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宇宙船の中の攻防3


『全然来ない・・・そっちはどうですかルイ様』

『いえ、こちらも来る気配がありません。カイ大尉のほうも異常ナシです』

『あの女、来るなら早く来いって思いますよね、ルイ様』


ルイたちは一時退却したことにより髪飾りの女性を見失っていた。

ルイたちにとって一番恐ろしいことは不意討ち。

そのためカイ大尉の能力で網を張って待ち構えている状態だった。


網を張っている場所は三か所。

女性の移動スピードを考えたため、かなり網の位置は遠い。

なので今三人は感覚リンクを使っている。


ルイの転移石は繋がる力を持っている。それは転移石だったり場所だったり・・・この感覚リンクは三人の視覚、聴覚、思考をリンクするようにルイが設定してある。

ルイが感覚リンクまでした理由は、髪飾りの女性が現れた瞬間にルイが転移してすぐ駆けつけるためと、もう一つ・・・


『分かってると思いますが、声を出してはいけませんよテル大尉。おそらくあの女性は音で相手の位置を探っているはずです』

『ん~でもあの女、早くどうにかしないといけませんよね?』

『いえ、このまま膠着状態は望むところです。今トム大尉が向こうの鎮圧に向かっています。時期、真さんたちの方は解決するはずです』

『げ、あの地球人戦ってんの?』

『ユミ大尉に止めるよう何度も言ったんですけどね・・・でも結果的に良かったです。危ない時もありましたけど真さんが庇ってくれたおかげで二人ともまだ無傷です』

『地球人は死んでもいいですけどね』

『冗談でもやめてください。でもその心配は必要なさそうです。真さん、素手で刀をはじいていますので。まだケガもしてないように見えます』

『・・・そうですか』

テル大尉が不貞腐れたように返した。


テルにも真さんと仲良くなってほしいなー、

とルイは思い気が緩みそうになった。

だが、自分の頬を叩いて気を引き締める。


今、余計なことを考えてはいけません。待っているだけですが、気を抜いていい状況ではない。あの女性の動きは速い。一瞬の油断が致命傷になることだってある。


ルイは宇宙船の見取り図を頭に描いて何か見落としがないか思考する。


この宇宙船は円盤形で時計を模して移動通路の呼び名ができている。


今、真さんたちが戦っている場所が一番外周通路、12時と1時の間。

髪飾りの女性は1時から外周通路から外れるよう誘導して[11時ー1時]間の横線通路の中に入れた。

この宇宙船のメイン通路は基本横線だけど〔12時ー6時〕間の縦線が一本ある。この縦線に女性を入れてしまった。この縦線には〔10時ー2時〕間の横線通路を横断してすぐに二番外周通路に通じています。二番外周通路は中心部に行けるため、ここに侵入される事だけは何としてでも避けなければならない。

そのため今は二番外周通路の中の隔壁を下ろして使えないようにした。

乗組員たちは二番外周通路よりもさらに内側、この宇宙船の中央に避難してもらっている。転移石で確認したところ、もう全員中央広場に避難できている・・・ハズです。

そして今私たちが網を張っている場所が

〔10時ー2時〕間の横線通路その両端二つと、

〔12時ー6時〕間と〔11時ー1時〕間の十字路に一つ。

計三か所、網を張っている。


ここで懸念されるのが網を張る前に女性が網の外側にいた場合。それが怖いですが・・・


そんなことを思っていたら、管制室にいる部下が二番外周通路の入り口にいる女性を確認した。女性は隔壁を壊そうと刀を振るったが壊せないでいる。


その様子を転移石を通して見たルイは一安心する。


どうやら髪飾りの女性でも二番外周通路の隔壁は壊せないようですね。あそこまで壊されたら本当に困りましたけど・・・

それに敵はまだ網の中。・・・でしたら、わざわざコチラから出向かずにじっくりと待つことにしましょう。

向こうの戦いが終わるまで・・・・



一方髪飾りの女性は、監視カメラでその姿を映されていることも知らずに隔壁の前で叫んでいた。

「硬ッ!なんで壊れないのよー!!絶対この先に、あの逃げて逃げて逃げてばっかりのアホ毛がいるのに!アホ毛ー!出てこーい!!」

(アホ毛=ルイ・シェインミード)

