イチとパート7
髪飾りの女性やミミさんが育った場所、地下施設。この場所に機体を収納した後、髪飾りの女性たちは地上に出て、宇宙人と戦うつもりだった。しかし同郷の人たちに止められる。
「地上の事はもう放っておけ」
その言葉に噛みついたのは郷間だった。
「なぜだ?俺たちは地上の人々を守るために育てられたんじゃないのか?」
郷間は【俺たち】という単語を強調している。
「ああ。私たちは文献と言い伝えの教えに従って、今まで300年間ずっと地下に住んでた。すべては宇宙人と戦うための戦士を作るために」
「だったら・・・」
「地上は守るべき所ではなかった。あそこは宇宙人同様、敵だ」
そう言われ郷間は黙り込む。
髪飾りの女性とミミさんはもう地上にそこまで期待していないためか、聞き流していた。それよりも二人が気にしていたのは・・・
髪飾りの女性が尋ねる。
「長老は?・・・いる?」
明確な根拠はない。それでも何か・・・空気、雰囲気、そんな曖昧なイヤな気配を感じ、この質問が零れ出た。
しばらく沈黙が流れた後、長老の付き添い人だった国松 尾張が前に出る。
尾張は名前から年配の者を想像してしまうが五歳児である。両手で刀を抱きかかえている所が愛くるしいが、その子の表情はとても暗かった。
「長老は・・・・死にました」
か細い声で五歳児は言う。
髪飾りの女性は気落ちしながらも優しく「そう」と言い、ミミさんは目を伏せた。地下出身者にとって長老はとても尊い・・・
「そんな事どうでもいいだろ!!」
亡くなった人を慈しむ空気の中、郷間が怒鳴った。郷間は自分の考えをいう。
「俺たちは宇宙人を殺すために、力をずっと地下に閉じこめてきた!300年間ずっと。そう文献に書いてあった。そして今!宇宙人が地上を攻めてる。今、力を受け継いでいる俺たちが動かないでどうするんだよ。ご先祖様たちはこの時のために・・・・」
そう説法を解こうとしたが、郷間の話を受け止めようとしいる者が誰もいない事を感じる。郷間は落胆した後、濁った声でこう言った。
「力を遺伝できなかった老人が一人死んだからって止まんなよ・・・」
「にい・・・ちゃん。」
そう呼ばれ妹の方を振り向く。妹の切断された腕や足の機械の断面が郷間の目に映る。
俺が親の力を受け継いだから、妹は力を受け継げなかった。。代わりに妹は地上人に自分の体を売って機械の力を得た。でも・・・その代償は半分死んでるようなものだった。
郷間は自分が妹を傷つけてしまったと感じ、ノロノロとした重い足取りで地上に逃げて行った。
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「宇宙人が偽物?」
「うん。そう言ってたよ。このテレビの子を信じちゃダメって」
坂倉はベルさんにそう言われ困惑する。
偽物?いや、違う。こいつは確かに宇宙人だ。地下出身者のあいつ等と、この子とその仲間たちが戦っている姿を俺は見てきた。その過程で宇宙人の本当の姿であろう者たちも見てきた。偽物っていうのは、つまり・・・
「この地球人の姿が偽物って意味か?」
擬態している、それなら偽物というのも納得だ。しかしそういう意味ではなかった。
「ううん。そうじゃなくて【この子はルイ本人じゃなくて誰か別の者がなりすましている】って言ってた」
別の者?ルイ?
坂倉はそのセリフが妙に引っかかった。まるで宇宙人・・・いやテレビに映ってるこの女の子本人を知ってるみたいだ。
坂倉はベルさんに聞いてみる。
「中学の頃の友達って言ってましたけど、どこの誰なんですか?そんなことを言ったのは?」
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坂倉が目を覚ました時とほぼ同時刻、郷間は日米共同基地に着いていた。ここまで来るのに数時間もかかっている。理由は行く当てがなかったから。
フラフラ歩いた末に行きついた場所がここ。特に目的があったわけではなかったが、地下は居心地が悪い。宇宙人たちの所へ単身行ってもやられるだけ。そして郷間が地上で知ってる場所はここだけだった。
そんな消去法に近い選択でここに来たが少しくらいの希望はあった。地上の奴らは地下出身者に冷たいが宇宙人が攻め込んできたことで手を組めれるかもしれない。
そんな妹が改造される前の初心に戻って顔を上げたが愕然とする。
基地が壊されていた。
少しずつ歩きながら、その有り様を漠然と見る。
建物は崩壊し、地面には亀裂。遺体こそなかったが血らしき赤黒い模様が各所に散乱していた。
「何だよ・・・これ・・・・」
ここには毎日毎日訓練された屈強な兵士が何十人もいたはずだ。俺たちを殺せるほどの武器もあった。クソ教授のロボットも。
それなのに・・・・そうだ。桂馬は?地球に残った桂馬はここにいた可能性は高かったはず。桂馬もやられたのか?
郷間はこの惨状を見て絶望する。
地球人と宇宙人とでは力の差がありすぎる。
郷間は一番宇宙人を嫌悪していた。そして恐れてもいた。
宇宙船の中の攻防で、その思いはより顕著になった。
郷間は地上人も怖かった。身体能力こそ足元にも及ばないが、地上人が作り出した武器、兵器を初めて見た時は戦慄した。
だから俺は盲目的に【宇宙人から地上人を守る】と書かれていた文献を信じたのかもしれない。
ご先祖様がしたことが無意味だと思いたくなかった。
そんな風に歩いていると足元にコツンと何かが当たる音がした。
「何だコレ?」
郷間が拾ったものは笛だった。
「どっかで・・・見たような」
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ここに地下出身者でも自衛隊でもない者が宇宙人に立ち向かおうとしていた。
その者は一般人。
元ルイのクラスメイトだった者である。
そして、その元ルイのクラスメイトには宇宙人の相棒ができていた。
宇宙人の名前はムーン。透明化で日米共同基地で真の戦いの一部始終を見ており、さらに宇宙船の内情も知っていた。ムーンは12歳の子供ながら、このままだといけないと思い立ち上がり宣言する。
「テレビに映ってる人はルイ様ではありません!」
笛もなく自分の声で伝える。




