第78話:魔竜融合、共鳴の崩壊
―黒炎の咆哮、抗えぬ毒―
魔導炉制御室。
空間は軋み、魔力が飽和していた。
ザルグの魔導鎧は異形へと変貌しつつあった。
右腕が脈打ち、鱗が浮かび、指先が牙へと変化していく。
「融合は完了した。魔竜《ヴァル=ネグロス》の力、見せてやろう」
その右腕が完全に変形し、魔竜の頭部となる。
黒い鱗に覆われた顎が開き、灼熱ではなく、冷たい黒炎が口内に渦巻いていた。
セレナは剣を構え、ルゥは無言のまま翼を広げる。
二人の魔力が共鳴し、空間に光の紋章が浮かび上がる。
「共鳴魔法・雷光竜陣!」
雷と光が交差し、竜の形を成す魔法陣がザルグを包み込もうとする――
だがその瞬間、魔竜の頭部が咆哮を上げた。
「黒炎・喰尽の咆哮!」
黒炎が吐き出され、空間を飲み込む。
共鳴魔法は触れた瞬間に崩壊し、光の紋章は霧散した。
「発動……無効!?」
セレナが目を見開く。
黒炎はそのままセレナとルゥを包み込む。
炎ではない。これは“毒”だった。
皮膚を焼かず、魔力を侵す。
黒毒――魔竜の吐息に含まれる、魔力腐蝕性の瘴気。
セレナの剣が震え、ルゥの鱗が黒く染まり始める。
「くっ……身体が……動かない……!」
ルゥは咆哮を上げるが、翼が重く、爪が鈍る。
魔力の流れが乱され、共鳴が断たれていく。
ザルグは静かに笑う。
「共鳴など、魔竜の前では無力。貴様らの絆も、毒に沈む」
制御室の空気が黒く染まり、魔導炉が不穏に脈打ち始める。




