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プロローグ
私はこの世の理など無視するかのような光景を目の当たりにする。
禍々しい瘴気と共に、忽然と横浜のポートサイドに現れた屍体どもの大群。一斉に地響きのような唸り声をあげ、生者を貪り喰い尽くしていく彼らのおぞましい姿に、私たち人間は恐れおののくだけで、全くなす術がなかった。
しかし、【イヴ】と名付けたその女は、華奢な体躯からは想像もつかないような力で、その屍体どもの首をいとも簡単にねじ切っていくのだ。彼女はアスリートのように鮮やかな跳躍を見せて屍体どもの群れに飛び込むと、数体をまとめて両手で引き寄せ、背中から真っ二つにへし折った。臓物を垂れ流すその無残な上半身を他の屍体へ投げつけ、次なる標的に襲いかかっていく。
イヴの周りには紙切れのように引きちぎられた肉片の山が築き上げられていく。
私はイヴが圧倒的強者として繰り広げる殺戮ショーに魅せられていた。
気がつけば、私の眼前には血飛沫でできた霧、そして損壊した屍体どもの肉片でできた赤い絨毯が広がっていた。
イヴは満足げにその中央に立っていた。表情のないはずの彼女が笑っているようにも見えた。
私はその姿にかすかな戦慄を覚えた──
