貴族令嬢、愛馬アードレスで駆ける
貴族令嬢・黒い安息日は特撮の主題歌を好む。
特に昭和や平成の戦隊やライダーの主題歌は最高だ。番組は見てなくとも主題歌は歌えるくらい聞き込んでいて、それなりに語れる……と言いたいところだが、このジャンルはガチ勢が多く、その筋から見るとまだまだヒヨッ子もいいところである。
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【昭和の特撮】
番組主題歌として模索中であることも含め、多様性があり面白い。基本軍歌や歌謡曲ベースの楽曲だが、ジャッカー電撃隊のように印象的な曲も多い。へいへいへへい。
特筆すべき点として、主演俳優に歌わせている楽曲が存在していることも語らずにはいられない。
宮内洋などその典型であるが、倉田てつをが歌う仮面ライダーBLACKの主題歌は、言うまでもなく伝説、BLACKだけに黒歴史である。
歌唱力も強烈だが、よく聞けば歌詞も酷い。あの時代を象徴する中身ペラッペラの内容だが、今聞けば郷愁を抱かせる。大らかな時代だったな、と。
【平成の特撮】
戦隊とライダーで視聴者のターゲットが違う。それに合わせ主題歌も変化しているのが平成の特徴。
戦隊はとにかくタイトルの連呼。視聴する子どもたちに番組名を覚えてもらい、ついでにスポンサーのオモチャも買ってもらうため、キャッチ―でアッパーな楽曲で番組名を洗脳してくる。大好き。
ライダーは日曜の朝食の時間に合わせ、チャンネルを変えようとする親をターゲット。お母さんをイケメン俳優でつなぎ留め、お父さんを重厚なストーリーで釘付けにする。主題歌は大人が聞いて恥ずかしくないクオリティに仕上げており、名曲に溢れている。
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黒い安息日は愛馬アードレスを走らせる。
古き特撮の主題歌を口ずさみながら。
目的地はイーオンのダンジョン。だが暖かい日の光の下、穏やかな道路を愛馬で走るとき、人は目的地よりも素敵などこかへ、すでに辿りついている。
安全運転で愛馬と駆ける、人生で最も幸福なひととき……
イーオンのダンジョンに到着。
でかい。イーオンはでかい。とはいえイーオンは多種多様に存在し、小型イーオンもあれば中型イーオン、そして中世の要塞都市を想起させる大型イーオンもある。今回訪れたのは駅前の中型イーオン。
黒い安息日はイーオンのダンジョンに入る。広く、深いダンジョンには、膨大な数のモンスターがアイテムを手に待ち構えていた。
同じアイテムでもメーカー品だけでなくプライベートブランドも同時に多数存在し、どれを手にするべきか困惑させる。
「ど、どれを選べばいいの……」
惑う貴族令嬢、取り囲むアイテムモンスター。
絶体絶命のピンチ……
だが、何処からともなく声がする。
「値段も知らず、品質も知らず、店員となりて値札を打つ」
空中を回転しながら飛び込んできた四人の戦士たち。
それぞれ色分けされたユニフォームのイーオン店員だ。
「ワクワクの赤、バリュー・レッド、ここに推参!」
「オーガニックの緑、グリーンアイ、ここに推参!」
「格安の黄、ベストプライス・イエロー、ここに推参!」
「高級な黒、バリュセレクト、ここに見参、四人そろって……」
最後に登場し、場を仕切って名乗りを上げようとした黒いバリュセレクト。
しかし残りの三人が乗ってこない。
「ど、どうしたお前たち、なぜ名乗りを上げない!」
動揺する黒いバリュセレクト。
残りの三人が悲しい現実を告げる。
「あのさ、お前とっくの昔に廃止されてんだよね」
「高級路線だったけど、イマイチ客ウケが悪くてさ」
「高くても中身はイーオンだろ、みたいな扱いで……」
「そ……そんな、ぐわあああああああああああ!」
消滅する黒いバリュセレクト。
残りの三人がポーズを決め叫ぶ。
「「「 成 敗 ! 」」」
いや、味方を成敗してどうすんねん。
一応レビューすると……
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【イーオン・ダンジョン】
ダンジョンの規模によって評価は変わる。個別に専門店すら併設する大型ダンジョンで手に入らないアイテムは、ネットで探すしかない。それほどに豊富な品揃え。
黄色のベストプライスはネタにされがちだが、実は言われているほど酷くはない。まあ値段相応だし、そういうものだと納得の上で入手すれば問題ない。少なくとも粗悪品ではないし、激安ダンジョンで時折見られる、素人お断りの危険なアイテムより全然マシ。
全体的な価格帯は、コープより気持ち安い程度。よく探索すると激安スーパーに匹敵する値段のアイテムも見つかることがある。卵の10パックとか狙い目。
[値段] 激安ではないが良心的
[品質] まあ良いと言える
[品数] ダンジョンの規模によるが豊富
[美観] もうマヂ要塞。。。 ワオンしよ。。「WAON!」
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MH77A 学天則は、学園都市の市立エスカルゴ女学院に愛馬で通う。研究所でアーカシ市長の生体兵器を調査するためだ。
彼の愛馬はアーカシ市にあるカワサキ牧場で育てられた古の品種で、愛称はマッハ、側車付きなのでダブルマシンとも呼ばれている。今は無きツーストロークの心臓で、白煙を撒きながら旧・神戸西バイパスを駆け抜ける。
エスカルゴ女学院の職員用厩舎で学天則が愛馬から降りた。
それを見かけたエスカルゴの女生徒が叫ぶ。
「あ! キカイダーだ!」
さすがはエスカルゴの学生、見事な博識だ。
ロボットにしか見えない学天則の風貌を考えると妥当な感想。
しかし学天則は冗談回路が作動し、ノリツッコミを実行した。
「いえ、01 (ゼロワン) です」
◇◇◇
次回、「貴族令嬢、アーカシ市長と謁見する」




