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プロローグ:名誉の都市の見える荒野で
──俺には、偶々力が有った。
だからそれなりの居場所があったし、それなりの"名誉"を手に入れた。
振り回して壊すだけの大嫌いな力だったが、それのお陰でそこにいて、その居場所を守るためにも守るべき物が在ったから、その力でそれを守ってきた。
そうして力を持っていればまた"名誉"を貰え、"名誉"を持ってさえいればあの都市で俺は安泰を獲られた。
俺は"平和"だった。
俺には、それで充分だった。
――だってのに。
「……あー……もう無理。マジ無理」
今現在。
ちょっとした誤解で、一面の荒野をひた歩いている。
暑い。広い。何もない。そんな荒野を、ひたすら、ひたすら。
それもこれも……
「……なに?」
『──"幸せ"を、探してるの』
……こいつのせいだ。
こいつのせいで、俺――バクソート・ノーヴェルは、荒野をさまよい歩くことになったんだ。