密談
前回までのあらすじ、
無謀なことにA級ランククエを受託しようとする、連れの少年くん。なんと親切な冒険者パーティが手伝ってくれることになった!
「余計なやつらいらない」
「まあまあそう言わないでよ。アンタと私だけじゃ挑めやしないんだから。それに良い人達かもよ?」
「人間なんてクソだ」
パリス・グラトのご一行さんと別れた後、私と少年は本日の野宿先を探すためにギルドがある村の外の森へ出た。
なるべく所持金は使いたくない。
歩きながら少年は何かを思い出して、表情が暗くなる。
「しかもアレは…」
「ん…あ、さっきもその顔してたね?んーと、確か小さな金の天使がぶら下がってる首飾りを見たときだ!」
「めざとい人間め」
「アレがなに?変わったファッション?何か意味があるの?」
「は?正気か人間?」
「え…なによ」
「おまえら人間のせいでボクらは……!おまえらがあの白い悪魔どもと手を組んだから滅ぼされた」
「ちょ、ちょっと待って!私はわからない。まだここに来て日が浅いの」
「とぼけるな人間、おまえらがしてきたことをボクらは忘れない。今は平和ボケしてるがいい、じきに復讐してやる」
「こ、こわぁ」
やっぱ、この少年と打ち解けるのはかなり難しい。
***
信用はしていないが、他のクソ共よりはマシ。
だから今は利用するために一緒に行動する。それだけ。
それに一回殺したのに殺した相手といれるなんて、おかしい女としか思えない。バカで変な女。
警戒心なく、焚き火跡を挟んで向かいで涎を垂らして呑気に寝ている。やっぱり阿呆も足しておこう。
暗闇に囲まれた茂みからカサカサと誰かが迫る。
「なんだ。なり損ない風情」
「そんな言い方はひどいなぁ。それにキミだって人間の弟なんて嘘をついて笑わせるね」
「うるさい」
「あたしの鼻は猫猫族の能力をちゃんと引き継いでるのさ。
人間の匂いじゃないのはバレバレよ。魔族の坊やくん」
「……」
「パリスがお呼びよ。少し面を貸しな」
やっぱり人間はクソだ。
「これは取引だ。トムくん。我らが天使は穢れを祓うためにキミとの繋がりを望んでおられる」
「………」
「あぁ…俺は優しいからちゃんと約束を守り、連れて行こう。そしてキミは許しを乞いながら這いつくばって素直に、裁きに応じれば良い」
「……っ」
「ああ。素晴らしい。はぁ…キミと共にいた彼女にこの取引を知られてはいけないよ」
炎に照らされたテントで物影が艶かしく動く。
「まっーたく、パリスも趣味が悪いね」
一匹の猫が笑った。