vol.2...World and start・Supernova
『さあ、始めよう。誰が私の《《食事》》なのかね―――?』
『貴女は、知的だ。だから食べる《《者》》など、故に存在しない』
『分からないぞ、だって貴様、哲学者になるんだろう?であれば真理に気づくだろう。我のしたいことはなんだ?』
『貴女は、死を望んでいる―――人間を食べると寄生虫がわくだろうと思ってそう言ったのだね』
『私が見誤ったことは謝る。貴様は、哲学者ではない―――単なる一介の探偵だ』
今は夏、私は想いに耽っている。小説を読んでいる最中だった。青空みたいな清々しいくらい鮮やかな空想を懐き、探偵小説の真の答えであることを祈りながら私は小説の真実を観ている最中だった。そして、違っていることを知り、また一から読み直す。自分で悩んだ回答が間違っている、と知った後の見返す時間が最近愛おしくなってきた。
探偵小説部は花火大会に参加することにした。この街の一大イベントだった。
「海外だったら、市場で新鮮な果物で作ったクレープとか売っていて楽しいだろうな」
「―――そもそも花火大会なんてやっていないと思うよ鵲さん」
教室で私が発言したら皆がしんと静まり返る。そのくらい私の発言がクラスの全員を驚かせるものであったのだろう。まあ確かにそうなのかもしれない。
なんせ私は転入生なんだから。切り取られた長方形のマドを見つめる。
今日の空は素敵だ。空はかかったように曇っているものの夏の暑さは失われていない。セミの音は何故か暑いのに聞こえなかった。そのかわり鶯が鳴いている。雀は朝飛び去ったのを確認した。緑の照り輝く葉が重なって影のグラデーションを演出しているのがとても見ていて癒やされるほど和ませる風景だった。
ツバメは低く飛ぶだろうか?今日は雨が降らない、と言っていたはずだったけれど。
今日は、悪くない。
一日は今の所オールグリーンだ。
頭の中の警報も今はとても穏やかになっている。
「でもバールとか行きたいよねえ。お酒は飲めないけど、モンブラン食べたい」
「―――あまり甘い物食べると太るよ、鵲さん」
そこでしんと静まり返る一同。もう飽きたとばかりに手を振って私が答える。すると教室は元通りに戻り、話を続ける。
「いやさ、甘い物もたまには良いんじゃない?鍋島くんもあまりまともなことばかり言うと嫌われるよ?」そういうのはクラスの女子の細川さん。クラス第二位の人気の女子だった。
「でも本当のことだしなあ」
「良いのよ良いのよ。彼ってそんなぶっきら棒なとこあるけど、実は結構頭良いみたいよ」そういうのは鵲さん。
「マジか」と細川さん。胸の鼓動が伝わってきそうなくらい今日の教室は暑い。下敷きで仰いでいた。
「じゃあ、海行こうぜ。細川のビキニ見てみたいし」そういうのはイケメン男子と噂されている肉食系男子の矢沢健二。
「やっだあ変態。痴漢」と細川。
「お願い一回だけ。なあ、お前もそう思うだろ、鍋島」矢沢は私に振る。
「まあ、興味なくもない」
「えーあんたもそうなの。やっぱ男の子ってみんなそうなのやっだあ」そういってはぐらかすのは細川。でも満更でもない。
「バーベキューしない?」と細川。
「賛成」と私。
「じゃああんた肉担当ね」そう言われて困ったのが私。そんなにお小遣いもないのに弱った。そんな事言えないので取り敢えず賛成したので仕方がない。
「材料は皆で持ち寄りましょう」そういうのが鵲だった。「矢沢が肉」
「へーい」そう言って、おずおず自分の席につく。
そして授業が始まった。
授業は滞りなく終わり、昼の休み時間になった。
「材料何にする?」私が言った。
「肉」矢沢が答える。「肉以外は草食系男子たるお前の食い物」
「そんな事言うと健康を損なうぞ」私が言った。「動脈瘤とかなるかも知れん」
「おいおい、脅されても俺は了解しないぜ?」
「あたし焼きりんご食べたい」そういうのは細川さん。
「パンケーキ食べたいのよ」そういうのは鵲さん。
「ということはまた私が作らないといけないわけだな?」そういうのは私。
『当然!!!』全員合唱。
私が転けそうになった事は言うまでもない。