貴族令嬢、高級ダンジョンに入る
【高級ダンジョン】
まず初めに、今から語らせて頂く内容は特定のダンジョンを評したものではなく、いくつかの高級ダンジョンを冒険したうえでの総合した論評であることをお断りしておく。
高級ダンジョンとは、高品質なアイテムを提供し、安価で薄利多売のダンジョンとは一線を画す経営方針を掲げた存在であると定義する。
いかりスーパー・成城石井・ヤマダストアー、など具体名を挙げればきりがなく、地域密着のローカルな高級ダンジョンも存在するが、大量出店による市場占有を経営方針として持たないため、限られた地域にしか存在しない。 (駅前・住宅地)
さて、早めに断言しておこう。
高級ダンジョン、実はオススメ。
冒険初心者なら、なおさらだ。
ラァ・ムーンやギョウ・スーといった、いわゆる激安ダンジョンは上級者向けなのだ。必要なものを一円でも安く、商品と言うより素材を求めて探検する場所であって、常連の冒険者は達人ばかり。初心者には危険な場所でもあるのだ。
まずは高級ダンジョン、その良さを知ったうえで激安ダンジョンを味わって欲しい。
今後作中では話を盛って大げさに書いていくつもりだが、実際はそこまで非常識ではない。常軌を逸した高価格のアイテムもなくはないが、基本あくまで常識の範囲内である。ぶっちゃけコンビニの方が割高だ。
米の価格を例に出そう。
[精米5kg](2025年10月末)
激安ダンジョン 3500円前後
コープ・コーベ 4000円前後
高級ダンジョン 5000円前後
1000円も違うじゃないか、そう思うかもしれないが、そもそも品質が違う。高品質の食材にしては妥当な価格設定であり、少々出費がかさんでも良い品物がほしいなら納得のいく価格帯でもある。
目が飛び出るような高価格設定のアイテムを見て回るのも楽しい。だが高級ダンジョンの楽しさはそれだけではない。取り扱うアイテムに大きな特徴があるのだ。
1. 有名メーカーのアイテムが置いていない
ポテトチップスが欲しくてお菓子コーナーに向かったとしよう。しかしそこにはカルビーも湖池屋もない。山芳製菓のわさビーフもない。なぜかフラ印は大体おいているが、基本よく知らないメーカーの上品そうなポテトチップスばかり。
そしてインスタントラーメン。日清もサンヨーも東洋水産もない。有名メーカーは基本全滅。あるのは一袋200円以上もする見たこともない謎メーカーのものばかり。そもそも取り扱う量も少ない。
ジュースコーナーでコカ・コーラやペプシがないことに気付いた時は衝撃だった。
2. ワインが極端に充実
お酒コーナーでもワインは別格に扱われており、棚を丸ごと使い切ってたりもする。筆者の近隣にある高級ダンジョンでは、そんなに大型店でもないにもかかわらず棚二つ分を占拠。しかも全てのワインに詳細な説明書きがされており、力の入れようがうかがえる。
意外にも値段は一本2000円前後と良心的。ついでにチーズも多種多様に取り揃えており、一般のダンジョンとの違いを感じさせた。
余談だがウィスキーの在庫はわずか数種類程度。この違いなんやねん。
3. レタスが多い
野菜コーナーでのレタス充実度は異常。多種多様に取り揃えており、通常のダンジョンでは考えられない豊富さである。逆に筆者が主食とするキャベツは、先日実際に行った時には半玉198円が少量置かれているだけだった。なぜ一玉が置かれていない?
まだまだ深く掘り下げてないので野菜に関して語れることは少ないが、一般のダンジョンでは見かけない食材も取り扱っているようで、次の探検を楽しみにしている。
他にも駐車場に駐めてある車が面白いとか色々語れることはある。ポルシェと軽自動車が並んで駐車している風景など他ではなかなか目にしない。あと冷凍食材がほとんど無い (冷凍食品はある) とか、チョコレートが充実しているとか、ああもう、きりがない。
と、に、か、く、高級ダンジョンは面白い。冒険者なら積極的に足を運ぶべきだ。激安、高級、ともに探求して違いを味わおう。そこに正解などないのだ。
最後は範馬勇次郎の名言を一部捏造して締めくくらせてもらう。
漫然とダンジョンに足を運ぶな!
[値段] 高いというより品質に比例した価格設定
[品質] 良い。これ以上を求めるなら専門店へ
[品数] オリジナリティのある独特の品ぞろえ
[美観] 意外と地味、イオンの方が派手かも
◇◇◇
【次回予告】
オッス!オラ、黒い安息日!
いや~、筆者の語りが長くて疲れちまったぜ!
本編を書くスペースも無くなっちまったじゃねえか!
次こそは必ず高級ダンジョンを攻略してやる!
ヤムチャ!手伝ってくれ!
次回、風雲あかし城ℤ
「ヤムチャ死す! おそるべき高級ダンジョン」
ぜってぇ見てくれよな!
後書き
まず二話連続で後書きを記す愚行をお許しいただきたい。
それほどまでに、嬉しく、楽しいのだ。
次いで、自作を解説する無粋さもお許しいただきたい。
秘めておくのが花と知りつつ、散る儚さに耐えきれなかったのだ。
前話「貴族令嬢、就寝する」において
かぐつち・マナぱ さんから主人公が見た夢を描いたイラストを頂き
喜びのあまり並行して連載しているエッセイで内容の解説も書いた
「かぐつち・マナぱ さんへ 【風雲あかし城・黒い安息日の見た夢、解説】」
https://ncode.syosetu.com/n2751jm/52/
実は以前連載していた「【実録】貴族令嬢の華麗な留置所生活」の作中
「観の目」においてもイラストを頂いている
https://ncode.syosetu.com/n4077lc/6
留置所で犯罪者がカーテシーで挨拶を交わすシュールな情景だが
私がお気に入りの場面でもある
私は思うのだ
人は、心に貴族令嬢を持ち、同時にオジサンを持つ
耽美と猥雑の美学
性別・年齢・人格の区別なく、みんな持っていると
「シュレーディンガーの猫」のように重なり合って存在し
観測しだいで、どちらかが表面化しているにすぎない
私は「風雲あかし城」でその「重なり合う世界」を表現したい
明石市とアーカシ市を
ダンジョンとスーパーマーケットを
華麗な貴族令嬢と、渋いオジサンを
ファンタジーと現実、令和と昭和
並行して存在する真逆な世界が交差する物語を
そこで発生する化学反応が火花を散らし
あなたの琴線に触れたなら
私は100億の評価点に勝る喜びを得る
ひそかに仕込んだパロディや小ネタで
あなたが爆笑してくれるなら
私は1000億のブックマークに勝るモチベーションを得る
私が面白いと感じた出来事や妄想、過去の思い出に
あなたと共感することができるなら
私は……
……作り手として、これ以上の喜びが存在するのか?
読んでくれてありがとう
みんな愛しています
キモいとか言うな、ぶっとばすぞ




