第76話:魔導炉の決戦、雷の沈黙
―雷の沈黙、剣と魔導の交差―
浮遊艦《黒翼改》の最深部――魔導炉制御室。
セレナは剣を構え、完全覚醒したザルグと対峙していた。
背後には、魔力抽出装置に囚われたフィン。
その姿はやつれ果て、管に繋がれたまま微かに息をしている。
ザルグの魔導鎧は漆黒に染まり、背に広がる魔導翼が空気を震わせていた。
その魔力は、制御室全体を圧迫するほど濃密だった。
「巫女よ。貴様らの足掻きなど、我が力の前では無意味だ」
ザルグが低く笑う。
セレナは一歩も退かず、剣を握りしめる。
「フィンは渡さない。あなたの魔導がどれほど強くても、私たちの意志は折れない」
その時――
後方でミーナが顔をしかめた。
「……カイルの魔力が切れた!」
リィナがすぐに反応する。
「……本当だ……カイルの身になにかが起きてる」
セレナが振り返る。
「ミーナ、お願い。カイルの元へ行って」
ミーナは頷き、すぐに制御室を飛び出していった。
ザルグが目を細める。
「仲間を欠いたか。ならば、今こそ潰す」
セレナは剣を構え直す。
「ルゥ、リィナ――行くよ!」
ルゥが身構える、リィナが風陣を展開する。
ニ人とルゥの魔力が連携し、ザルグの魔導圧に対抗する。
「フィンを救うために、ここで終わらせる!」
ザルグの魔導翼が展開し、魔力の奔流が制御室を包む。
セレナたちはその中へ飛び込み、戦いの火蓋が切られた。




