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002_魔王討伐に行こう

 ―― 次の朝



「では出発するぞ!」

 (だからいきなりすぎるってば! )


「さっそく出発されるんですね! 頼もしいですわ!」



 ルルや他の侍女たちも、ロムオを見てうっとりしている。


 いやちょっと待って! ロムオは人形だからなんとも無いだろうけど、こっちは生身の人間なんだよ。

 いくらチートをもらったとは言え、せめて身を守る道具だけは用意させて!



「俺は無敵だからいいが、従者には立派なものを用意してやってくれぬか。

 これでも俺は頼りにしているのだ。

 何かあったら心が痛む」

 (よし、うまいこと言えた! )


「まあロムオ様、従者にまでそんな心配りが出来るなんで! さすがですわ!」



 そうして城下町でも一番高級品を扱っている防具屋に向かった。


 その道中では、石造りで作られた街、街道を行き来するドラゴンが引く台車。店の前に置かれたテーブルでエールを仰ぐドワーフ……。

 異世界に来たんだなとワクワクした気持ちが改めて込み上がってくる。



「ロムオ様、着きましたわ!」


「ほほう、これは立派な店構えだな! 素晴らしい!」



 防具屋の入口をくぐると、聖女を目にした従業員が慌てて奥の作業場に声をかけに行った。

 しばらくして頑固な親父が出てくる。


 親父はロムオをギラリとひと睨みし、「ほう」と一言漏らした。



「おい、カイナいるか?」


「なんだあ親父」



 親父は「お前が対応しろ」とばかりに、カイナという狼女に視線を向けた。

 僕は「獣人もいるんだ」と驚きつつ、もっといろんな種族がいるのかなと興味が湧いてしまう。

 けれど、その視線が失礼にならないよう、必死に目をそらした。


 カイナは服の上からでもわかるぐらい筋肉がたくましく、かつしなやかさを持ち合わせているようだった。

 その高い身長は、周囲の誰よりも目を引き、堂々とした佇まいに周囲の者は怖気づいてしまう。

 銀色のたてがみは、店内の灯りを受けて柔らかく輝いていてとても綺麗だ。



「このような、気高くも可憐な女性に巡り会えた幸運を、

 神々に感謝せずにはいられません」

 (そんな口の浮いた言葉、なんでポンポンでるんだよー)


「よせやい、可憐だとか次言ったら承知しねーからな」


「その凛々しい姿も、まさに女神の化身のようだ」

 (俺の口、頼むから止まってくれー! )



 カイナの耳はピクピクと動き、頬の毛はわずかに逆立っている。


 ――一見怒っているようにも見えるが、しっぽはブンブンと揺れていた。



「なあ、親父。この人についていってもいいかい?

 魔王退治だったら私もきっと役にたてるとおもうんだ」


 (はあ? 何いってんのカイナさん! いま会ったばかりだよ? )


「……好きにしな、そんな顔して頼まれりゃ、

 断るのは無理だってもんだい」


 (それでいいの? 見た感じ一番弟子だよね? )



 親父は後を振り向かず、作業場へと戻っていった。


 そうして魔王討伐メンバーは二人に増えた。

 聖女とカイナはロムオの後をつかず離れずついてくる。

 ちなみに従者扱いの僕は、カイナに見立ててもらった軽めの防具に見を包んでいた。


 街の人々はその二人の美貌に振り返り、誰もがロムオを羨んでいるのは明らかだ。

 僕の姿は全く気にしてないようだった。



 (なんか、だんだん腹立ってきたな。

 こうも皆に空気扱いされるなんて……。

 チート使ったら、ロムオ様すごーいとかなるんだろう?

 やってられないや……)



 王都の出口に差し掛かるころ、ござの上に座らされた小汚い少女が目に入る。

 足には鎖がつけられている。きっと奴隷だ。


 異世界ではよくある話だが、実際にこうして目の当たりにすると、キュッと心が締め付けられる。



「そこの旦那、この奴隷が気になるのですかい?」


「何ということだ、この様な少女にこんな扱いするなんて、

 すぐ買い取らせていただく!」

 (ちょっと待って、目についただけでいちいち買ってたら、

 奴隷で溢れちゃうんじゃない? )


「なんとお目が高い! この子誰にも心を開かないので、

 こうして売れ残っている始末。

 ですが希少種のエルフですぞ!」


「辛かっただろう? ルルよ、この子に浄化と治癒をかけてくれるか?」

 (お願いやめて、この後の展開読めちゃうから! もう僕の心がもたないよ! )


「まあなんてお優しいの! あなたは慈悲そのものですわ!」



 そうしてエルフ少女が荷物持ちとしてがパーティーに加わった。


 少女の名前はノエルと名乗った。

 十歳ほどの幼い姿に、尖った耳と澄んだ青い瞳が印象的だ。

 その瞳には神秘的な輝きが宿り、彼女の知性を物語っている。


 ノエルにとって、ロムオは頼りになるお兄ちゃんと言ったところだろうか。



 (やっぱりこうなるじゃん……ハーレムパーティ御一行の完成だよ。

 ロムオここで捨てちゃおっかな。

 でもロムオには僕が喋れるようになった恩があるしな。

 そんな事とてもできないよなあ……一体どうしたらいいんだよ! )



 王都の出口が見えかかった頃、まだ次の街にどうやって移動しようか決まってなかった。

 カイナが竜車がいいとダダをこねたため、竜車を利用することになった。


 王都を出て、30分ぐらい竜車に揺られただろうか。急に竜車使いが慌てだし、竜車をピタリと止めた。



「ちょっとここで引き返しますぜ。

 あの前方で道を塞いでいる女。

 ありゃ魔王軍のお偉いさんでさぁ」


「うむ、では俺達はここから歩いていこう。

 魔王討伐を一刻も早く成し遂げなければならぬ」

 (ちょっと何いってんのー、敵のお偉いさんだよ? 怖いよ、帰ろうよー)


「へっそうこなくっちゃな! 久々で腕がなるぜ!」


「ロムオ様ならきっと問題ありません。さあ伝説の始まりですわ!」



 道の先、長髪の女が一人。

 角と大きく広げた翼が、月光を背にしたシルエットとしてはっきりと浮かび上がっている。



「あなた達が勇者一行ね。

 私は魔四天王の一人、マーリアよ!」


「ひゅー、四天王の一人だってさー、

 さっさとやっちまおうぜー」


「四天王だかどうだか知りませんが、

 ロムオ様の何の障害にもなりませんわ!」


「ロムオ、怖いよう……」



 マーリアは静かに、そしてしっかりとした足取りでこちらに近づいてくる。

 そしてロムオと僕を交互にみてこう言った。



「あなた式神使いね。私と同じって面白わね」



 マーリアの赤い瞳が、まっすぐ俺を射抜いている。ルルもカイナも気づかない。


 ――けど確かに、彼女はロムオじゃなく僕を見ている。



「それよりこの気持ち悪い取り巻きはなんなの?

 そう、なるほどね。

 あなたは式神を使って、幻術でも見せているようね。

 まあ私には全く効かないけど」



 (幻術ってそんなの知らないよーーー! )


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