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小説『オンチェーンFinance』13

作者:三澤賢司
最新エピソード掲載日:2026/10/12
夜明け前の日本国オンチェーン金融中央統括センター、メインホール。静寂のなか、天野修一は漆黒のホログラムスクリーンに一筋の光のラインを描いた。
「神田局長、黒輝常務、葵。僕たちは、既存の金融用語に囚われすぎていたのかもしれません」
テーブルを囲む財務省主計局長・神田、東都中央銀行特別顧問・黒輝大介、立花葵が、天野に視線を注ぐ。
「従来の金融学は、資産を『安全資産』と『リスク資産』の二元論でしか語れなかった。国債や預金はリターンが極小の安全資産、株式やデリバティブは元本割れを孕むリスク資産だと。……しかし、シーソー機構が生み出したものは、そのどちらでもありません」
ホログラムに、新たな概念が浮かび上がる。
『シーソー補完型資産(Seesaw Complementary Asset)』
起債済み国債と個人向け国債・信託という性格の異なる二つの金融プールをシーソー機構で接続し、互いのリスクと変動をリアルタイムで相殺・補完する、次世代型の国家級構造化アセットである。
「シーソー補完型資産……!」神田が、その言葉を口の中で反芻する。
天野は深く頷いた。
「『安全資産』というフレームワークは幻想です。金利上昇局面では国債価格が下落し、インフレ局面では預金の実質価値が目減りする。単体で完全な安全など存在しない。ですが、二つの資産の特性をシーソーで相互補完させれば、市場のどんな猛威に対してもリスクを吸収できる構造体を創れるのです」
天野は白板に、『シーソー補完型資産(SCA)』の三層構造図を描き始めた。
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