第87話:黒炎の翼、第二形態
―黒毒の無効、物理の脅威―
地上戦。
魔竜将ザルグ=ネグロスが咆哮し、口から黒毒を吐き出した。
瘴気が広がり、大地を腐蝕させる。
セレナとルゥはその毒に包まれ、苦しみかける――
だが、リィナの“聖女降臨”の余波がまだ残っていた。
魔耐性の加護が働き、黒毒は霧散していく。
「……効かぬ、だと……!」
ザルグが目を見開く。
セレナが剣を構え、雷光を纏う。
「もうその毒では私たちは止められない!」
ザルグは冷笑を浮かべ、翼を広げた。
「ならば……物理で粉砕するまでだ! 第2形態!」
黒炎が爆発し、ザルグの身体が倍に膨れ上がる。
筋肉と鱗が隆起し、翼は鋭い刃のように変形。
尻尾は巨大な槍のように伸び、凶悪さを増していた。
「これが……完全融合の第二段階……!」
次の瞬間、ザルグの尻尾が唸りを上げて振り抜かれる。
その一撃は大地を裂き、衝撃波が空を震わせた。
「ルゥ!!」
セレナが叫ぶが、間に合わない。
尻尾の直撃を受け、ルゥの巨体が吹き飛ぶ。
背に乗っていたセレナも空へと投げ出され、地面へと叩きつけられる。
「ぐっ……!」
セレナが血を吐きながら立ち上がろうとする。
ルゥは苦しげに咆哮を上げ、翼を震わせていた。
ザルグ=ネグロスは黒炎を纏いながら、ゆっくりと歩み寄る。
「毒が効かぬなら、肉体を砕くだけだ。竜の巫女よ、ここで終われ!」




