くたばれ持ち金!
これはお金という人々に利用される為だけに生まれた物の物語
※大体1500文字程度です
チャリンッ
俺の名は平成10円
平成に生まれた誇り高き10円玉だ。
だが誇り高き10円玉である俺はすぐさまこの世に生まれた時に理解した。俺は人間に利用される為に生まれたのだと…
それから毎日、何故俺がこんな事にならないといけないのかを悔やむ日々だった。人に利用され…また別の人に利用…そういう日々を繰り返していた。
そんなある日、俺はスーパーのおばちゃんからぶつぶつと呟く冴えないおっさんの元に渡った。恐らく社会人数十年の底辺サラリーマンだろう…
そのサラリーマンは俺達お金を良く使う人だった。使い方が荒く…財布の中では誇り高きお金である我らが次に汚い利用をされるのは誰かと…擦り付ける日々だった。
まるで地獄だ。
俺に気さくに話しかけてきた昭和10円先輩も既に居なくなった。俺にこの男はヤバいと伝えてくれた500円の兄貴も居なくなった。
皆連れて行かれ…利用される瞬間に「助けてくれぇ…嫌だ…嫌だぁぁぁ」と叫んでいた。俺はその光景が脳裏に焼き付いて離れない。
次は誰が利用されるかと…
俺は最後まで生き残る事に決めた。
1つと…また1つとどんどん居なくなっていく。
そうしている内に、気が付けば財布の中には10円玉の俺1つだけになっていた。
次は俺の番だと…そう思いながら俺は腹を括った。
先輩や兄貴達も利用されたんだ…だから俺も……と
そして遂にその日がやってきた。
だが何故か男が俺を神社の賽銭として使ったのだ。
俺は喜んだ。この男の元に居る俺がこんな綺麗な使い方をされるなんて…と
男は俺を手に持ち賽銭箱に入れようとした。
だが入れる瞬間に男は何故か止まった。
俺は早く…早くと思い待ったが男はしばらく入れなかった。
不気味な間が続くと男が急に喋りだした。
「くたばれ持ち金!…お前らはすぐ居なくなるくせにモチモチモチモチしてお餅みたいに伸びて俺に利用されまいと粘る…そんなお前らは俺に利用され…伸びた持ち事断ち切れてしまえば良いんだよ…」
男はそう言いながら俺を賽銭箱に投げ入れた。
俺は気味が悪かった。だが直ぐに理解した。思い返してみれば男は会社でも独り言をぶつぶつと呟き、孤立して誰からも避けられ、お金の使い方も荒く…常に金欠だった。そして自分の物とぶつぶつと会話していてまるで人と話しているみたいだった。
恐らく精神疾患だったのだろう。
だからこれは独り言だと…そう思った。
賽銭箱の隙間から男が居るのが見える。俺はそっと男の様子を見ようとした。
少しだけ…少しだけと…隙間から顔を覗くと何故か男と目が合った。
男は不敵な笑み浮かびその場を立ち去った。
俺はその瞬間震えた。何故物と会話していたのか…何故「嫌だぁぁぁ」と叫ぶ硬貨から利用していくのだと………
だが俺はもう男とは関係無い…賽銭箱の中に居るお金だ。しばらくは安泰だと思った。
次の日…何故か俺は俺が生まれた場所に居た。
工場だ。
俺は同士である10円達をと共に機械をくぐった。
機械をくぐりしばらくすると全身が猛烈に熱くなった。そして同士である10円達と混ぜられる。
俺は必死に足掻こうとした。
だが混ぜられた同士達と共にぐちゃぐちゃになり俺の意思はそこで無くなった。
まるで新しい自分として生まれ変わる為に利用されてボロボロになった俺達をまとめてぐちゃぐちゃにして再利用する様だった。
俺の名は令和10円
令和に生まれた誇り高き令和10円玉だ
そんな誇り高き俺はすぐさまこの世に生まれた時に理解した。俺は人間に利用される為に生まれたのだと…
それから…梱包された俺はスーパーのレジにて開封されぶつぶつと呟く男の元へ行く事になった。
それが俺の…初めて利用されるという体験だった。
お金というものは、物を売り買いすることができるという自由であるけど、その自由によって別の自由が縛られて制限される。
お金は自由であるが故に不自由なんだと思ったので描きました。
おかしいところがあったら教えてください(読者視点も大事なので)
この物語はそんなに長く書いても誰も見ないだろ…と思って短めにしました。




