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不出来な僕らのパレード  作者: 芳樹玖生
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イーノイの村

(さすが母親だ。息子のことをよくわかっている)――シルバは心の中でそう呟きながら家を出た。


 村の中は陰うつな空気に包まれている。


 シルバたちの住むイーノイは炭鉱の村だ。北に石炭が取れる鉱山があって、この村の住人の多くがそれを採掘し、精製し、行商人に売ることを生業にしていた。村には鉱山までまっすぐ伸びたレールが村の中を一直線に貫いていて、そのレールに寄り添うような形で各家々が点々と建っていた。


 しかし近年、石炭の採掘量が激減すると、村はみるみるうちに寂れていった。多くの住人が炭鉱夫を辞めて、南にある港町で漁師になる道を選んだ。シルバの父親もその一人だった。


 昔はもう少し活気があった。今は道を歩いていてもほとんど人とすれ違わない。商店や肉屋などは営業しているのだが、中から声をかけてくる人はいない。静けさと肩を並べて歩くのにすっかりなれてしまっているシルバはのん気な足取りで酒場に向かってレールの横を歩いていた。途中でレールの上をまたいで、シルバは村の西側に向かった。


 そこはちょっとした広場になっていて、その中央に寂れた銅像があった。


 イーノイが生んだ村の英雄カークス=スワロヴァインの銅像だ。長い間風雨にさらされ、所々黒ずんでしまっている。


 今も昔も変わらず、この銅像がまさに自分たちの村の象徴となっている。栄枯盛衰。シルバは心の中でそう皮肉って、カークスの銅像を横目に酒場に向かった。


 このまま家に帰ることはできない。


 母親のリラに何を言われるかわからないからだ。


 嘘でも、どこかで時間を潰す必要が今のシルバにはあった。


 半ばやけくそだった。


 最悪、飲んだくれを適当に見繕って母親に紹介すればいい。


 母親だって酒に酔った男を息子が家に連れてきたら怒る気も失せるだろう。


 シルバはそんな適当な考えを頭に思い浮かべながら、酒場の戸を押し開いた。


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