第83話:雷竜陣、空を裂く一閃
―雷と竜、絆の共鳴、そして選択―
蒼穹の戦場。
ザルグは魔竜《ヴァル=ネグロス》と融合した右腕でフィンを掴み、黒炎を纏って空を舞っていた。
セレナはルゥの背に乗り、雷の剣を構えながら追撃する。
空は裂け、雷と黒炎が交差する。
「フィンを返して!」
セレナの叫びが空に響く。
ザルグは冷笑を浮かべる。
「返す? ならば力で奪ってみせろ、竜の巫女よ!」
黒炎が咆哮とともに放たれ、空を飲み込む。
ルゥが炎の息吹で迎撃し、セレナが雷閃で切り裂く。
だが、ザルグの魔導鎧は再生を繰り返し、魔竜の力は衰えない。
「このままじゃ……押し切れない……!」
その瞬間、ルゥの瞳が輝き、セレナの雷紋が共鳴する。
《共鳴魔法:雷竜陣》
発動条件:竜と巫女の魔力が完全に同期
効果:雷属性の魔力を竜の爪と翼に宿し、空間を裂く一閃を放つ
「ルゥ、今よ!」
ルゥが咆哮を上げ、翼を広げる。
セレナが剣を掲げ、雷が空を貫く。
「雷竜陣――空裂閃!」
雷と炎が融合し、巨大な竜の形を成してザルグへと突進する。
黒炎が押し返そうとするが、雷竜がそれを飲み込み、魔竜の顎を貫いた。
ザルグの右腕が砕け、フィンが宙へと投げ出される。
「フィン!!」
セレナがルゥとともに急降下し、フィンを抱きとめる。
雷竜が爆発し、空艦《黒翼改》の残骸が遠くで崩れ落ちていく。
ザルグは黒煙の中に浮かび、傷だらけの身体を支えながら、虚空を見つめていた。
そのとき――
彼の脳内に、低く響く声が届く。
『……お前の器は、まだ足りぬ。だが、意志は見えた。完全なる融合を望むか?』
魔竜《ヴァル=ネグロス》の意識が、ザルグに語りかけていた。
「……交渉か。貴様が私に選ばせるとはな」
ザルグは静かに笑う。
「よかろう。力が欲しい。ならば、魂ごと喰らえ。私は貴様と一つになる」
黒炎が再び彼の身体を包み、魔竜の顎が彼の胸に刻まれる。
《完全融合開始――魔竜将ザルグ=ネグロス》




