3/12
プロローグ2:何もない場所で
何もない。
気がついて初めて浮かんだことは、その一言だった。
気がついた時から、この何もない場所にいた。
何もない場所を写すかのように、私にも何も、記憶さえもがなかった。
けれど、そんな私にも、ここには良いものも悪いものもないことはわかった。
ここには、何もない。
何もないから、危険がなかった。
危険がないくらいに、何もなかった。
――何もない平和の代わりに、幸せもまた、なかった。
私は"平和"だった。
だけど、"幸せ"じゃあない。
そこで、私の中でひとつ、浮かんだ。
何もないなら、探せばいい。
だから、私は探すことにした。
探すと決めたときに、目の前が晴れて、大きな門が現れた。
「――幸せを、探してるの」
口をついて出たその一言に、目の前の青年は揺れた気がした。