1、序章
為末春菜、中学3年生。
いわゆる受験戦争真っ只中の中学生だ。
もちろん好きで受験勉強をやっているわけなどなく、高校位出てなきゃ、と言う一般常識に照らし合わせるとそうなるだけのことだ。
だから、今こうして春菜が塾に行かなければならないのも、仕方のない事と理解していた。
受験生の定めと言うやつだ。
春菜は自分の事ながら、頭は悪くないと思っていた。
特に勉強は好きではなく、特別頑張ってるわけでもないが、授業中に眠り込まずに話しを聞いてれば、だいたい頭に入る。
だから、高校も教師に進められるまま、周囲の期待を裏切らないように、この辺りでは一番の進学校を進路調査では第一希望にした。
特に行きたい高校がある訳でもない春菜にとっては、流されることが楽だったのだ。
さすがに、第一志望に決めた高校の受験では今までのように要領が良いだけでは通じない事も分かっていたから、好きでもない勉強を最近はやり始めた。
二番手辺りの高校にすれば、勉強せずとも合格出来そうだ、と言う思いもあったが、その為だけにわざわざ周囲の期待を裏切る気にもなれなかった。
それでも周りよりはずっとのんびりしている事は自覚していたが、やる気が出ないのだから仕方がない、と春菜は一人いつも思っていた。
短調な、何もない生活がつまらなかった。
変化を求めているんじゃない、と思う。
きっと、春菜自身気付かないまま何か真剣になれるものを求めていたのだろう。
とにかく、そんな受験勉強に明け暮れようかと重い腰を上げ始めた、中学3年生の秋のある日、それは起こった。