髪飾りの女性は見当違いの考えをしていた。


ちなみに、この宇宙船の外周は4800メートル。直径約1.5キロ。乗り物という枠組みからすると規格外にデカイ。

そしてメイン通路だけで言えば

〔11時ー1時〕

〔10時ー2時〕

〔9時ー3時〕

〔8時ー4時〕

〔7時ー5時〕

の横線通路と、

〔12時ー6時〕の縦線通路が一本。

それに加えて外周通路が外側の一番外周通路と中心部に近い内側の二番外周通路がある。

小道なども入れると、この宇宙船は結構入り組んでいた。


髪飾りの女性はぶっちゃけ迷子状態であった。


cccccccccc

cccccccccc


真たちはゆっくりと後退しながら相手と戦っていた。坂倉という人質を取りながら・・・


「ここから出せー!」

水の器に囚われた坂倉が叩きながら叫ぶ。


「阪倉落ち着け。その中でも呼吸はできる」

真は少しずれたところで坂倉の心配をしていた。


「そういう問題じゃねえだろ!?」

適切なツッコミだった。


「この子・・・本当に一般人なのね。こんな薄い膜でさえ壊せないなんて」

悪気はなかったユミ大尉の言葉に坂倉は顔を赤くする。女性に馬鹿にされた気分になり被害妄想が加速していく。そんな坂倉を見てユミ大尉は言った。

「アラアラ、顔を赤くして。お姉さんに捕まったのがそんなにうれしいのかしら」


「鬼教官、しっかりしてくれ」

エンカ大尉がやれやれと言った感じに言う。


「いいでしょ。わたし面食いなの」

「言い切ったよ、この人。婚期が遅れそうだからって必死すぎだろ」

「あ”あ”!?」

「ん”ん”!?」

二人は敵の攻撃が目に見えて緩やかになったのを機にまた残念な会話をし始めた。


幸子、郷間、ミミさんの三人は小声で話す。

「どーするー?おさむくーん」

「宇宙人は殺す。でも地上人は守るべき対象・・・」

「落ち着け郷間。坂倉はもちろん助ける。だがそれで俺たちがやられたら元も子もねえ」

「見捨てるってことー?ヤダよ」

幸子が若干強迫じみに言う。幸子にとってはあまり見せない一面だ。


「そういうことじゃない。焦るなって事だ。坂倉は向こうにとっても丁重に扱いたい存在のはずだ。向こうに与してる地上人、真ってやつは宇宙人と上手くやっているようだからな」

「宇宙人と上手く?あり得ん!洗脳されているだけだ!」


郷間はそう言い切ったがミミさんはそうは思わなかった。


でも宇宙人が地球人に対して友好的だろうとそうでなかろうと結局のところ変わらない。

俺たちにとっては・・・

そう思っているミミさんの眼光は鋭く光っていた。


真は警戒する。

「鬼の鬼教官!」

「残念大尉!」

後ろの二人も警戒してほしかった。


そんな緩みきった所にミミさんが攻撃を仕掛けた。真が壁になる。

ガキィっ!!

何度も組みしてミミさんの動きに慣れた真は余裕で止めた。

しかし、そこに郷間も加勢する。二人掛かりで真を抑えこみ、その間に幸子が真の壁を抜けた。


一人向かってくるのを機に大尉二人の会話は途切れ、敵と向かい合う。でもユミ大尉もエンカ大尉も敵の動きにだんだん慣れて来ていた。どこまでなら安全圏なのか理解していた。

その考えこそが致命傷になる。


トスッと音が鳴った。


「ゴフっ」

エンカ大尉が吐血した。お腹には小型のナイフが突き刺さっている。幸子が投げた小型のナイフ。幸子たちは近距離攻撃しかできないわけではなかった。


「エン・・・カ」

ユミ大尉は突然の事に身が固まる。その真横に幸子が通り、さらにひどい寒気に襲われた。


パアン!


幸子はユミ大尉を無視して坂倉を捕らえていた水の器を割った。そして一目散に引き返していく。


ドッ、ドッ、ドッ、ドッ

ユミ大尉の心臓の鼓動がうるさく響く。

もしあの時、人質の方ではなく私に切りかかられていたら・・・

冷や汗が頬を伝う。


「ユミ大・・尉!」

名前を呼ばれユミ大尉は現実に引き戻された。呼んだのはエンカ大尉だった。ユミ大尉はコクンと頷く。


「真くん!」

ユミ大尉に呼ばれ真はミミさんたちの刀を振りほどき、二人の所まで後退した。

後退するときに坂倉を抱える幸子と交差したが、二人は何もしなかった。


真が近くまで来ると、ユミ大尉はエンカの前に水の塊を出した。エンカはその水に触れ、水を沸騰させる。


ジュワアアア


水は水蒸気となり辺り一面に真っ白な空間を作った。幸子たちは人質を救出したばかりということもあり水蒸気に触れないように後退し追撃を警戒した。

・・・・・

・・・・・

・・・・・

何も来なかった。

水蒸気がはれた時、そこには誰もいない。


「逃げた…て事か?」

「さあ、どうだろうねえ」

警戒しながらミミさんたちは進む。ゆっくりと・・・ゆっくりと・・・進む。慎重に・・


不気味なほどに宇宙人たちは呆気なく引き下がった。何かが起こるのでは?と進む。

しかし宇宙人たちがいた場所を通り過ぎても何も起こらない。


郷間が口を開く。

「どうやら本当に逃げたみたいだな。クソ、あと少しで宇宙人を殺せたのに」

「拍子抜けーって気もするけど、仲間の命優先で逃げたのかなー」

「まあ、・・・そうかもしれないねえ」

ミミさんの言葉を受けて郷間と幸子は張りつめた気を緩める。


その瞬間ミミさんが振り向きざまに勢い良く刀を振った。

すると・・・

ガキイイ!

と何度も戦闘中に鳴り響いた効果音がまた鳴る。


ミミさんが刀を振った先には何もなかったはずなのに真がいた。


ミミさんは刀に力を込めたまま真に言う

「隙を突けるよう演技までしたのに・・・お前さんには、もうチョイ気を緩めてほしいねえ」


腕でガードしていた真は刀を押し返してから言った。

「アンタらが言う通り俺たちは逃げる予定だった。こっちに気付かずに通り過ぎてほしかったよ」

「音がね、聞こえたんだよ。息をひそめる微かな息遣い。・・・姿を現したらどうだい?まだ誰も逃げてねえんだろ?」


その言葉を機にそこに真しかいなかったのにユミ大尉とエンカ大尉も現れる。

さらにサンとムーンとキュアも。キュアはエンカ大尉に寄り添っていた。


「これは、これは、随分と大所帯だな」


笛の女の子、ムーンの能力で姿を消していた真たちだったが、ミミさんに見破られてしまった。

エンカ大尉は怪我人。この場をやり過ごすためと治療のために現れたサンとムーンとキュアも戦闘向きの能力ではない。

真たちは窮地に陥っていた。だが・・・


「いいタイミングで来れた。ここは俺に任せてくれ」


この宇宙船のナンバー2

トム大尉がやってきて戦況は逆転する。

 

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