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風雲あかし城  作者: キャベツが主食の☆黒い安息日
一番目物【脇能】
20/59

貴族令嬢、瀟洒なメイドに会う


 【お詫びと訂正】


 前回の次回予告におきまして


「ヤムチャ死す! おそるべき高級ダンジョン」


 と表記されておりましたが訂正いたします

 ヤムチャは死にませんし、そもそも登場しません

 それに本作のタイトルに「 Z 」は付きません

 無印です


 今後は調子に乗って嘘予告を書かないよう気を付けます

 嘘予告はエヴァの新劇場版で十分でございます

 どうかご安心を



◇◇◇



 貴族令嬢・黒い安息日は、高級ダンジョンの入り口に立った。


 特に必要なアイテムがあるわけではない。あえて言うなら米糠か高菜漬けが欲しいところだが、そんなの別にどこでも手に入る。今日はキリン堂でハンドクリームを買ったついでに立ち寄っただけだ。


 しかし、せっかくだから色々見てまわろう。新たな名物のヒントが得られるかもしれない。そんな甘い気持ちで黒い安息日はダンジョンに入るのだった。





 優雅なBGMが流れている。


 購買意欲を掻き立てようと勇壮な北欧メタルを爆音で流すわけでもなく、ただ静かにフルオーケストラの演奏がダンジョン内を響き渡る。


 あまりに音質がいいので、どんなスピーカーを使っているのかと天井を見上げると、燕尾服の指揮者がタクトを振り上げていた。その向こうには大勢の奏者。急いで目をそらす。


 ヤバい、ここは異世界だ。


 そもそもここはローファンタジーの異世界では?

 などとメタいことは置いといて、黒い安息日はダンジョンを進む。



「いらっしゃいませ、ようこそ当ダンジョンへ」



 瀟洒なメイドが現れ、カーテシーで互いに挨拶。

 その後ろには華麗な馬車、しかし馬がいない。

 黒い安息日が問う。



「あら、この馬車は何かしら?」


「馬車ではございません、ショッピングカートです」


「大きすぎませんかしら?」


「ご安心を、私がカートを引かせて頂きます」



 瀟洒なメイド、馬車、いや巨大なショッピングカートのフレームを掴み豪快に引き始めた。

 あくまで表情は涼しく、ビルドアップされた上腕二頭筋だけが不釣り合いに膨張していた。



「さあ、まいりましょう」



 ニカッと歯を見せるその笑顔、微笑みと言うよりポージング。

 無駄な労力にしか見えないが、これが上流社会では常識なのかもしれない。黒い安息日はとりあえず、労をねぎらい声をかけた。



「な、ないすバルクですわ」





 貴族夫人が集まって、井戸端会議をしているようだ。



「今年の夏は家族で軽井沢の別荘に行きましてよ」


「我が家は自家用ジェットで別荘に行きましてよ」


「うちの主人は公金横領罪で別荘に行きましてよ」



 セレブな会話が聞こえる中、瀟洒なメイドと黒い安息日はダンジョンを進んでいく。メイドが引くショッピングカートは重そうなので黒い安息日は心配したが、妙に嬉しそうなので違う意味で引いてしまった。



「お客さま、あちらをご覧ください」


「あら、おいしそうなリンゴね」


「搾りたてのリンゴジュース、試飲なさいますか?」


「まあすてき、頂こうかしら」


「しばしお待ちを……フンッ!」


 ブシュッ! ポタポタポタ……


 メイドの拳から滴り落ちるリンゴ果汁。

 それをグラスに注ぎ黒い安息日に渡す。



「どうぞお試しください、お客さま」


「は、はい……」



 思ってたのと違う。

 困惑する安息日だったが、もしかしたら上流社会では常識なのかもしれない。



「お客さま、あちらをご覧ください」


「あら、おいしそうなカボチャね」


「カボチャの冷製スープ、試食なさいますか?」


「ま、まさか……え、遠慮しますわ」



 残念そうなメイドの顔は妙な圧があり正面から見ることが出来ない。

 深刻なメイドリアリティ・ショック (MRS) に陥っているようだ。



「お客さま、お顔色がすぐれないようですが……」


「ななな、なんでもありませんわ、ホーホホホ!」


「当ダンジョンでは健康器具なども取り扱っております」


「あら、素敵じゃない」


「今なら最新のMRIがお安くなっております」


「んなもん家に置けるか!」



 そもそも買えるか!

 最新型のMRIだと10億くらいするらしい。そのわりには簡単に壊れるので、お医者さんや看護師、そして技師の言うことはきちんと従い、医療機器は大切に扱おう。壊れて困るのは機械よりも、君の健康だったり、その他多くの患者さんの命かもしれないのだから。





 結局何も手に入れず黒い安息日は帰宅した。メイドからは試供品として高級ダンジョンオリジナルのプロテインをもらった。無添加・天然素材のみを使用・栄養豊富とのことだが、正直いらない。


 せっかくだからと中身をよく見たら、きな粉だった。



◇◇◇



【次回予告】


 AD2025 市の派遣社員の指摘によって

 政府、アーカシ市との緊張は、一気に総選挙へと発展した

 誰もが疑わなかった、皆で食べる魚介類の料理

 が、食べた者は狂信的な市長派に転じ

 選挙区は比例のまま既に11ヶ月が過ぎようとしていた……


 次回、貴族令嬢クロイアンソクビ SEED

 「領収書は実名で」

 来年の確定申告、切り抜け、クロイアンソクビ



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