テンとパート1
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17歳の少女、ルイ・シェインミードは、とある一室にて男性が目を覚ますのを待っていた。その男性というのは地球に降り立った瞬間に、告白してきた者である。
ルイはベットに眠る名前も知らないこの人のそばにイスを構え、座っていた。
「もうそろそろかな」
ルイがそう言って間もなくすると、
林田 真【はやしだ まこと】という男性は目を覚ました。
真はゆっくりと上体を起こし、辺りを見渡した後、一呼吸おいてから話しかけた。
「ここは?」
「おはようございます。私の名前はルイ・シェインミード。ここは宇宙船の中の一室です」
「宇宙船?」
まだ意識がはっきりしていないのか。宇宙船という場所なのに反応が薄い。そう思ったルイは、さらにこの情報を付け加えた。
「はい。宇宙船です。そして私はその・・・あなた方にとっての宇宙人…という存在になります」
ルイの説明に男は・・・
「そうか」
と淡泊に返した。
ム、まだ寝ぼけているのでしょうか?そう不満を心の中で軽く漏らすルイ。
しかし、男は以外にもルイの話をちゃんと聞いていた。
「宇宙人と地球人は結婚できるのか?」
ルイはその問いに思わず顔を赤くした。
対して真という男はまっすぐにルイを見つめ、堂々としている。
虚を突かれてしまったルイは、なんとなく負けた気分になった。だからなのか少し見栄を張るようにこう言ってしまった。
「わ、私のこの姿は、地球人の姿に擬態しているだけです。本当の私はとっても醜いんですよ。エイリアンです!」
言ってしまって思う。これは見栄ではなく自虐だ。
しかし、間違ってはいないと暗く静かに思うルイ。
そんなルイに真は「そうか」と短く言って返した。
これまた淡泊な返し。
そして沈黙が流れる。
はぁ!?その返し方はひどくないですか!!
と言いたいところを喉の奥に押し込めて、ルイは冷静に考える。
〰️いや、いけない。いけない。ここで怒ってはいけません。確かにこの地球の方はとっても失礼な気はしますが、私が言ったことをただ頷いただけじゃないですか。
そもそも別に此の方の好意が大暴落したところで・・・
・・・・・・・・
「あ、あなたのお名前を聞かせてもらってもいいですか?」
そう言いながらルイの口元はどこかヒクついていた。
「俺の名前は林田真だ。よろしくルイ」
対する真は、さっきまでとは一転して優しそうな顔を作って自己紹介した。
ん?好意的な対応・・・この人との距離感がつかめません。
ルイがそう思っていると、目の前のこの人は優しそうな表情のまま話しかけてくる。
「なんで俺はここに連れてこられたんだ?」
当人にとっては当然の疑問であり、問題。しかしその問いには焦りも緊張も感じられなかった。
少々の疑問を感じながらもルイは真に説明をする。
「私たち・・・宇宙人はあなた方地球人に強い興味を持っています。この広い宇宙において私たちと同等レベルの知能指数を持っているのは地球の【人】だけです。そのため、私たちが現地に派遣され調査をしています。その調査内容の中には地球の人との接触も含まれているんです。この宇宙船の中まで連れてくるのは、あまり例はありませんが・・・」
「そうなのか?」
「はい。できれば私たちは、地球の方と友好的な関係を築いていきたいと計画していたのですが・・・その・・・あまり上手くいってないんです。・・・・・主に私たちの外見が原因です」
最初は明るく言っていたが、だんだんとトーンが下がっていく。それでもルイは語った。なぜならルイは説明をしなければならない責任があったから。その立場にあった。
「外見が一番のネックになるのは初めから分かっていましたので、私たちは地球人の姿に擬態しました。そして現地にて数年に及ぶ接触を続けていきました。その中の何人かに私の本当の姿を見せたことがあるのですが・・・・あまり口には出したくありませんね。いい関係だったんですけど。地球の方の姿なら・・」
寂しげに言うルイ。
「やはり種族の壁は高いのを痛感しました。外見っていうのはとても大事なものですね」
そう最後は明るく振る舞ったルイは後悔した。真が自分の手を握りこう言ってきたからだ。
「俺に君の本当の姿を見せてくれ」
「や、やめておいたほうがいいです。幻滅します」
慌てて言うルイに真はまっすぐ答える。
「それでも俺に見せてくれ。そうしないと先に進めないんだ」
ルイは迷った。あまりにも迷いなくこの人は言ってくるから。
それでもやっぱり自分の本当の姿を見せた時のあの顔を思い出しルイは力なく言う
「ごめんなさい」
真はルイの謝罪を聞きうつむく。
しかしまだルイの手を握ったままだった。真は顔を上げ何かを告白しようとしたとき、ルイの後方にある扉が勢いよく開かれた。
「ルイ様!」
掛け声とともに現れたのは中学生くらいの背丈の少女だった。その少女は真とルイが手をつないでいるのを見て怪訝な表情を浮かべる。
「おい、地球人。汚い手でルイ様に障るな。細切れにするぞ」
可愛いらしい少女だったが、真に対して明らかに敵意を向けていた。
その少女の見た目は地球人である。たが、セリフの内容は間違いなく宇宙人側だった。
少女は今にも真に噛みつきそうだったがルイが止める。
「テル大尉、どうかしましたか?」
テル大尉と呼ばれた少女はさっきまでとは別人のように背筋を伸ばして答えた。
「はっ!ルイ様。ペペ中尉とトト中尉が発見されました」
その報告を受けてルイは安堵した声で聞き返す
「そうですか。よかったです。発見された場所はどこですか?」
「地球であります!」
「・・・やはり地球でしたか。小型艇がなくなっていたため、そうではないかと思っていましたが・・・。詳しい位置を教えてください。すぐに飛びます。」
ルイはそういったがテル大尉は固まったまま何も答えない。
「テル大尉?」
テル大尉は言いにくそうにしながらも口を開いた
「ペペ中尉とトト中尉は・・・死体になって発見されました」
ルイは思ってもいなかった返答に体が固まってしまう。
そして、その後ろにいた真は口を閉じ、密かに歯ぎしりした。