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海の中の話

作者: ぶい

 僕は眩い光の中で産まれた。

 広い海で小さな僕は、少しずつ行動範囲を広げた。

 2匹の魚に守られながら、少しずつ広げていく。

 ある程度まで広げると、同時期に産まれた魚たちと出会う。

 僕より大きくものがいれば僕より小さいものもいる。

 大きさはさまざまだが、どれも稚魚と言って差し支えない大きさだ。

 特に意識することもなく、コミュニティに属していた。

 さらに範囲を広げて、さらに多くの魚たちが集い出した。

 もう稚魚の域を出ているものもいる。

 それぞれのコミュニティが混ざり合い、新しいコミュニティが生まれる。

 僕がどうしていいのか分からずあたふたしていると、コミュニティの形が完成してきて、結局入れず1匹で生きていくことになった。

 寒さを感じ、上を目指す。

 太陽は平等に光と熱を与えてくれる。

 しかしそこではコミュニティが泳いでいた。

 魚たちが光を遮る。

「僕も混ぜてよ」

「ダメだよ。君は僕らの仲間じゃない」

「仲間に入れてよ」

「ダメだよ。会ったばかりの君を、入れるわけにはいかない」

 彼らは僕を拒絶した。

 だったらもっと広げてやる。

 新しいコミュニティを作ればいい。

 僕は遠くへ遠くへと泳ぎ、出会ったことのない魚たちを見つける。

「僕も仲間に入れて」

「いいよ」

 ようやく居場所が得れた。

 そうして僕はそのコミュニティの中でしばらく暮らした。

 しかし、合わなかった。

 集団で暮らすことをしてこなかった僕には、暮らし方が分からなかった。

 やがて孤立していった。

 集団に属さなかった時より辛い思いするなんて、思いもしなかった。

 気がつけば、僕の周りには僕より大きな魚しかいなかった。

 怖い

 ただそれだけを思う。

 僕はその場から逃げるように、暗い方へと泳いでいく。

 僕は集団に、適応できなかった。

 大きな岩の立ち並ぶ場所で、僕は小さな岩の隙間に入りこむ。

 ずっと出ていかない。

 巨大な2匹の魚が、僕に出てこいと叫ぶ。

 怖い

 何匹もの巨大な魚が、僕に優しい声をかける。

 怖い怖い

 毎日のように巨大な魚はやってくる。

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

 僕は隙間を飛び出して、上下も分からず尾ひれを動かす。

 光を欲していたはずなのに、だんだんと暗くなっていく。

 そして僕は、光の届かない闇の中、静かに呼吸を止めた。

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