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宇宙船の中の攻防4

トム大尉はこの船の副官でルイの恩師。

そしてルイが頼りにしている男でもあった。


・・・正直言って真はトム大尉が嫌いだった。


cccccccc

cccccccc


トム大尉は堂々と現れた。その姿を見て郷間が叫んだ。


「宇宙人!!殺す!!!」


この叫びにはどす黒い殺意が込められていた。

トム大尉の姿はユミ大尉たちと違って宇宙人本来の姿で現れている。

宇宙人嫌いの郷間は目が血走りトム大尉に飛び掛かった。


ジュア


首を切り飛ばすつもりで振りぬいた刀は、トム大尉に触れた瞬間その部分が蒸発した。

郷間は信じられなくて半分ほどの刀身になった自分の刀と無傷のトム大尉を交互に見る。

郷間は明らかに動揺していた。そんな郷間に追い打ちがかかる。


「いきなり噛みついてくるなよ。自己紹介くらいさせてくれ」

余裕を見せながらトム大尉は郷間を見下ろす。


実際の身長は郷間のほうが10センチも高いはずなのに見下ろされたと感じた郷間は、冷や汗がドバっと出り、一足飛びでミミさんたちよりもさらに後ろまで後退した。


「ハッ・・ハッ・・」

郷間の不規則な呼吸はトム大尉に対する恐れを物語っていた。


「ユミ大尉、皆を連れて逃げな」

トム大尉の言葉にユミ大尉は安心しきった顔になった。軽く返事をした後、水を操り、怪我をしているエンカ大尉、サンとムーン、それからキュアも水の上に乗せていく。あと残っているのは……


「真君」

「いや、俺はいいです」

「そうね。真君なら自分で走った方が・・・」

「いえ、俺の事はいいので先に行っててください」

「そ、そう」

「はい」


ユミ大尉はエンカ大尉を早く安全な場所で治療してあげたかったため、深く追求せず皆を連れてその場から離れて行った。


ミミさんたちは、その様子を黙って見ていることしかできなかった。それほどまでにトム大尉を警戒する。


そんな中、真はトム大尉に言った。

「・・・あなた一人で彼等を止められるんですか?」

真はトム大尉の力を疑うように聞いている。


「アイツ等は速いって言いたいんだろ。まあ俺の足の速さは並だからな。逃げられたら追いつけねえだろうな」

「だったら俺もここに残ります。あなた一人に任せて、アイツらを取り逃がしたら、ここの乗組員が危険にさらされます」

「心配しなくても非戦闘員は全員中央広場にいる。アイツ等には手出しできねえよ。もし、この船のみんなのことを心配してくれるならユミ大尉たちについて行ってくれ。その方が俺にとっても助かる」

