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テンとパート11

ワ二寺公園の近くに、ひと際でかい湖がある。その湖の水はユミ大尉の能力で一時、全部空っぽになっていたが、今は元に戻していた。


そして、その湖には巨大な円盤型の宇宙船が停泊ていた。

宇宙船の中では、テル大尉の部下の一人が点検作業の指揮にあたっている。


「・・・確認!!」

「1番以上無し」

「2番以上無し」

「3番以上無し」

「4番以上無し」

「  ;;  」

「  ;;  」

   ;;

   ;;

   ;;

   ;;

   ;;

   ;;

   ::

「・・・以上を持ちまして、水漏れ点検終わりました!!」

「よし!!楽にしろ!!」

「は!!!」


まるで、軍隊のようなハキハキとした点呼取りだった。

だが、楽にしろ!

と号令がかかると、ほんの数秒で気の緩んだ空気が流れだした。


「ふー。水漏れ被害がなかったのはよかった。みんな突貫工事の中よく頑張った。ありがとう」

指揮にあたっているテル大尉の部下にそう言われ、皆は肩の力を抜いた。


「ユミ大尉の水がいつ破裂しないか不安でしたからね。でもホント上手くいってよかったです。二時の方角の外殻なんて、どデカい穴が開いてましたもんね~」

「侵入者マジ勘弁してくれよー、だよなー」

「あんまし気の抜いたことを言うな。その侵入者のせいでカイ大尉は死んだんだぞ」

「あ、わりィ。ごめん」


その会話の中にテル大尉の部下が、ある情報を持ち掛けた。

「なあ、・・・・そのユミ大尉なんだが裏切ったらしい」


一同は目を丸くする。

「え、どうして!?」


「前にペペ中尉とトト中尉が無断で地球に降り立ったじゃないか。その件はどうも、ユミ大尉が指示したみたいなんだ」

「死者を悪く言うのあれだけど、たしか・・・ペペ中尉とトト中尉って【人】信者かもしれないって噂だったよね。じゃあ・・」

「ああ。ユミ大尉は【人】信者かもしれないって話だ。テル大尉がそう問い詰めた所、テル大尉とユミ大尉の間でひと悶着あったみたいだ」

「わ、そうなんだ。あのユミ大尉が【人】信者・・・ショックだな。厳しかったけど尊敬してた人だったのに。あの老人大尉ならともかく・・」

「おい!それ以上言うな。たしかにあの人は絶対【人】信者だけど、余計な事口走ったら消されるぞ」

「う、うん。ありがと」


ccccccc

ccccccc


船内の噂話を盗み聞きしながら、林田真はある部屋に入った。

その部屋はルイを閉じ込めている部屋だった。

「ルイ・・・」

「真さん・・・」

二人はお互い複雑な心境の中、名前を呼び合う。


「真さん。…私を外に出してくださ…

ピシャ!!

扉を勢いよく閉め、ルイの言葉を遮る。


言葉も返さず行動で示す真のやり方を見てルイは・・・心を痛めた。

ルイは自分の胸に手を当てて尋ねる。

「今日は…何しに来たんですか?」


ルイは真から視線をそらして壁を作っていた。

これを見て真は・・・


気持ちを押し殺して答えた。


「ユミ大尉が裏切った」

「あり得ません!!」

ルイは目を見開き真の言葉を即座に否定した。


「なぜユミ大尉が裏切らなければならないのですか!?教官は・・・」

「【人】信者かもしれない、と噂を流してるからだ」

「噂?・・・嘘の情報を流してるんですか?どうして・・・」

「俺の思惑とは別口で、テル大尉がそういった情報を広めている。何か心当たりはあるか?」


・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・


ルイは何か答えを持っている様子だったが、どうやらその答えを真に話す気はないようだ。

無言を貫いている。


「俺には何も話せないか?」

そう尋ねても、ルイはやはり無言を貫いていた。


「話したくないならいい。俺にも、ルイに話してない秘密がある」

真はふうーと息を吐いた後、自分の秘密を告白した。

「俺は、この地を作った神様の分身体だ」


地球人にこの言葉を言っても全く信じられないだろう。しかし宇宙人である彼女たちは違う。彼女たちは知っている。知的生命体が星に生まれるには、いくつもの奇跡がいる。つまり、あり得ない。


その地に神様が住み着かない限り・・・


「この地に神様がいることは…分かっています。しかし、あなたが…分身体??」


自分の星の歴史から、神様について少し知っていたルイだったが、分身体という単語は聞き慣れなかった。


「俺は人から生まれた子だが、生まれてすぐ天涯孤独になった。その俺を神様は拾い、俺に自分の力の一部を与えてくださった。何のためにそんなことをしたのかは定かではないが、俺には獣の力がある」


