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宇宙船の中の攻防9

髪飾りの女性は目の前の男を殺してから、仲間たちの元へ行くつもりだった。


しかし、この男はまな板の上の魚みたく簡単には切らせてくれない。軽い手傷を負わせることはできるがバッサリとは切らしてくれない。身体能力は調子がいい今の私と互角。


刀があるおかげで攻撃力、リーチの長さで優ってはいたが、そう簡単には殺せないと悟った髪飾りの女性は真に背を向けて走り出した。


仲間がピンチと聞いていた髪飾りの女性は長期戦を望んでいなかった。


真は髪飾りの女性の背を追う。しかし無理して追いついて攻撃をするつもりはなかった。

真にとっても、この先に行かなければならない用事ができたからだ。


ccccccc

ccccccc


「真殿!!」

髪飾りの女性の後ろにいる真を見てピルク少尉は助けを求めるように叫んだ。


「ピルク・・・」

ルイの言ってた通りピルクが捕まっている。


一方髪飾りの女性は不思議に思っていた。

ピンチと聞いていた仲間が《弟》を連れ戻してここにいる。

髪飾りの女性は義眼を引っこ抜いたため勢とのコンタクトが取れていなかった。


その差が真と髪飾りの女性の走る速度に反映された。真は速度を上げて髪飾りの女性を追い越し、ピルクの元へ向かう。


幸子が前に出て真の迎撃を試みた。その間に郷間は坂倉を手早く下ろして・・・


ドガ!


手早く下ろして妹の加勢に入ろうと思っていた郷間だったが幸子が真に一蹴されてしまった。

前やり合った時は実力は近かったはず・・・片足、片腕がなかったためか?

そう思っている隙に真は郷間との距離をゼロにした。


「ゴフっ」

速・・・すぎる

みぞを強打したことにより郷間は意識を朦朧とさせてしまう。

「まこ・・と・・・」

坂倉は目の前まで来た真を見て名前を呼ぶ。しかし真は坂倉に一瞥もせず、ピルクを捕らえているミミさんに向かって行った。


ガキイイ!

「くっ」

真の蹴りをミミさんは何とか刀で防ぐが、その一撃で刀を手放してしまい、体勢も崩される。

このままでは幸子、郷間に続いてミミさんまで真一人にやられてしまいそうだった。


しかし髪飾りの女性が横槍をいれ、真の腕をバッサリと切る。女性の刀に血がこびりつき、真の腕は血が通ってないかのようにダランと垂れ下がることになった。


「真殿!」

「大丈夫だ。ピルク」

真は切られながらもミミさんからピルクを救出していた。


真はピルクを片手で抱えながらバックして敵との距離を十分に取った。その後に自分の腕のことなど気にせずピルクに質問した。

「どうしてカバーを付けてたんだ」

「だってこれ以上ルイ様に失礼なことを言ったら・・・」


ピルクはどうやら前のセフレ発言を気にしているようだ。

真はそんなくだらないことで、

と思ったが無事だったから良しとしよう。


「真」


不意に名前を言われて真は前を向く。

呼んだのは機体の入り口から身を乗り出している林田勢だった。


「勢・・・お前までここに来ていたのか」


真のセリフに勢は何も答えない。代わりに勢は《弟》をチラリと見る。その後にこう言った。

「皆さん、目的を達成できたのなら乗ってください。ここから撤退します」

勢の言葉を受け侵入者は動けない者、動きが遅いものを抱え手早く撤退し始めた。みんなが乗った後、勢は言った。


「それでは真・・・・・・・さよなら」


勢がバタンと扉を閉める。

真との縁を切るみたいに・・・


勢は機体にエンジンをかけ、電力をあげる。ここから脱出する準備をしていた。そんな勢を見て坂倉は、こんな質問を投げかけた。

「いいのか。このまま出て。真は家族だったんじゃないのか?」


「真はもう家族ではなくなったので・・・」


坂倉には勢の真意は分からない。それでも坂倉は深く追求しなかった。


間近に来て名前を呼んでも真は一瞥さえしなかった。

その事が気落ちしていた坂倉の心にとどめを刺していた。

坂倉は短く


「そっか」


とこぼした。


ccccc

ccccc


坂倉たちが乗っている機体は無情にも宇宙船に穴を開けて飛び立ってしまった。

気圧が高いところから低いほうへ吸い込まれていく。

その吸い込みに、真はピルクを抱え何とか踏みとどまろうとしていた。

しかし、片腕はピルク、もう片腕は動くかどうかもわからない大怪我。両足で耐えれるほど宇宙の吸引力は甘くはない。

数秒後には、真とピルクは宇宙の彼方へ飛ばされてしまうのは目に見えていた。


だからこそ、そうならないようにするためにルイは無理をする!

「転移!!」

・・・ピシ・・




なにかが壊れる音がした。



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