「あまり俺の事、舐めないで・・・」

「足手まとい、って言いたいわけじゃない。俺の能力は殺傷能力が高い。もし俺の攻撃が当たったらお前でも大怪我してしまう・・・・・・・ていう理由と、もう一つある」


真の顔を見て、大怪我するという理由では引いてくれないと判断したトム大尉は、この情報も付け加えた。

「俺の能力でアイツ等を逃がさない場合、グロテスクなモノをお前は見ることになる。……ルイはそれが嫌なんだよ」


真はルイという名前が出て言葉が出て来なくなった。


「ルイは今でもこの状況を見てる。戦いながらな。少しでもルイの負担を軽くしてやれ」

実際のところ、ルイはまだ待っているだけの状態だが、

ルイも戦っている、と伝えたほうがより緊迫感が出ると思いこう言った。嘘も方便である。実際この嘘は真に効果覿面だった。


「・・・わかった」

真は聞こえないようにボソッと言った後、体を反転しユミ大尉たちの跡を追った。


トム大尉は真の足音が遠ざかっていくのを確認してから敵にこの言葉を送った

「さて、・・・それじゃ侵入者にちょいと警告でもしとこうか。その場から一歩でも動いたら片足を吹き飛ばす」


ミミさんたちはより一層身構えた。

真とトム大尉の険悪な会話はミミさんたちにも聞こえていた。だからこそ分かる。

この警告がハッタリではなく実際にできるということが・・・

しかしミミさんたちは敵の脅しに屈するわけにはいかない。リスクを取ってでもこの場から逃げなければならなかった。でないとここまで来た意味がない。


ミミさんは相手に聞こえないように小声で話す。

「俺がアイツの気を引く。その間にお前らは坂倉を抱えて逃げろ」

「・・・うん」

「・・わかった」

二人は返事を返した。余計な言葉は話さない。それがミミさんに対して信頼の証だった。


コク、コク、コク、

時が過ぎていく。


ミミさんは相手を凝視して隙を窺う。相手がどんな攻撃をしてくるのか分からないが、おそらく遠距離攻撃ができるものだと推測していた。足は並だと言っていた。あれが真実なら一度逃げ切れば追いつかれることはないはず。


・・・少なくとも俺以外は逃がす!

そのつもりで動こうとした時、トム大尉が人差し指を向けた。


その瞬間


幸子の右足が宙を舞った


ccccccccc

ccccccccc


髪飾りの女性は二番外周通路の隔壁の前にいた

「出て来いやー!!」

叫びながら隔壁を攻撃する。しかし、この隔壁は一番外周通路の隔壁と違って頑丈だ。壊れない。

「アホ毛ー!!」

それでも髪飾りの女性は叫びながらずっと攻撃の手を休めなかった。いつかは壊せると思っていたからだ。


「ハア」

髪飾りの女性の無駄な行動に一人の男がため息をつく


壊すことに成功すればすごい事だが、今のままだと壊せる気配はない。

髪飾りの女性の様子を見ていた者は行動に出た。


「ツッ」

髪飾りの女は義眼にされた眼にチクリッとした痛みが出て動きを止めた。そして義眼から音声が流れてくる。


「何やってるんですか。貴方は?」

この声の主は林田勢だ。

勢は乗って来た機体に留まり、髪飾りの女性やミミさんたちの動きを義眼を通してずっと観察していた。


「何であんたの声が聞こえるのよ。これはあの糞教授がいつも使ってたやつじゃない」

「僕は教授の助手ですので。義眼を通して通信できることは知っています。ちなみにここに来てからずっと貴方たちの事をモニタリングしていましたが・・・貴方は何をやってるんですか?」

再度問われる。


「この隔壁壊す。絶対この先アホ毛いる」

勢はまた、ため息をつく

「ここに来た目的はなんですか?」

「アホ毛殺す」

「・・・・弟を取り返しに来たんですよね。教授のお使いはついでのハズです。貴方はかく乱のために好きにさせていましたが、遊んでほしいわけではないんですけども・・・」

「どういうこと?」

「ミミさんたちにはもう弟の位置を教えているのでそっちに向かってもらってたんですよ」

「私聞いてない!・・・そもそもどうやってアンタは弟の位置を知ったのよ」


勢は眉を吊り上げる。

この女性は忘れているのだろうか?

