マ、マカイ?
チュンチュン……。
目を覚ますと、隣には少年の姿がなかった。
これから始まる美少年との旅を期待してたから、少しガッカリした。でもまぁ、寝込み殺されなかっただけ良しということにしておこう。
「おい人間」
背後から幻聴…?…。
「!!! あぁ……おはよう!!!」
「うるさい。これでも食え」
「えっ。くれるの?」
少年が林檎を投げた。真っ赤で美味しそうで "少年がくれた" ことでより付加価値が付いてご馳走にみえた。
「昨日から何も食べてない。餓死は嫌だ」
シャリシャリと林檎をかじりあう。
「よし、近くの別の町か村を目指す。ルンなきゃ何もできないし、メポロンのクエストも受託中なのよね」
「ボクは……魔界に帰りたい」
マ、マカイ?
「魔界までの道分からないよ。それに私のレベルだと即死しそう」
「なら、ボクの奴隷印を消してくれ」
少年は簡素の上着を脱ぐと、背中に不気味な印が痛々しく刻まれていた。その痛さを想像したら泣きそうになる。
「うわぁ。そのまんまじゃダメなん?」
「嫌だ」
「どうやって消すのよ……ソレ。痛そうで可哀想」
「アイツを殺すしかない」
「アイツって誰よ?」
少年の表情が歪む。恨みと憎しみと殺意が織り混ざった表情だ。
ひぇーこわっ。
「これを付けたのは魔奴隷商人ルバーブ。ボクの同族はみんなアイツに捕まって魔奴隷にされた。母も兄弟もネルンも……だから絶対殺す」
「アンタ苦労してるのね。あ、今更だけど名前教えてよ?」
「人間なんかに教えたくない」
「私はちく…ううん。たま子って名前なの」
「……。」
興味ないって顔してるし…。
「その人間呼び辞めてくれない?君だって人間じゃん」
ん……?
少年は飛びっきりのハァ?って顔をしていた。
え?違うの?私とあんまり変わりなくない?
その珍しい深緑色の瞳と髪以外。
「ボクは魔族だ!!!!!!!!!!!!」
「えっ!?そうだったの!?」
少年はそれからずっと不機嫌だった。
口も聞いてくれなきゃ目も合わせてくれない。
「ねぇー許してよー。ごめんってば」
森の中で、少年は先を歩く。
やっと振り向いてくれたかと思えば、「ついてくるな人間」「人間の助けなんかいらない」「また殺してやる」なんて酷いことを言う。
そんなこんなで二時間森を彷徨い、ついに次の村に辿り着いた。ちなみに道中でたまにメポロンがいたので軽く5体倒しておいた。弱すぎてランクが上がらない。
「ちょっくらギルド寄ってくるから、誘拐されんなよ」
小さい村だし平気かなと思ったけど、目を離した5秒後に村のお兄さんに無理やり連れていかれそうだったので、蹴りで追い払う。
「もう!!なんでそんなにモテるのよーーー!!逆になんで私には男が来ない!はぁ!?不公平すぎるだろぉぉ」
「……」
「はぁー……心配で目が離せない」
少年は目を見開いて驚いた。よくその顔、見かける気がするなぁ。
「何?どうしたの?」
「……ないで……」
「え?ごめん小さくて聞こえなかった」
「ボクから目を離すな。たま子」
「お、おう」
どういうことだ。デレた!?
少年と共にギルドへ。
「それでは報酬の100ルンでございます。お次のクエストも受託されますか?」
▼100ルンを手に入れた!
「もうちょっとルンがいいクエストお願いします」
「それではこちらはどうでしょうか?1000ルンでメポロン30体討伐」
またメポロン………かよ。
私ってそんなにゲロ弱い感じかい?
困惑する私の横で少年はクエストボードをジッと眺めて何かを見つけると、指を指した。
「ちょちょっ!冒険者様それは」
「ちょ、えええ!?」
ギルドの受付嬢もびっくり。いきなりAランク級のクエストだった。
「いまのF級(初心者)冒険者様には無謀すぎます!!」