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風雲あかし城  作者: キャベツが主食の☆黒い安息日
三番目物【鬘能】
57/59

月光蟲 2


 明石地下城 (ミンシェヂィシャーヂョン)

 地下一階


 市民課




「 ELOIM ESSAIM

  ELOIM ESSAIM

  古き躯を捨て、蛇はここに蘇るべし……」



 シスター、レイコ・天草・フェルナンデスは

 手に持つ頭蓋骨を

 信濃守千代丸の首に並べて置いた



「ふふふ、婚姻届けよ、永遠に愛し合うがいいわ」



 修道服の裾をなびかせ

 数歩すすんだ足元には

 稀覯 (きこう) 本【 玄君七章秘経 写本 】


 それを拾い上げると

 シスターはさらに進む

 そこは複雑に絡み合う触手が蠢 (うごめ) いている



「あはは、なんだか、右手と左手で争ってるみたい」



 シスターは仕組まれた茶番を見て笑う

 そうだとも

 そうだとも

 片や、アーカシ・ウォンターナを拠り所とした邪神

 片や、海野アケミを拠り所とした邪神


 拠り所は違えど中身は同じ、ひとつの邪神なのだ




◇◇◇




 元々は日記だった

 孤独で単調な日々が綴られ

 誰に読ませるつもりもなかった


 少しずつ願望が加えられ

 捏造された日々

 解釈によっては創作と言えるのかもしれない



 だが、毎日は楽しいことばかりじゃなかった

 辛いことを

 悲しいことを

 寂しいことを

 何かに例えて書き綴り

 誰かに例えて書き綴り

 何処かに例えて書き綴った



 黒い安息の日々を書き綴った物語



 自己完結するには膨大すぎたそれは

 アウトサイダー・アートの一種なのだろう

 やがて人目に晒すことで

 賛同や共感を得ることで

 辛いことを

 悲しいことを

 寂しいことを

 癒せるようになった



 だが、違う、違うだろう?



 その日記を

 その物語を

 その捏造を

 その創作を


 そんな安い値段で売り払って満足か?

 黒い安息の日々は、もっと憎悪で満ちてなかったか?



     【 孤独 】



 創造主が観測者に叩きつけたいと欲するのは

 作者が読者に突きつけるのは

 矛盾しても捏造しても表現したいのは



     【 孤独 】



 孤独こそが個性

 孤独こそが芸術

 孤独こそが真実

 孤独こそが人生


 【 玄君七章秘経(ネクロノミコン) 写本 】が生み出す邪神は


 作者・黒い安息日の孤独

 共感を拒む内面でありながらも

 クトゥルフの神々を産んだラヴクラフトに感じる


 ……孤独の共感なのだ




◇◇◇



 貴族令嬢・黒い安息日は宮殿で目を覚ます。



「おはようですわ、ホーホホホ!」



 午前五時、夜明けには早い。基本怠惰な彼女だが、朝だけは無駄に早い。年のせいで高血圧だからでは、などと邪推な勘繰りは良くない。若く健康的だから目覚めが良いだけだ。勘のいいガキは嫌いだよ。



「今日はお城へ呼ばれてましてよ」



 「あかし城」の説明をしよう。

 「あかし城」とは兵庫県南部、マサチューセッツ州にあるアーカシ市の中心にある廃墟の城である。天守閣がないかわりに広大な地下墓地が建造されており、アーカシ市の死者はここに集められている。30万の亡霊が漂い、明石地下城 (ミンシェヂィシャーヂョン) とも呼ばれ、誰も近寄らない……





◇◇◇



風雲あかし城


三番目物【鬘能】





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― 新着の感想 ―
メタメタのメタぁーっ! 展開絶好調な三番目物ですた♪  孤独響閑  こどくきょうかん 狂歓呼喰み きょうかんこばみ  蠱毒叫喚  こどくきょうかん 開かし錠  あかしじょう   (ベベン♪ ベ…
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