「獣の力・・・」

この言葉ですぐに思い浮かんだものは神獣様だった。

【人】に考える力を奪われ、人に飼われる事となった哀れでかわいそうな、私たちの星にいた神様。



「この獣の力は転移石に内包されているものよりも、ずっと大きい。多分大尉クラスの転移石、五人分はあるはずだ。それでも永遠に世界を相手にするには不安要素が残る」


真の言い分は傲慢さが滲み出ている。


「だから俺は、この地の神様の力を全部奪おうと思っている。俺がお前らを未来永劫守るために」


そして強欲だった。


ルイは背筋が凍る想いをした。

まるで真さんは、私たちの【罪】ともいえる、歴史を辿ろうとしているように感じた。


「・・・駄目です」

ルイはボソリと言う。


「【人】が神様をどうこうしようなんていけません。必ず悪い方向に行きます。私たちは歴史からそう学んでいるんです」

どうにかして引き止めなければ・・・いやな胸騒ぎがしてならなかった。


「だが、この話を聞いて、トムとテルは俺に協力してくれるみたいだぞ」

「トム大尉とテル大尉が・・・?」


ルイにとって最も信頼し、頼りにしてた二人だった。

その二人は当然、自分たちの祖先の過ちを知っている。

なのに、何故?


・・・・・・・・・

・・・・・・・・・


ルイの心はテンになるばかりだった。


「難しいことは分かってる。だが俺は必ずやり遂げてみせる」


そう言い残して真は、この部屋から出て行った。


ルイはもう悲しくて悲しくて・・・


泣きそうだった。


cccccccc

cccccccc


真がルイを閉じ込めてる部屋から出て少し歩いていくと、目の前にテル大尉がいた。

「顔…前のに戻したんだな」

真はあいさつ代わりに言ったつもりだが、テル大尉は返事をしない。無視している。


「・・・【人】信者ってなんだ?」

だが、この言葉には目元がピクリと動き反応した。

「…さあ?」

テル大尉の対応は冷たい。


「・・・変な噂を流してるみたいだが、大丈夫なのか?」

「地球人には関係ない」

「そうか。まあ、一つ情報をやっとくよ。ユミ大尉はどうやらエンカ大尉と接触しようとしてるみたいだから気をつけろ。エンカにはまだ大したことを教えていない。俺の正体も目的も・・」


「あなた、どうやってそんなこと・・・」

「邪魔な転移石を引き抜いたからな。獣の力でここら辺一帯の会話は分かる」


「・・・ふーん」


「・・・・・ユミ大尉はどうやらお前が【人】信者じゃないかと疑ってるみたいだ。気をつけろ」

「そんなに心配なら、あんたがどうにかすれば?どうせ居場所も把握してるんでしょ」

「悪いが俺は、別の敵を警戒しなくちゃならない。ユミ大尉はお前らで何とかなるだろ」


真の上から目線の態度にテル大尉はムカついた。

「あんたに【人】について教えてあげる。昔【人】は、神様を私利私欲に貪りつくした。今では罪の集大成として滅多に【人】なんて単語は使わない」


そして真の腹に指を立てて、脅すように言う。


「・・・・地球人、アンタが神様の力をすべて手に入れたら私が飼い殺してあげるから、覚悟してなさい」


そう言い放つと、テル大尉は踵を返して真から離れて言った。


「トム大尉とテル大尉は俺と協力関係‥か。・・・ルイに嘘を言ってしまったかもな」

あんなことを言われた後でも、真の決心は揺らがない。

俺には罪がある。どんな贖罪も罰も受ける。


真には覚悟があった。そして・・・


「どこに潜んでいる・・・勢」

真は家族をこの手にかける覚悟もあった。


ccccccccc

ccccccccc


「気をつけろ!気をつけろ!うっせーんだよ!!誰のせいでこうなってると思ってんだ!!ユミ大尉なんてとっくに追い返した!っつーの!!」


テル大尉は管制室に入ると、外聞を気にせず壁に当たっている。


この部屋にいるテル大尉の部下が心配そうに声をかけた。

「あの…大丈夫ですか。テル大尉」


そう声をかけられて少し冷静になるテル大尉。


「ごめんなさい。ちょっとムカムカしてて・・・周りの様子はどう?」

「はい。今のところ異常ありません。この湖の底から日本近海までレーダーで映し出しています」


そう報告する傍らで、別の部下が不安要素を提示した。


「前日まで、ユミ大尉はこの湖の水を操っていました。何か仕掛けてる可能性はないでしょうか?」


「湖の水は、補修工事と点検が終わるまでの間だけ。私との問題が起こったのはその後だから仕掛けはないと思いたいけど・・・マーキングくらいはしてる可能性はあるでしょうね。湖に何か不審なことが起こったら小さなことでも報告しなさい」


「あ、それでしたらちょっと気になることが・・・」


「何?」


「今さっきエンカ大尉がその湖に落ちました」


「は?なんで?」


「こちらのレーダーでは広範囲を見ているため確かなことは言えませんが、足を滑らせたのではないかと。・・・・恐らくエンカ大尉は、ご自身の体熱能力を抑えるために湖の水で体を冷やそうとした結果、誤って湖に落ちたと推測いたします。今はユミ大尉がいませんので」


