第80話:魔竜の咆哮、空への誘い
―奪われた空、呼ばれた名―
魔導炉制御室。
黒毒の瘴気が霧散し、セレナとルゥは立ち上がっていた。
リィナは“聖女降臨”の代償で幼い姿となり、魔力も尽きていた。
ザルグは静かにリィナを見下ろす。
「もう戦えぬようだな。聖女とはいえ、代償は重いか」
その目が次にセレナへと向けられる。
「バフか…魔特効…少しは戦える様になったか。巫女の名に恥じぬ力を見せてみろ」
セレナは剣を構え、雷の紋が再び輝き始める。
ルゥは無言のまま、翼を広げてザルグを睨みつける。
だが――ザルグは手をゆっくりと上げた。
「ならば、舞台を変えよう」
その手が空を裂き、魔導炉の甲板が爆音とともに吹き飛ぶ。
瓦礫が舞い、空が開ける。
その隙を突いて、ザルグはフィンの拘束装置へと瞬間移動し、腕を伸ばす。
「フィン!!」
セレナが叫ぶが、間に合わない。
ザルグの魔竜の腕がフィンを掴み、翼を広げて空へと舞い上がる。
「来い、竜の巫女!
貴様の“絆”とやらが、空の果てで通じるか試してやろう!」
黒炎が尾を引き、ザルグはフィンを連れ、空艦の外へと飛び去っていく。
セレナは剣を握りしめ、ルゥが咆哮を上げる。
「追うよ、ルゥ! フィンを取り戻す!」
次回――
第81話「空中戦、雷と竜の共鳴」
空を舞台に、セレナとルゥがザルグとの最終決戦に挑む。




