第71話:雷の決意、魔導の暴走
―返り血の覚醒、雷の逆襲―
浮遊艦《黒翼改》の甲板――
雷を纏ったカイルと、魔導甲冑を纏うヴェルドの激突は、空を震わせていた。
ヴェルドの剣が深紅に染まり、魔力の奔流を纏って空間を裂く。
カイルは雷を纏った剣で応戦し、激しい斬撃が交錯する。
「雷牙・裂閃!」
カイルが横薙ぎに剣を振ると、雷の刃が空を切り裂き、甲板を焦がす。
ヴェルドは魔導障壁を展開し、受け止めながら反撃に転じる。
「魔力斬・双層断!」
深紅の剣が二重の軌道で振り下ろされ、カイルの防御を貫いた。
「ぐっ……!」
左肩から脇腹にかけて、深く斬られる。
雷の防御を突き破る一撃――甲板に血が飛び散る。
カイルはよろめきながら膝をつく。
その身体に流れ落ちた自身の血が、雷の紋様に染み込み、淡く光を放ち始める。
「……来たか」
カイルが低く呟く。
全身に力がみなぎる。
筋肉が膨張し、雷の奔流が再び活性化する。
「“雷血覚醒”――返り血を浴びることで、雷の力が限界を超えるスキル……!」
彼が死の淵で得た、未発動の特性。
自身の血を媒介に、雷の魔力を再構築する覚醒技だった。
雷が身体中を駆け巡り、剣に集束する。
空気が震え、甲板の金属が軋む。
「さっきの一撃、礼を言うぜ。おかげで目が覚めた」
ヴェルドが眉をひそめる。
「……何をした?」
「見せてやるよ。雷血の本気をな!」
カイルが地を蹴り、雷の爆発と共に空中へ跳ぶ。
その速度は、先ほどまでの比ではなかった。
「雷牙・轟閃陣!」
雷の刃が三重に展開され、空中からヴェルドを包囲するように襲いかかる。
ヴェルドは魔導障壁を展開するが、雷の一撃がそれを突き破った。
「ぐっ……!」
甲冑の右肩が裂け、魔力が漏れ出す。
「まだまだいくぜ……!」
カイルの目が雷光に染まり、剣が唸る。




