第77話:炎の咆哮、狂戦士の目覚め
―怒りの解放、深層を焼き尽くす者―
艦の中層、崩れかけた通路を駆け抜けるミーナ。
彼女の魔力感知が、カイルの気配の急激な低下を捉えていた。
「お願い……無事でいて……!」
瓦礫を飛び越え、魔導障壁をすり抜け、ようやくたどり着いたその場所――
そこには、血まみれで倒れ込むカイルの姿があった。
「カイル……!」
彼の身体は斬撃と魔力焼損で傷だらけだった。
雷の紋様は消えかけ、剣は手から離れていた。
だが、それ以上にミーナの目を引いたのは――
彼を囲む、20余名の深層魔導兵たち。
漆黒の装甲に身を包み、無表情のまま魔力刃を構える兵たち。
その全員が、カイルにとどめを刺そうとしていた。
「……っ」
ミーナの瞳が揺れ、拳が震える。
「……なに、してんのよ……!」
怒りが、胸の奥から噴き出す。
魔力が暴走し、空気が震える。
その瞬間――
ミーナの身体が炎に包まれた。
《ユニークスキル:狂戦士モード》
発動条件:強い怒りによる精神崩壊
効果:理性を失い、魔力出力が300%に跳ね上がる。炎属性強化。
「うあああああああああああああああああああっ!!」
両手に炎の拳が宿り、ミーナは咆哮とともに突進した。
深層魔導兵たちが反応する間もなく、炎の拳が一人目の胸部を砕く。
爆発のような衝撃が走り、兵が吹き飛ぶ。
二人目、三人目――
ミーナは跳躍し、回転しながら両拳を振るう。
炎が渦を巻き、兵たちの装甲を焼き切る。
魔力障壁すら貫通し、次々と蹂躙されていく。
「誰にも……触れさせない……!」
理性を失ったミーナは、まるで炎の獣だった。
叫び、殴り、焼き尽くす。
わずか数十秒で、20余名の深層魔導兵は全滅していた。
瓦礫の中、カイルの身体を守るように立つミーナ。
炎がまだ拳に残り、瞳は赤く染まっていた。