義眼には監視カメラと通信の他に発信機の役割も兼ねていることを。

この調子だと話がなかなか先に進めないと判断した勢は女性の言葉を無視して要件を言う。


「幸子さんの右足が吹き飛ばされました」

「は!?」


いきなりの事で髪飾りの女性は面食らう。それも勢は無視して言葉を続ける。

「あなたもその場に向かって下さい。向かう方角はこちらで指示します」

髪飾りの女性は勢のバカにするような態度に文句を言いたかったが、とりあえず勢の言う通りに指示を受けた。仲間の危機なのだから・・・


ccccccccc

ccccccccc


「ねえ」

「はい?」

「なんでこんなスムーズに進めるの?」

勢の指示を受けてから引き返したり袋小路に入ったりしなかった。


「今あなたが歩いている所、床に線が引いてあるじゃないですか」


確かに太い線が一本引いてある。そういえば、この線をたどって進んでる気がする。


「こんな入り組んだ場所では何かしら目印があるものです。その線はおそらく主要な通路なのでしょう」


心の中で、なるほどと納得してしまう。

それじゃあ線の横に〔10時ー2時〕と書いてあるのにも何か意味があるのだろうか?。何の事か全くわからないけど・・・

そんなことを思っていたら目の前に植物の壁があった。


髪飾りの女性はニイッと笑う。

「どうやらあんたの言う通り、この道進んで間違いなさそうね。宇宙人が通せんぼしてるよ。私にはあんな壁無意味だけどね」


女性は一旦立ち止まり植物の壁を切り裂いた。切り裂いた先には大柄な男、この植物を操っている人物がいた。


「あらら一人?じゃあ死んだね、お前!」

髪飾りの女性はロケット発射して一瞬で首を切り落とそうとした!

だが、足に何かが引っ掛かってスタートダッシュを決めれなかった。


「この・・・足にツルが、邪魔くさいわね!」


植物は近くに熱源を感知した場合、自動的に絡みつくように設定されてあった。

「この!」

モタモタしている内に足に幾重にもなって絡みついてきた。・・動けない。

そんな髪飾りの女性にさらに追い打ちがかかる。


キンキン、キン


女性は飛んできたナイフをどうにか弾きながら一瞬で出現した敵を睨む。

睨まれている女の子はこういった。

「降参して下さい。もうあなた達に勝ち目はありませんよ」


「誰が降参するか!このアホ毛!!」

ルイのアホ毛を睨みながら怒鳴る。


ここでルイと一緒に転移してきたテル大尉がナイフを再度飛ばす。

さっきの攻撃と違い手数が多い。

髪飾りの女性の肌に数か所、切り傷ができた。


「アホ毛の何が悪い!」

テル大尉は髪飾りの女性に負けず劣らずに怒鳴った。


ルイとしてはそのことに関してあまり触れてほしくなかった。

そもそも、今はそういう状況ではない!


ルイは現在、どれだけ緊迫した状況なのか髪飾りの女性に説明した。

「あなたの仲間は今、絶体絶命です。しかし、まだ宇宙船内で死者は出ていません・・・お互いに。・・・降伏して下されば無傷で地球に返すことを約束します。もちろんあなたの弟さんも一緒にです」

ルイは和解案を持ちかけた。


「幸子の足を吹き飛ばしたそうじゃない」


どうしてその情報を?と思ったルイだが、まだ和解にこじつけることはできる。とも思った


「命に係わる大怪我をさせないためにわざと幸子さんを狙いました。あの人の体の大部分は機械、ですよね」

髪飾りの女性は無言を決め込む。


ルイは向こうの戦いを見て不審に思った。彼女がユミ大尉の攻撃を受け着地した時、床が陥没した。人の体重ではこうはならない。

さらに言うなら一緒に来た男の人の事を、ニイと呼んだ。つまり兄妹。彼らが親から子へ、受け継いで、あの身体能力を有しているのなら、兄妹で二人ともあれほどの身体能力の高さは、あり得ない。


そのため機械の体で、あそこまで動作能力を上げているのではないか?と仮定した。

そしてその過程は当たっていた。トム大尉が吹き飛ばした足の断面は血肉ではなく鉄だった。

結果、ルイの仮定は当たっていたということに・・・


兄妹で二人とも身体能力が高いのはあり得ない?


この事実が引っ掛かり、ここ一週間の記憶がフラッシュバックする


髪飾りの女性はあの人の事を《弟》と言った

転移石を付けようとした時、《弟》は一瞬で現れ身代わりになった

地下で宇宙人に実験された子孫は自分たちの事のハズなのにどこか他人事のように《弟》は話した


そして最後に、この記憶がよぎった。


神様は星の調整をし続け、私たちのような知能指数が高い個体【人】が生まれるまでになった。


いやな胸騒ぎがした。なにか・・・大きな者の掌の上で踊らされてるような・・・

ルイは髪飾りの女性に質問する。しっかりと見て。


「・・・あなたの弟さんは・・・ちゃんと人の子なんですか?」


とても重要な事だった。

しかしその質問に髪飾りの女性が答えることはなかった。


一発の銃声音が鳴り響いたからである。



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