テンとパート8
トム大尉とテル大尉は、管制室で日米共同基地を監視していた。
「このゴミ屑ども・・・殺す!」
「テル大尉、ルイが命令したことを思い出せ」
テル大尉はルイが言ったことを復唱する
「この船が攻撃されない限り絶対にこちらから攻撃してはいけません。・・・この意味をくみ取ってくれることを切に願います」
「そうだ。俺たちはルイがどのような目にあろうとも手を出してはいけない。それがルイの望みだ」
テル大尉は歯を食いしばり過ぎて歯茎から血が出ていた。
トム大尉の握りコブシからも血がにじみ出ていた。
管制室にいる者たちは皆、この映像を見て心中穏やかではいられなかった。
そして、ここにもう一人。管制室の扉の隙間からコッソリその映像を見ている者がいた。
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あれから数時間がたった。
ルイはどうしてるだろうか・・・
無事なのだろうか・・・
ルイは・・・
・・・・・・・
しかし結局のところ、いくら思っていようが水の牢獄に閉じ込められている真には何もできることはなかった。
真の意気消沈している姿を見てユミ大尉は何も思わないわけではない。だが、どうしてもルイの邪魔だけはしたくなかった。
ここで真君を逃がして地球人との仲が悪くなる訳にはいかない。今でさえ地球人と仲良く出来る可能性が限りなく低いのに。……その可能性をゼロにするわけにはいかない。ルイちゃんは覚悟を決めて行った。
待とう。私たちの総司令を・・・。
そんな事をユミ大尉は思っていた。
そんな中、この中央広場に入ってくる者が現れた。
現れたのはキュア中尉。
キュアはユミ大尉に近づいて話しかける。
「あの・・・治療」
ああ、なるほど・・・とユミ大尉は心の中で納得する。
「待って。今は真君の治療は後回しにして。この檻を解いた途端きっとルイちゃんの元へ行くから」
ユミ大尉は若干呆れ気味に言う。今、治療できないことは明白なのに何で・・・と。
「で、でも・・・怪我、ひどい」
意外かも。キュアが引き下がらないなんて。
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ユミ大尉はケガしてる真の片腕を見る。
「確かに、ひどいやられようだけど・・・それでも真君を自由にさせるわけにはいかないわ。血の流出を心配してるのかもしれないけど大丈夫。逆に圧力かけて血を止めてるくらいよ」
「だ、ダメ」
まだ食い下がる。
「やりすぎ・・・長時間・・・壊死」
ンー。真君は普通の人間よりもかなり頑丈だから大丈夫な気もするけど・・・
「キュア、やっぱり真君を自由にさせるわけにはいかない。諦めて」
ユミ大尉は強く言う。
キュアは落ち込むようにして顔を伏せた。
「な、なら。せめて・・・話、させて」
キュアが震える口調で私に頼み込む。
子供のように袖口をつまんで頼む姿は、少し痛々しい気分にさせられた。
「ちょっとだけよ」
ユミ大尉は、ほんの少し溜息をついてキュアが真に近づくことを許した。
キュアは水の檻に触れて話しかける。ユミ大尉はその声を届くように操作した。
「わ、わたし・・・じぶんのこと、きらい」
いきなり重たい話から始まった!?。ホントにどうしたのキュア・・・
「性格が嫌い。暗くて、ぼそぼそ声で・・・言いたい事言えない。一人は好き。こう思うことも嫌い。周りが楽しそうにしゃべってると嫌な気持ちになる。ホント・・自分が嫌い。・・・・・・・・わたしね・・・名前を呼ぶのが怖いんだ。もし無視されたらどうしよう、って思っちゃう」
ここまでキュアがしゃべり終わるとユミ大尉は自分の体の異変に気付く。
目まい?
ユミ大尉は急な眠気とともに視界がぼやけ始めた。
「ごめんなさい教官。さっき袖口をつまんだ時に能力を使って手首から麻酔を飲ませたの」
キュアがこっちを見てそう言う。どうして・・?
ユミ大尉は片膝をつく。その後も目まいは続き、耐えられなくなってうつぶせに倒れてしまった。
どうにかして意識は残さないといけない。そうしないと水の檻を維持できなくなる。これは湖の水、全部使ってる。意識を失ったらこの宇宙船は大参事に・・・
ここまで考えが及びもう一度キュアを見る。
まさか・・・
「意識をなくすほど・・注入してない、。でも水の操作は疎か・・。これだけ歪んでれば出てこれる・・・と思う」
そんな微調整・・やっぱしこの子、大尉になれる。
「止めなさい、キュア。中央広場の様子は・・管制室にいる人たちが監視して・・いる。すぐに、トム大尉と、テル大尉が来るわ」
ユミ大尉は何とか口を開くが、キュアはもうこっちを向いていなかった。不安定に揺れ動いている水の檻に触れながら、独り言を言っている。
独り言?違う。話しかけてる。水の中にいる男に…
「私、自分のこと嫌いだからわかるんだ。ルイ様は今、自分の事が嫌い・・・そう思ってる。でもルイ様はすごいんだよ。訓練生時代からの私の憧れの人。
おねがい、真さん・・・ルイ様を助けて」
「ああ、任せてくれ」
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水の檻から這出た真はキュアに安心感を与えるほどに堂々としていた。ルイを助けることに迷いはなさそうだ。
さらには真の背中を押すように、この中央広場の天井が扇状に開き、艦内放送が流れ出た。
「真殿ー!!ルイ様を助けて下さいませー!!」
「この声・・・ピルク!?」
艦内放送から何故かピルクの声が・・・何やらピルクがいる場所が騒がしいような気がするが・・・
「ルイ様は今、日米共同基地という所で地球人から不当な扱いを受けております。アイツ等トト中尉とペペ中尉の遺体の一部を解体して標本のようにしてました。それをあろうことか、・・・あろうことか、それをルイ様に見せつけました!外道です。鬼畜の所業であります。さらに今はルイ様を牢屋に閉じ込めており・・ぁ、ちょっと・・・まだしゃべりたいことが・・・とにかく、どうかルイ様をお願いしますぞ、真殿ー!!」
この声は中央広場だけでなく宇宙船の中、全体に流れ出ていた。
「あのバカ、せっかくルイちゃんが守ってきた地球人のモラルを・・・」
ユミ大尉がうつぶせのまま何とか口を開く。
まだ向こうから歩み寄ってくれれば地球人と仲良くなる可能性はあった。でもこれで完全に地球人と仲良くなることは潰えた。
コレが吉とでるか、凶と出るか、
分からない。
しかし、真がこれからやることは変わらない
真は一足飛びで開きかけの天井に到達するとその天井を蹴り日米共同基地の方角・・・ルイの元へ向かって行った。
ユミ大尉:あのソロソロ麻酔抜いてくれない?
キュア:教官なら・・・あと、五分
キュア中尉は意外とドSだった




