第89話:黒炎の進化、第三形態
―善戦の果て、意識の途絶―
雷竜陣の再起によって、セレナとルゥは黒炎の翼を切り裂き、ザルグ=ネグロスを追い詰めていた。
雷閃が鱗を砕き、炎の爪が肉を裂く。確かに善戦していた。
「これで……終わらせる!」
セレナが叫び、雷光を振り下ろす。
だが――ザルグは笑った。
「善戦だ……だが、まだ我の力は尽きていない」
黒炎が爆発し、彼の身体がさらに変貌を遂げる。
翼は巨大化し、尻尾は鋭い刃のように伸び、全身の鱗は漆黒の結晶へと変わった。
瞳は赤黒く輝き、咆哮が大地を震わせる。
《第三形態――魔竜将ザルグ=ネグロス・終焉形態》
「これが……本当の力……!」
次の瞬間、ザルグの翼が振り下ろされ、衝撃波が空を裂いた。
セレナとルゥは直撃を受け、雷竜陣が崩壊する。
尻尾の一撃が追い打ちとなり、二人は空から墜落していった。
「うっ……ぐ……」
セレナの視界が揺れ、剣を握る手から力が抜けていく。
ルゥも苦痛の咆哮を上げた後、瞳の光を失いかけていた。
二人は意識を失い、力なく空を落ちていく。
仲間たちが駆け寄り、必死に呼びかける声が響いた。
「セレナ! ルゥ!」
ミーナが叫び、リィナが涙を浮かべる。
カイルも弱々しく目を開け、心配そうに見つめていた。
黒炎を纏ったザルグ=ネグロスは空に舞い上がり、冷笑を浮かべながら見下ろす。
「竜の巫女よ……意識すら保てぬか。次の一撃で、貴様らの絆を完全に砕く!」




