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不思議な体験

作者: chui
掲載日:2026/01/23

「アクビなんかして、少し気分転換してきたら」

経理の仕事は楽ではない。

1円でも計算が合わなければ、再計算になる。その手間を考えると、少し休ませた方がいい。

そう思って、部下のC子を休憩室に行かせた……のはいいのだが、問題はその後だった。

「気分転換できました」

そう言いながら戻って来たのは、C子ではなかった。

あなた、だれ?

そう声を掛けようとしたとき、内線が鳴った。

「C子、営業から」

電話を取ったB子が、C子ではないC子に声をかけた。


電話の受け答えも問題はない。

周りの人も、不思議がる様子もない。

私は問いかける声を出すことができなかった。

席に座るC子が気になるが、先も言った通り経理の仕事は大変なのだ。

ミスをしないために、私は自分の仕事に集中した。


「お先に失礼しま〜す」

帰りを告げる声が聞こえる。

時計を見ると終業時間になっていた。

「お疲れさま」

先の声の人に声をかけると、そこにはC子がいた。

あ…いつの間に。

この不思議な体験を消化できないまま家路についた。


家に帰ると、夕飯の下準備をして、その間にお風呂に入る。

夫か帰って来ると、お風呂に追いやり、その間に夕飯を仕上げる。

夫とは、それなりに喧嘩をしいしい、人並みに楽しく暮らしている。

若い頃の愛情は、ただの情になったけれど、それでも食事は暖かいものを食べて欲しかった。

湯上がりの服装に着替えた夫が食卓に付くと同時に、料理を並べ終える。

我ながらタイミングばっちり。

「いただきます」

さあ、味はどうかな?

そう思ったとき

「ちょっとトイレ」

そう言って夫が席を立った。


いつもこれだ。

こっちは少しでも暖かいものをと思って、料理を準備しているのに。

「先に済ませておきなさいよ」

不快感を隠そうともせず、そういうと、私はお箸をおいた。

一緒に食べようと作ったのだ。

イラッとしながらも待つことにした。

「先に食べてて良かったのに」

そう言いながら戻ってきた夫に、文句を言おうと振り返りって、言葉がでなかった。

そこには知らない男性が立っていた。


そこからはよく覚えていない。

いまは、知らない人の世話で生活している。

たまに友人が来るけれど、その人達もすぐに顔を出さなくなった。

私は夫や友人を探す為に歩く。

どこにいるの?

私は歩く、歩く。

経理の部屋でこういう会話が聞こえる。

「A子さん、認知なんだって…」


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