうやら宇宙人は声色では性別は判別できないみたいだ。


「ところで真殿はなぜここに?…はっ!まさかルイ様のセフレでございますか!?」

冗談っぼく言うピルク。


真は腕をくんで何て返したらいいか困った。でもこんなにフレンドリーに接してもらっているからか悪い気はしない。真の口角は少し緩んでいた。


ピルクも地球人とのファーストコンタクトのつかみはバッチシ!やった!

と心の中ではしゃぐ。するとと同時にピルクの脳内にはルイの声が届いた。


「すいません。そちらの方を執務室にお連れしていただいてもよろしいでしょうか?」


「ルイ様!?」


ピルクはびっくりして大声を上げた。


「どうかしたのか?突然ルイの名前を叫んで・・・」

「ああ・・・今ルイ様から思念伝達があって、あなたを執務室に連れてくるよう言われました」

「思念伝達?」

「ご存じないですか?ルイ様の転移石はすべての転移石とつながっている特別製で、私たち転移石所有者の動向を常に把握できたり思念を飛ばしたりできるんですよ。・・とは言ってもルイ様は優しいから普段は【転移石能力抑制カバー】という通称カバーを転移石につけてるから、私たちのことを監視しないようにしているのですが・・・」


ここでピルクは冷や汗をかいた。

まさかセフレ発言からルイ様はカバーを外していたのでは?冗談とはいえこの船の指揮官様を侮辱したと知られたら・・・まずい!のではありませぬか!!

ピルクの冷や汗は滝のように流れ出た。


「ル、ルイ様はいつからカバーをお外しに?」

「つい先ほどですけど・・・」


普通に言うルイの声がピルクの脳内に聞こえる。よかった。とりあえずは安心か・・・そう思い真殿と目が合う。真はピルクの心配事を理解し無言で頷いた。ピルクも頷く。

二人は妙な連帯感をもって執務室に向かった。


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執務室に着いた二人。

執務室には一式だけだけど立派な椅子と机があったが、ルイは立って二人を待っていた。

そしてルイの他にもう一人いる・・・


ピルクは軽く挨拶を言ってそそくさと出ようとした。

だが、ルイに止められる。


「どこに行くんですか?ピルクさん」


どこに行くも何も・・・この場にいるのはこの船のツートップ、ルイ様とトム大尉、そして初めての客人である真殿。少尉如きの自分がこの場にいるのはふさわしくないから出ようとしたんですけど・・・なんだか言葉に圧を感じる・・・


ピルクはそんなことを思いながら客人である真の一歩後ろで留まった。

真はルイの隣にいるトム大尉を見ていた。


トム大尉は地球人の姿ではなく宇宙人の本当の姿で堂々と立つ。地球人姿のルイが隣にいるためかアンバランスな構図に見えた。


ルイが少し前に出て真に話しかける。

「これから真さんには少し実験に付き合ってもらいます」

「実験?」

「はい。その実験というのは転移石が地球人に与える影響について、です」


真は無言でルイを見ている。


「・・・・あ、あなたにつけた転移石がどういった作用を起こすのか調べるため、もう少しの間、故郷に帰るのを先延ばしにすることを決めました。ご協力願えますでしょうか?」

ルイは真の視線に一旦顔を背けながら弱弱しく言う。


真は微妙な顔で尋ねる

「その実験はルイのためになるのか?」

「私たちのためになります」


今度は真の目をまっすぐ見て力強く答える

真は鼻でため息をついてから答えた

「わかった。その実験に協力する。・・・具体的に何をすればいい?」

「ああ、よかったです。その前にコチラの方を紹介したいのですがよろしいでしょうか?」


ルイは肩の力が抜けたように隣にいる人に視線を促す。真が視線を向けるのを確認してから人物紹介を始めた。


「此の方の名前はトム。階級は大尉です。この船の副官を任せています。彼は私の恩師の一人で小さいころからお世話になっているとても頼りがいのある方なんですよ」


トム大尉を紹介するルイはどこか活き活きしてるように見えた。真の心に何かが刺さる。


「ルイが言ってた通り俺の名前はトムだ。よろしくな真」


トム大尉がルイよりもさらに前に出て握手を求めてきた。男前な口調に堂々とした風格。自分に自信のある人間だ。


真はトム大尉の握手に応じた。だがその顔にはどこか不満が漏れ出していた。トム大尉は真の手を引っ張り耳元でささやく。


「もっと素直になろうぜ」


真は自然と握手に込める力が強くなりトム大尉を横目に睨んだ。だがこの行為は失敗した。目の前にルイがいたから・・・ルイの心配する顔が真の目に映りこむ。真はトム大尉の握手を振り払い、数歩トム大尉から離れた。


「真殿?」

ピルクが察した通り真とトム大尉の間には不穏な空気が流れていた。


沈黙を破るようにトム大尉が陽気に言う。

「悪い悪い。急に引き寄せたら誰だってびっくりするよな。悪気はなかったんだ。許してくれ」


気を使っているのか、建前なのか、本心なのか、余裕があるのか、分からない。

「別に・・・気にしてませんよ」

ぶっきらぼうに言う真は建前しか言えない。


「だから素直になればいいのに・・・」

トム大尉は誰にも聞こえないようにボソッと言った。

その後高らかに言う。


「どうやら俺は嫌われてしまったらしいな。俺がお前の実験の相手をしようと思っていたんだが・・・また後日改めて実験の概要を話す。林田真!今日はいろいろあって疲れただろう。これからゆっくり休むといい!」


真は無言だ。


「ピルク少尉。真を客間に案内してやってくれ!」

「ぁ、ハッ!」


急に自分に振られてピルクは一瞬ひるんだが使命感を持って敬礼した。ピルクは真を連れてこの執務室から「それでは失礼します」と言って退出した。真は出るときも無言だった


その後真は、ピルクに案内された客間にてこの長い一日を終えた


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二人の会話


「真さんの事、信用できませんか?トム大尉」


「いや・・・とりあえずは様子見ってところだな」


「・・・そうですか。真さんもあなたの事をあまりよく思ってないみたいで・・・残念です」


「心配しなくてもあれは俺の見た目どうこう云々じゃなく同族嫌悪だ」


「同族嫌悪?」


「あとは嫉妬かな?ルイがモテて先生はうれしいよ」


「なっ!?からかわないでください。私がその手の事・・・いえ、もういいです。それよりも例の案…どうしますか?」


「ああ、・・・転移石が地球人に与える影響について実験・・・という名目で真と俺のような擬態していない宇宙人が接触。その経過を見る、だったな」


「はい」


「まあそれに関しては当てができた。ピルクに任せよう」


「そ、そうですね。ピルク少尉に・・・」


「どうしたルイ?そういえば珍しい呼び方してたな。お前いつも少尉、中尉、大尉ってつけるのにさん付けなんて・・・」


「な、なんでもありません」


「そうか・・・そういえばもう一つの問題。お前たちを襲った敵。驚異的な身体能力を持ってたらしいな。しかも複数人」


「・・・はい」


「・・・考えられるか?」


「可能性で言ったらあり得ると思います。おそらく彼らは300年前私たちの実験の被害者、その子孫。それだけ経てば薄くなるはずなのに逆に濃くなってた。」


「実験に使ってた転移石は記述によると少尉レベルの大量生産品。それが大尉レベル・・・・か」


「地球人に転移石を埋めても私たちのように超能力は使えない。でも代わりに別の作用があった、・・・」


ここでルイは思い返す。真に言った言葉


・・・実験というのは転移石が地球人に与える影響について・・・


もうルイたちは知っていた

「身体能力の異常活性」


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