第70話:雷と魔力、空中の決着
―覚醒の叫び、暴走する魔導甲冑―
浮遊艦《黒翼改》の甲板。
雷を纏ったカイルと、魔導甲冑を纏うヴェルドの激突は、空を震わせていた。
剣と剣がぶつかり合い、雷と魔力が拮抗する。
空中で何度も交錯する二人の攻防は、互いに一歩も譲らなかった。
「速い……!」
ヴェルドが目を見開く。
カイルは雷を纏い、鋭く踏み込みながら甲冑の肩を裂く一撃を放つ。
ヴェルドは後退しながら、胸元の装甲に手を伸ばす。
「……まだだ」
彼は甲冑の胸に並ぶ4つのピンのうち、ひとつを引き抜いた。
カチリと音が鳴り、内部に封じられていた液体が導管を通じて全身へ流れ込む。
魔力強化液――帝国が禁忌とした戦闘用魔力濃縮剤。
それが甲冑の魔導炉に注がれ、ヴェルドの身体が震え始める。
「ぐ……ああああああああああああっ!!」
叫びと共に、甲冑が脈動し、魔力が爆発的に増幅される。
彼の剣が黒銀から深紅へと変化し、空気が軋むほどの圧を放っていた。
ヴェルドの動きが一変する。
速い――重い――そして、鋭い。
「終わりだ、雷の剣士」
ヴェルドが剣を振る。
その一撃は、空間ごと裂くほどの魔力を帯びていた。
カイルは雷を集中させ、迎え撃つ。
「まだ終わらせねぇよ……!」