「はあ・・・まだ転移石をうまく扱えないの。エンカ大尉は・・・」

そうエンカ大尉の残念さにため息が出てしまうが、すぐに考えが切り替わる。


ユミ大尉はどうやらエンカ大尉と接触しようとしてるみたいだから気をつけろ。


「・・・ッ」

地球人の忠告を思い出し、思わず舌打ちをしてしまうテル大尉。

「エンカ大尉の様子と、落ちた時の状況…目撃した人を探してきなさい。不審な点があるかもしれない」


「は!かしこまりました」

テル大尉の部下の一人が管制室を後にした。


cccccccc

cccccccc


「エンカ殿が落ちた時の状況?はい!バッチシと私は見ました。あれは確実に滑ってこけてましたね。それはもう恥ずかしいくらいに・・・」

ピルク少尉は、はっきりと答える


cccccccc

cccccccc


優香とユミ大尉は遠くから望遠鏡で宇宙船を監視しながら言う。


「あの人、本当に残念ですね。ユミさんの能力で湖に引きずり込む予定だったのに自分から落ちていきましたよ」

「そうね。・・・・・でも結果オーライ!…予定通りテル大尉が【人】信者かもしれないってことを伝えられたわ!・・・多分」

「向こうの声とか反応とか分からないんですか?」

「私が直接あの湖に触れていれば色々と分かることはあるんだけど・・・こんな離れた所だと、こっちの言葉を、送る事しかできないわね」


そう言いながらユミ大尉は望遠鏡で宇宙船を監視している。

そんなユミ大尉に悪寒が走った。


宇宙船から出てきた真君がこっちを見てる??


「ちょ!?ユミさん??」

ユミ大尉は優香の袖を掴み、自分と優香を水の繭にくるませる。そしてその繭ごと、この場を離れることにした。


「侮ってた。あの男の力を・・・」

「あの男って?」

「真君よ。せいぜい宇宙船の中くらいまでしか音は聞こえないと思ってたけど、まさかこの距離までわかるなんて・・・今は繭にくるんで会話の音を外に出さないようにしてるけど、さっきの会話を聞かれた!」

「それ・・・まずくないですか。エンカ大尉が」

「ええ」

「でもその真って人、ルーちゃんの味方なんですよね。自衛隊の人を殺したってムーちゃんから聞いて過激な人だと思いますけど・・・ルーちゃんの味方なんですよね!?」


優香は同じことを二度いう。


「・・・そう思いたいわ」

希望的観測をしたいところではあるが、こっちに向けるあの目。


あの地球人には何か裏がある。


ユミ大尉はそう思わずにはいられなかった。


ccccccccc

ccccccccc


真は宇宙船の外に出た後、宇宙船の真上にジャンプした。

目的はそこにいる人物に会うため。


「よう、真。調子はどうだ?」

宇宙船の真上にいるのはトム大尉。

彼は小型艇を使い、宇宙船の真上に登っていた。理由は敵が来た場合、迎撃するため。


「あまり良くない。ユミ大尉とエンカには、俺の正体と・・・神様と敵対して、その力を奪おうとしている事を話すのが難しくなった。・・・そして、その話をしたらルイにものすごく反対された」

「はっは。素直でよろしい。・・・でもまあ、そりゃそうだよな。また神を貶めようとしてるんだから」

「あと、テルの機嫌が悪い」

「アイツの機嫌が?あいつは乗り気だと思っていたんだが・・・」

「あいつが【人】信者だからか?」

「なんだ。【人】信者について知ってたのか。でも、あまりその単語は口にしないほうがいいから気をつけろ」

「・・・テルは俺の事が憎いみたいだ。トム・・・お前も俺を恨んでるか?」


辛気臭く言う真。だがトム大尉は歯牙にもかけない口調で言った。


「いいや、感謝してる。正直、地球の調査は大失敗だった。例え故郷に帰れたとしても、ルイの居場所がなくなるほどの大失敗。・・・だからこの地で仲間と暮らしていくのも悪くねえよ」


トム大尉は笑ってそう言ってくれた。そしてこう言う。

「・・・心配すんな。お前がルイのことを第一に考えてくれるのなら、俺はお前の味方だ」


「ああ、わかった。必ず・・・何を犠牲にしようとも」

「ああ、何を犠牲にしようともだ」


二人がそう誓った瞬間、ぽつぽつと雨が降ってくる。その雨粒はだんだん大きくなり、すぐに大雨へと変わってしまった


痛いくらいの大粒の雨が降り注ぐ。

まるで、二人のこの誓いを邪魔するかのような大雨。

しかし二人は全く揺るがない。



とても歪な誓いを二人は胸に宿す


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