第73話:魔導の暴走、雷の限界
―深紅の魔力、雷の意志―
浮遊艦《黒翼改》の甲板は、もはや戦場だった。
魔力の奔流が空を裂き、雷の咆哮が雲を貫く。
完全覚醒したヴェルドの魔導甲冑は、赤黒く脈打ち、魔力の濁流を放っていた。
その剣は漆黒に染まり、振るうたびに空間が軋む。
「終わりだ、雷の剣士」
ヴェルドが一閃する。
カイルは雷を纏い、剣を交差させて受け止める。
だが――重い。
雷壁が軋み、剣がきしむ。
「くっ……!」
ヴェルドの剣が二撃、三撃と続き、カイルは後退を余儀なくされる。
雷血覚醒の力はまだ残っている――だが、限界が近い。
その時、甲板の端からミーナとリィナが飛び込んできた。
「カイル、援護するわ!」
「風陣展開するから、下がって!」
だが――
カイルは振り返り、雷を纏った瞳で叫んだ。
「来るな! これは――俺の戦いだ!」
ミーナとリィナが動きを止める。
「セレナと先に行け! フィンを救うのが先だろ!」
その言葉に、リィナが目を見開き、ミーナが拳を握る。
「……わかった。絶対にフィンを見つけてくる!」
二人は空を駆け、艦の奥へと向かっていく。
カイルは雷を剣に集束させ、最後の一閃に賭ける。
「雷血・絶閃牙――改式!」
雷が竜の咆哮のように唸り、剣から放たれた一閃がヴェルドの胸部を狙う。
だが――
「魔導甲冑・最終防壁、展開!」
ヴェルドの甲冑が自動防御を起動し、魔力の盾が出現する。
雷の一閃がそれを貫こうとするが、衝突の瞬間――
爆発。
雷と魔力がぶつかり合い、空が白く染まった。
甲板が崩れ、二人の姿が煙の中に消える。




